映画感想(ネタバレもあったり)

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映画『はちどり』ネタバレあり 世界の映画賞50以上獲得

2020-07-09 | ネタバレあり
やっぱ映画ってこれくらいの情報量は入るよね。
セリフがうまくて、短いカットでバンバン進んでいく。

ま、これができてるから世界の映画賞50以上獲得なんだろうけど。


***




イフを描きました(涙)。

***

メンターお姉さん(塾の先生)がおそらく6月民主抗争の経験者なのでは?というのをある方のレビューにて読みまして
この映画のいろんな要素がガッチリ繋がった感じがしました。
(その方のレビューはネタバレになっているのでリンクが貼れないのですが。。)


(ウニが先生に貸す本「赤と黒」はフランスの7月革命の話らしいですし!)


6月民主抗争と言えば『タクシー運転手〜約束は海を超えて〜 』『1987、ある闘いの真実』ですよ。

ものすごく闘ったわけです。
でも、おそらくその闘いの渦中にいたメンターお姉さんは、塾長(?)から「変な人」呼ばわりされます。

メンターお姉さん(ヨンジ)は辛い時は自分が指動いてるのを見ちゃうくらいに追い詰められて、ほとんど虚無の表情。
だから、同じような表情をしている少女ウニに自分を見ます。

怒りと孤独を抱えたウニは過去の自分。
ウニからすればヨンジ先生は未来の自分。輝いてるかもしれないいつかの自分。

***

なので、この二人の関係はだいぶフィクショナルですね。理想的。

それに対して、
ウニの家族や親友やドライな下級生、中身ゼロ彼氏はリアル。


自分の両親が電気スタンドで殴って流血レベルの夫婦喧嘩をして「この家族は別々に暮らした方が幸せなのでは」とまで考えたのに、翌朝その両親はテレビ見ながら笑ってる、という、なんなのこいつらっていうリアルさ。

ウニが「手術が失敗して私の顔が歪んでも私のことが好き」と問うと彼氏は「医者は大袈裟だ」と質問から逃げるリアルさ。

親友に売られるリアルさ。

ウニが兄に殴られて「父の目の前で妹を殴るとは!」と父が兄を叱る、「叱るポイントそこ?」っていうリアルさ。

自分を慕ってくれてた下級生の「前の学期の話ですよ」と賢者タイム入られちゃったリアルさ。


リアルガチな現実に殴られてウニはどんどん人生を知っていきます。


****

ああいうメンターお姉さんに憧れるけど、
メンターお姉さんになるには相当な闘いを経ないといけないわけよね。


四コマ映画「はちどり」→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2541


ネタバレはコメント以下に。
こうやってまとめると本当にセリフがうまいことを改めて確認できました。











1994年。ソウル。
でっかい団地。
インターホンの音。
何度鳴らしてもドアは開かない。

少女「お母さん、開けて!」
しかし、開かない。

違う部屋だった。階が違った。902号。エレベーターないのか。。足の筋力すごいだろうな。

階段を上る。インターホンを鳴らす。
ドアが開く。
母「もっと良いネギはなかったの?」

少女、母を睨む。

少女の名はウニ。

***

ウニ、中学2年生。休み時間。
ポケベルに「愛してる」とメッセージが入る。

***

自宅。
父「野垂れ死しろ!クソアマめ!●●高校に入れないなんて!」
父がウニの姉スヒを叱る。

そこに母の兄が訪ねてくる。
ウニからすると叔父。

叔父「何年になった?」
ウニ「中2です」
叔父は酔っ払って帰っていく。

***

ウニの家の家業は餅屋。惣菜も売っている。家族総出で餅や惣菜を作っている。

夜、みんなで売り上げを数える。手がボロボロ。

***

教室。
担任「私はカラオケに行く代わりにソウル大に行く!」
生徒たちは渋々繰り返す
「私はカラオケに行く代わりにソウル大に行く!」

「ひどい担任になったね。。」

***

家に帰ると、父が社交ダンスの練習をしてる。
父「テニスの練習だ」
父、出かけていく。
ウニ、無言。

姉、酒に酔って帰ってきた。高校生。。
姉「私には得意なものが何もない」

***

ウニの彼氏。ジワン。
ウニとジワンは手を繋いで下校する。
初キス。

***

自宅。
兄がジワンとウニがいるところを見ていた。
兄「あれは誰だ。親に恥をかかせるな」
兄、ウニを殴る。

***

食卓。
ウニ「お兄さんに殴られました」
母「全く。。喧嘩しないで!」とウニを叱る。
姉も「言うなよ」ってな感じでウニを睨む。
(姉も兄から殴られていたのかも)

