創業家の伊藤雅俊名誉会長にとっては福の神だったコンビニ生みの親鈴木敏文会長、最後の最後で絶対的信頼を得ていた創業家からハシゴを外されました。最後は憶測も混じる互いの子息を交えた後継者争いだったのかもしれません。今後カリスマがセブンイレブンからいなくなったことで、他社との優位性は急速に縮まるはずです。それにしてもこんな形で・・。創業者伊藤雅俊名誉会長も20年前総会屋問題でまさかの退陣、引き継ぎ急成長させた鈴木敏文会長も社内役員の叛乱でまさかの退任。外資の餌食になるかもしれません、今後のセブン&アイホールディングスの動きに注目です。
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まさに急転直下の展開だったーー。
4月7日、セブン&アイ・ホールディングス(HD)は鈴木敏文会長兼CEO(最高経営責任者)が退任すると発表した。同日午前に行われた取締役会で、鈴木会長が提案するセブン-イレブン・ジャパンの井阪社長を交代させる人事案が成立しなかった。全取締役15人のうち7人の賛成しか得られなかったことで、鈴木会長は自らが信任を得ていないと判断し、退任する運びとなった。
退任を決意したことで、出席予定のなかった2016年2月期決算会見に急きょ出席することになった鈴木氏。会見での一問一答は以下の通り。
井阪君の発言には、ものすごくがっかり
――具体的に引退を決意したのはいつなのか。今日役員会が開かれているが、そこではセブン-イレブンの人事案が否決された。どんなやり取りがあったのか。
鈴木会長:役員会の席で井阪社長も発言した。いかにも「1人でやってきました」というような発言だった。ものすごくがっかりした。この役員会に出席しないセブン-イレブン・ジャパンの役員も、「よくそんなことが言えたもんだな」と言っていた。
今の井阪君を信任して、私がやっていくということは、かえって将来に対して禍根を残すことになる。私は役員会が終わったあと、急きょ、村田君にも集まってもらって、「今日引くよ、記者会見するよ」と言った。
みんなびっくりしていました。引き留めてくれたけど、7~8年間最高益でやってきた。新年度(2017年2月期)も最高益を出せるだろうと思いました。お荷物といわれたイトーヨーカ堂も、なんとか見通しが立てられるような状態に向きつつある。そういう意味では私は逃げ出すわけではない。自分で十分納得できた。
――役員会での人事案は何対何で否決されたのか。
鈴木会長:全取締役が15人で、私どもの会社案に対して反対が6票、賛成が7票、白票が2票だった。
――この票数だと賛成の方が反対より多く見えるのだが?
村田紀敏社長:賛成の方が多いと見えるかもしれないが、この件については15名の取締役の出席に対し、賛成が過半数を超えないと可決しない。全体では賛成が多いが、実態としては8票に達していなかった。
鈴木会長:それから、私自身としては、反対票が社外役員をはじめ社内の役員からも出るようだったら、私はもう信任されていないということを考えていた。6票、7票、2票というのは、まったく問題にしていない。
――会長が退任した場合、当面の経営体制をどうするのか。
鈴木会長:これからみんなと相談していく問題で、私が誰かを指名するというのは考えていない。会社の人事案が否定されたが、井阪君が信任されたわけではない。引退を発表した私が明日から会社に来ないという無責任なことはしないが、いずれにしても新体制に立候補する気はない。
息子に世襲させるなど、一度も言ってない
――後任人事についてはどう考えているのか。
鈴木会長:なんで息子(鈴木康弘セブン&アイHD取締役)の話が出てくるのか。それが社外でもそういう話が飛び交っているということを知って、びっくり仰天している。
そんなこと一度も言ったことないし、息子に対してそんなこと考えたこともない。
ましてや、セブン-イレブンの社長にタッチしたわけでもないですし、技術屋である。それがまことしやかに社内で言われるというのは、私の不徳の致す所だ。
――今回の人事案が否決されたことに、責任を取るという意味もあるのか?
鈴木会長:それはある。私は執行部としてやってきて、多くは人事を担当してきた。これまで、自分の人事案に対して否定されたということはまったくなかった。ましてや資本と経営の分離ということは、私自身が行ってきたことだ。自分で行ってきたことに責任を果たすという重要性を自分自身に言い聞かせている。
――井阪社長の進退問題が、鈴木会長の退任に変わった背景には、創業の伊藤家の存在があるのか。経営を任されていたはずなのに、伊藤家から最後の最後ではしごを外されたという思いから決断したのか。
鈴木会長:資本と経営の分離を言ってきた。(伊藤家の)資本そのものは10%ぐらいの株式を所有している。経営に大きく影響するような資本額ではない。フランチャイジービジネスを考えると、それなりのことをきちんとしておかなければならない。
何もセブン-イレブンだけの問題ではなくて、総反対されたなかでコンビニを作ってきた使命から考えても、資本と経営の分離はきちんとしたことが小売業においても重要なことだ。
――コンビニを作って、セブン銀行も立ち上げて、伊藤家にとって鈴木会長の貢献はすごく大きかったはずなのに、なんで最後の段階ではしごを外されたのか。
鈴木会長:非常に言いにくいことなので、ご勘弁願いたい。ようするに世代変わりがあったということだ。
私の不徳の致す所である
――鈴木会長はセブンの創業者、伊藤雅俊名誉会長はイトーヨーカ堂の創業者。両者で話し合って常識的な解決できなかったのか。
鈴木会長:今までずっと、良好な関係にあった。ここにきて急きょ変わった。
今まで私が提案したことについて、拒否されたことは1回もなく、了承されてきた。
しかし世代が変わった。抽象的な言い方かもしれないが、ご理解いただきたい。
――取締役会や指名報酬委員会での説明が不足していたのではないか。
鈴木会長:指名報酬委員会では5時間かけて議論した。決して時間がなかった、ということはない。
――指名報酬委員会で5時間かけて議論、社外取締役も疑問視した。結局、指名報酬委員会の存在意義とは何なのか。
鈴木会長:7年間、最高益を続けた社長を辞めさせることは、世間の常識が許さない。その一点だ。
――鈴木会長の具体的な退任時期はいつになるのか。
鈴木会長:(退任は)今日決めたこと。明日出るはずのアナリスト説明会にも、辞める以上は方針を説明できない。出ない理由は何だ?となるので、皆様に辞めるということを申し上げたほうがいいということで、会見を開いた。
――なぜ、後継者を育てられなかったのか。
鈴木会長:私の不徳の致す所だ。