THE BOOKハンター!

~〈本の虫〉の痛快読書日誌~

「遠藤周作で読む イエスと十二人の弟子」(遠藤周作・芸術新潮編集部編/新潮社とんぼの本)

2010年03月10日 | Weblog
 裏切り者は「ユダ」だけじゃなかった! ペトロやほかの弟子たちもイエスを裏切っていた!?
 遠藤周作が名著『イエスの生涯』『キリストの誕生』で読み解いた〈知っているようで知らない〉師弟のドラマ、弟子たちの壮絶な生き方を、ジオット、ミケランジェロ、レンブラントらの名画のカラー写真でわかりやすく解説した本です。
 昨年、長崎の遠藤周作文学館で2冊の名著を買った私は書店でこの本を見つけて、「これはいい!」と思いました。聖書の入門書として最適の1冊。クリスチャンにも分からなかったことが多々あり、聖書ガイドとして何度も読み直したいと思いました!

「復活の日 三谷幸喜のありふれた生活8」(三谷幸喜/朝日新聞出版)

2010年03月10日 | Weblog
 体を張った映画の宣伝活動、15年ぶりに伝説の劇団が復活……。人気脚本家の刺激的な日々をユーモラスに描くエッセイのシリーズ最新刊。今回も楽しく「三谷ワールド」を堪能させてもらいました。巻末には、東京サンシャインボーイズの特別座談会の模様も収録されています。

「まほろ駅前多田便利軒」(三浦しをん/文春文庫)

2010年03月10日 | Weblog
 まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ……。
「まほろ」シリーズの多田・行天コンビが、ひょんなことから同居生活をはじめ、様々な難事件を解決していく姿を描いた第135回直木賞受賞作。読んでいて、ハマります!

「本からはじまる物語」(メディアパル)

2010年03月10日 | Weblog
 思い出だけを残して逝ってしまったけれど、出会えたこと、楽しかった日々は忘れない……。無垢の愛に包まれる涙と感動の物語。
 豪華執筆陣全18名による「本屋」「本」をテーマにしたファンタジー・ミステリーなどバラエティあふれる掌編小説集。書店向けの広報誌「しゅっぱんフォーラム」に掲載された書き下ろしの掌編小説をまとめた1冊で、本屋と本が大好きな私にとって 夢のようなアンソロジーでした。それぞれの作品に作家の味がにじみ出ています。

【収録作品】(掲載順)
「飛び出す、絵本」・・・・・・・・・恩田 陸
「十一月の約束」・・・・・・・・・・・本多孝好
「招き猫異譚」・・・・・・・・・・・・・今江祥智
「白ヒゲの紳士」・・・・・・・・・・・二階堂黎人
「本屋の魔法使い」・・・・・・・・・阿刀田高
「サラマンダー」・・・・・・・・・・・いしいしんじ
「世界の片隅で」・・・・・・・・・・・柴崎友香
「読書家ロップ」・・・・・・・・・・・朱川湊人
「バックヤード」・・・・・・・・・・・篠田節子
「閻魔堂の虹」・・・・・・・・・・・・・山本一力
「気が向いたらおいでね」・・・大道珠貴
「さよならのかわりに」・・・・・市川拓司
「メッセージ」・・・・・・・・・・・・・山崎洋子
「迷宮書房」・・・・・・・・・・・・・・・有栖川有栖
「本棚にならぶ」・・・・・・・・・・・梨木香歩
「23時のブックストア」・・・・・石田衣良
「生きてきた証に」・・・・・・・・・内海隆一郎
「The Book Day」・・・・・・・・・・・三崎亜


「こころの王国 菊池寛と文藝春秋の誕生」  (猪瀬直樹/文春文庫)

2010年03月10日 | Weblog
 文芸春秋社にいた朝鮮半島出身の美青年、菊池寛の愛人と噂された女性秘書、菊池寛の三角関係を女性秘書の目を通して描く意欲作。2008年5月公開の映画「丘を越えて」の原作。夏目漱石によって否定された菊池寛が「新しい時代」を作り上げるまでの過程を、作者ならではの緻密な取材で明らかにしています。
 猪瀬氏の直筆サイン入りの本を入手しました!