***

塾の先生が女性に代わった。
「キム・ヨンジです」

塾。狭い教室。
ヨンジが先生。生徒はウニと親友のジスク。

ジスクはマスクをしている。
ジスクも兄に殴られて口が切れている。
ジスク「グルフクラブで」

ウニ「たまに考える。自殺しようかな。原因は兄のいじめ」
ジスク「みんなは私たちに謝るのかな」

***

母「ウニ、勉強して女子大生になるのよ。そうしたら馬鹿にされないわ」

(母はきっと大学には行っていない。自分は馬鹿にされてきた)

※そう言えば僕の母も「私は大学出てないから馬鹿にされた。だから大学は出て。」って言ってたな。。

***

ウニの右耳のしこりを見てもらいに、病院へ。

医師「来週、組織検査をしよう」

***

帰宅。
母「黒い服を着て」
叔父(母の兄)の通夜。

***

翌日、ジワンが他の女とイチャイチャしている。

帰宅すると母は伏せている。

***

友達とクラブへ行くウニ。地下のフロアでビキビキの音楽と照明。

激しく踊っているウニとジスクの元に、下級生たちが来て一緒に踊る。

下級生たち「私たちの姉御になってください」

タバコを一緒に吸う。

***

ウニ、右耳の下のしこりを医者に切除される。

***

塾。漢字の授業。先生も漢字がそんなにうまく書けない。

先生「知り合いは何人?そのうち心がわかる人は何人?」

***

下級生がウニに柄の花を一輪渡す。
「私のメッセージ読みました?」
「今週末、会おうか」

***

帰宅。
父が姉の夜遊びを叱っている。
母「あんたも遊んでるでしょ」と父を、電気スタンドで殴る。

ガラスが割れ、父の腕から流血。

***

姉「うちの家族は別々に住んだほうがいい」

***

翌日。
父と母が寄り添って笑いながらテレビを見ている。
父の腕には包帯。
割れた電気スタンド。

***

ウニ「結婚したらお互いクローゼットなんだって。いないのと同じ」
親友「ジワンは?」
ウニ「連絡ない。万引きしに行こう」
親友「うん」

***

文房具屋で万引きするも店主に見つかる。

親友が「この子は商店街の惣菜屋です」とウニを売る。

店主が惣菜屋に電話。
父が電話に出る。
店主「え?警察へ引き渡せって?」
父もウニを売った。

店主「帰れ!」

ウニと親友、解放される。

***

ウニ「謝って!」
親友「やめて!」

***

塾。
ウニのみ出席。

先生「親友は?」
ウニ「親友じゃありません」

先生、淹れたての烏龍茶をウニに出す。

ウニ「帰ったら兄さんに殺されます。いつも殴るんです。早く終わるのを待つんです。逆らっても長引くから」

***

食卓。
ウニがいない。

ウニは団地の廊下で両腕を上にあげた状態で正座。

母「もういいわ」
ウニ、家の中に入る。

***

翌日。
母「ジスク(親友)がお餅を?」
親友が餅を欲しがっていると嘘をついて母から餅をもらうウニ。

母「ウニ、悪さしないで」

***

塾。
ウニ「昨日はありがとうございました」と書いた付箋と餅を置いていく。

***

下級生とウニ、カラオケ。

「日曜日もカラオケに行こう」と手を繋ぐ。

そこにジワン登場。

下級生「帰りますね」

ウニとジワン、仲直り。
ベッドで寄り添い見つめ合う二人。

***

耳のしこりについてもっと大きな病院で診てもらうことに。

***

団地の階段。
ボーッと空を見る母。
「お母さんっ」
何度ウニが呼んでも母はノーリアクション。

***

大病院。
ウニの手術がもし失敗したらウニが顔面麻痺になるかもしれないと医者から聞いて、父は情けなく泣く。
それを見て驚くウニ。

***

食卓
父「手術は失敗しない」
みんなもウニにちょっと優しい。
それが嬉しいウニ。

***

塾。
先生「ごちそうさま。美味しかったわ」
ウニ「最高のお米を使っているからおいしいんです」

そこに親友が来る。沈黙。

先生「一曲歌おうか」

〜血のついた作業着が僕の青春〜という歌詞の歌を先生が窓際で歌う。

歌い終わって先生、微笑む。

先生が素敵だからこそ許される行動。。

***

ウニ「私、入院する。失敗したら顔歪むかも」
親友「ごめん、あの時怖くて。殴られる気がして」
ウニ「ごめん」

***

自宅。
ウニは
ジワンとウニの120日記念ソングっつってラジカセに歌を吹き込む。

その後、ジワンとウニ、デート。

ウニ「顔が歪んでも好きでいてくれる?」
ジワン「医者は大袈裟だ」

ジワンの母登場
「これが餅屋の娘?帰るわよ」

ジワンの母はジワンの手を引いて帰る。

ウニ、テープ渡せず。

***

塾。
烏龍茶。

***

先生とウニが一緒に帰る。

立ち退き命令が出ている住民たちが垂れ幕を出している。

ウニ「ここの人たちはどうして垂れ幕を?」
先生「理不尽なことが多いわね。でも、無闇に同情しないでね。知らないんだから」

ウニ「先生は自分が嫌になったことがある?」
先生「何度も。こんな心があるから私は私を愛せないんだって。辛い時は指を一本一本動かすの。辛いことはあっても、指は自由に動かせるって」

***

先生に「赤と黒」という本を貸す。
ウニ「私が退院するときに返して」
先生「わかった、ありがとう」
抱きつくウニ「先生のことが好きです」
先生にも強く抱きしめ返してあげる。

***

手術終わり。
病院のベッド。
父「スヒ(姉)にも傷跡があるのにウニまで。。」
母「たくさん食べるんだよ。」
父と母、帰宅。

病室に下級生が来た。
下級生、泣く。

下級生「あの時の彼はお見舞いに?」
ウニ「別れたわ」
下級生「友達より家族より先輩が好きです」
ウニ「なぜ」
下級生「ただ好きなんです。だめですよね?」

ウニ、下級生の頬にキス。
下級生もウニの頬にキス。

大部屋の病室のテレビ。「金日成がなくなりました」と報じる。
「戦争になるのかしら」と入院患者のおばさんたち。

***

先生がお見舞いに来た。
先生「病院って落ち着くわ」
ウニ「私も家より落ち着きます」

先生「ウニ、殴られないで。誰かに殴られたら立ち向かって。黙っていたらだめ。わかった?」
ウニ「はい」
先生「約束して」
指切りする二人。

***

ウニ、退院。家族は誰もいない。

「一人で?」「えらいわねえ」大部屋のおばちゃんたち。

バスで家に帰る。誰もいない。

窓が開いている。
姉の彼氏「痛くなかった?見ていい?」
姉「早く寝て」
姉の彼氏「傷が残るかも」

***

塾。
先生がいない。
先生は塾をやめた。
塾長?の女性「明日の2時に荷物を取りに来るって」

***

家。
玉の下から母が父を殴ったときに割れた電気スタンドの破片が出てきた。

***

翌日。2時。先生に会いに塾。しかし先生はもう出て行った後。

ウニ「なぜ2時だって間違えたんですか!間違えなければ先生に会いたのに!アンタが先生を辞めさせたんでしょ!」

***

ウニは塾を辞めさせられた。

家族がウニを叱る。
母「性格が悪いからデフン(兄)に殴られる」

ウニ「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
ウニ、叫び暴れる。
ウニ「私は間違ってない!性格も悪くない!」

兄がウニを殴る。
父「父の前で妹を殴るとは!」と兄を殴る。

顔の横を殴られたウニは耳の聞こえが悪くなる。

****

医者が耳を診る。
「診断書が必要なら言いなさい。証拠になるから」

***

登校時。
下級生がウニをシカト。

ウニ「私を好きだって言ったじゃない」
下級生「先輩、前の学期の話です」

***

親友「私の親、離婚するかも。どっちと住むか決めてない。知ってる?ウニって時々自分勝手よ」

***

1994年10月21日。

垂れ幕が破れている。

学校のテレビ。
「ソンス大橋が落ちた」と報じる。
「大事故よ」「へりも出てる」
「死者は24名にのぼるとのことで」
「十六番のバスがひっくり返り上部分がない」

ウニ、学校の公衆電話から父に電話。
「お父さん!お姉さんが事故に巻き込まれたかも」

***

食卓。姉がいない。
が、すぐに入ってくる。姉は無事だった。

父「バスに遅く乗ったから助かった」

兄、泣く。

***

ジワン「お姉さん大丈夫?あの学校の生徒が大勢亡くなったらしい」
ウニ「私、あなたを好きだったことはない」

***

自宅。
ウニ。音楽をかけ、踊る。

インターホンの音。

先生からウニ宛の小包。

中には新しいスケッチブックと「赤と黒」の本

***

先生に手紙を書く。

〜いつか先生を漫画のキャラクターにします。
 寂しい人に漫画で元気を与えたいんです。
 先生、私もいつか輝けるでしょうか。〜

***

ウニ、先生の自宅を訪ねる。

先生の母が出てきた。

先生の母「いつ届いたの?」
ウニ「昨日」
先生の母「昨日?ヨンジ(先生)はもういないの。どうして橋が落ちるのよ。あんな大きな橋が!」

***

先生の部屋に通されるウニ。
ベッドに腰掛けて自分の指を見る。

***

ウニ「母さんはおじさんに会いたい?」
母「お前のおじさんがいないことが不思議」

ウニがクッチャクチャ音を鳴らしながら夕飯を食べる。
母は怒らず、ウニが食べているのを見てる。

***

兄が運転する車に姉とウニが乗っている。

川。安全第一の張り紙。
離れたところから橋を3人で見にいく。
ウニ、目を閉じる。

***

先生からの手紙。


塾を内緒でやめてごめん。
世界は不思議で美しい。
今度会ったら全部話してあげる。


学校の昇降口にいるウニの顔。

終わり。







四コマ映画「はちどり」→ http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=2541


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