「ボロボロになった人へ」(リリー・フランキー/幻冬舎文庫)

2010年03月10日 | Weblog
結婚情報誌で紹介された相手は素敵な大麻農家の長男だった……!!
 婚期を逃した女性が幸せを掴もうとする姿を描く「大麻農家の花嫁」など、読む者の心を予想不可能な振幅で揺らす6篇の珠玉小説。「東京タワー」の筆者による初の短編小説集。タイトルと作家名に惹かれて読みましたが、全編にリリー・フランキー独特の世界観が漂っています。

「おやすみのまえに」 (マックス・ボリガーベレナ・ボナーニ/いのちのことば社)

2010年03月10日 | Weblog
心温まる23編のベッドサイドストーリー。祈りと詩と小さな話をちりばめた眠る前に読める本です。作者のボリガーは、50年の文筆活動の中で、150もの作品を生みだし、中でも絵本と児童キリスト教書には、ロングセラーが数多くあります。彼は、障害児教育に携わった後、詩を発表し、評価されて作家活動に入りました。それゆえ、無駄な言葉を省いて、できるだけ短い言葉で的確に表現しています。

「ベランダから海が見えた」(内田里加子/せいうん)

2010年03月10日 | Weblog
 本書は、重度の脳性まひという障害を持ちながらも、神学校に進んでプロテスタントの牧師になった内田章二氏の妻が書きためた日々のエッセイをまとめたもので、「障がい者の夫、そして家族、介護のある生活。」というサブタイトルがついています。
 私は今から15年くらい前に初めて内田牧師に出会い、それ以降、里加子さんとも何度もお会いしているので、このエッセイを読んでいるとすぐに夫妻の顔が頭の中に浮かんできました。
 障害を持つ男性との結婚、介護生活、そして子育て……。これらに伴う苦労や悩みが絶えない里加子さんですが、エッセイではそれらの記述は最小限にとどめ、明るくユーモラスに夫と息子との日常生活の模様を描いています。子育ての記録では、看護師だった彼女ならでは視点も。
 各編2ページ程度ですので、非常に読みやすく、読み始めると最後まで止まりませんでした!
 なお、表紙のイラストや各章の挿絵は彼女が描いたものです。

「ゲゲゲの女房 終わりよければ…すべてよし!!」(武良布枝/日本之実業社)

2010年03月10日 | Weblog
 日本漫画界の巨人・水木しげると連れ添って半世紀。赤貧の時代、人気マンガ家の時代、スランプ時代、妖怪研究者の時代、そして「幸福とは何か」を語る現在……。常に誰よりも身近に寄り添っていた妻が明かす「水木サン」の真実! 布枝夫人にとって、夫と歩んだ人生とは、どんなものだったのか…!?
 本書は水木しげる夫人が夫婦の半生を綴った初めてのエッセイ集。今月29日から始まるNHK朝の連続テレビ小説の原作本です。
 水木しげる(本名・武良茂)は太平洋戦争で激戦地であるラバウルに出征し、爆撃を受けて左腕を失いました。復員後は紙芝居、貸本漫画などを執筆。1964年に『ガロ』で商業誌デビューし、妖怪を扱った作品で人気作家へ。「テレビくん」や「ゲゲゲの鬼太郎」は日本を代表するアニメになりました。
島根県の商家で生まれ育った布枝夫人は背が高いこと故になかなか結婚できませんでしたが、29歳の時に東京で貸本の漫画雑誌に執筆していた水木しげると運命的な縁談を持ちかけられます。水木の人柄にほれた夫人はすぐに結婚を決断し、調布市で新婚生活を始めました。
 しかし、その新婚生活はバラ色のものではなく、一日の食費も大切な所持品を質屋に入れて工面するほどの極貧の日々でした。その中でも必死に自分が好きな漫画を描き続ける夫の姿に心を打たれた夫人は「何があってもこの人(水木)と一緒に生きよう」と決断。その後も、夫を手助けし、夫に頼って寄り添いながら厳しい試練を乗り越えていきます。
 この本には、水木にまつわるたくさんの興味深いエピソードが紹介されていますが、結婚した水木が夫人に「聖書を読め」と勧めたという話は意外でした。水木はクリスチャンではありませんが、戦時中にパプアユーギニアで「聖書」に出会い、聖書を愛読していたそうです。「聖書を読めば欧米人の考え方が分かり、人間が生きる意味を知ることができる」と水木は夫人に話しました。
 「終わりよければすべてよし」
 晩年の布枝夫人が半生を振り返って夫に呟いた言葉は、彼女の生き方そのものを表しています。