アメリカの時事解説誌USニューズ&ワールド・レポートが発表している「世界最高の国ランキング」は、9つの項目から総合的に国を評価しているが、ここでは、その一つ「Cultural Influence(文化的影響)」でランクインした、世界トップ10ヶ国を紹介したい。文化的影響力ランキングは、その国のアート、食べ物、ファッション、スポーツ、音楽や映画などのエンターテインメントが世界に与える影響を測ったものだ。日本の影響力は如何に?
◆10位 オーストラリア
英誌エコノミストの「世界で最も住みやすい都市ランキング」のトップ10内に4都市がランクインするオーストラリア。英国王を儀礼的な国家元首として冠するこの国では、イギリス文化と、先住民であるアボリジナルの文化が混ざり合う。近年では、非英語圏からの移民が増えたことで人口構成が変化し、大衆文化にも影響を与えている。エンターテインメント産業で多くの著名人を送り出しており、音楽ではAC/DC、ゴティエ、カイリー・ミノーグ、キース・アーバン。映画ではニコール・キッドマン、クリス・ヘムズワース、ケイト・ブランシェットなどがオーストラリア出身だ。
◆9位 ドイツ
欧州連合諸国で最も人口の多い国であるドイツは、世界でも有数の経済大国。古くから自然科学や社会科学、芸術の分野で世界的に著名な人物を輩出している。ノーベル賞を受賞した理論物理学者のアルベルト・アインシュタイン、思想家のカント、マルクス、活版印刷を発明したグーテンベルクなど、学校の教科書で取り上げられるような人物も多い。また、音楽の分野では、ベートーベン、モーツァルト、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ、ワーグナー、近代音楽では、テクノミュージックがドイツ発祥とされている。また、民俗祭もここ最近は知られてきており、とくにオクトーバーフェストは世界各国で開催されている。
◆8位 スイス
世界で最も裕福な国の一つであり、中立の立場を取り続けていることで知られるスイス連邦。ノーベル賞受賞者数、特許登録者数ともに他国を圧倒する。地理的にウィンタースポーツが盛んで、冬季オリンピックでは毎回多くのメダルを獲得。近隣ヨーロッパ諸国に圧倒されがちだが、芸術界に新しい風を吹き込んだダダイズムやスイススタイルは同国発祥だ。国内では年間を通じて何百ものイベントが開催され、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、ラウバーホルン・スキーワールドカップ、オメガ・ヨーロピアンマスターズ、パレオフェスティバル、ロカルノ映画祭などは世界中から注目されている。
◆7位 大韓民国
大韓民国(通称・韓国)は、かつては経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会から援助を受けていたが、OECD加盟から13年後に援助供与国となり、国家ブランドイメージを高めた。サムスン電子、ヒョンデ(現代自動車)、起亜自動車などの大企業を有する。特筆すべきはエンターテインメント分野で、2019年公開の『パラサイト 半地下の家族』が翌年の第92回アカデミー賞授与式で監督賞、脚本賞、国際長編映画賞、そして英語以外の作品としては初となる作品賞を受賞。加えて、音楽分野のK-POPは世界中にファンを抱え、男性グループのBTSは英詩で2021年にリリースした『Butter』で、ビルボードのホットチャート連続1位を獲得した。
◆6位 イギリス
イギリスは国際的に大きな影響力を持つ先進国だが、欧州連合から離脱したことで、世界における同国の役割に疑問が投げかけられた。芸術に大きな貢献をしてきた歴史を持ち、ウィリアム・シェイクスピア、トマス・モア、ミルトン、ダニエル・デフォーなどが偉大な著書を世に送り出している。また、科学技術の最前線でもあり、世界的に権威ある科学雑誌ネイチャーは同国で発行されている。重力、水素、ペニシリンの発見などの業績もあるが、近年では宇宙論で画期的な研究を行ったスティーブン・ホーキングと、ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)を考案したコンピューター科学者のティム・バーナーズ・リーがよく知られている。
◆5位 スペイン
16世紀から17世紀にかけて、海洋力と植民地主義による富で世界のリーダーとしての地位を確立したスペイン。産業革命など世界の動きに遅れを取ったが、1986年の欧州連合加盟を機に、インフラ、産業、経済政策が近代化。貿易の自由化により、繊維、靴、機械、オリーブ、ワインなどの輸出品に高い需要が生まれ、食文化なども広まった。スペインはベラスケス、ゴヤ、ピカソ、ダリなどの芸術家を世に送り出しており、ミゲル・デ・セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』など、文化的業績は大きい。そのほかの文化では、牛追い祭りやフラメンコなどもよく知られている。
◆4位 日本
世界で最も識字率が高い国、日本。諸外国から文化的影響を受けながらも、古くからの伝統も重んじ、和洋混合のユニークな生活様式を作り出している。伝統芸術・古典芸能として世界から注目を集めるものは、茶道、華道、歌舞伎、能、日本庭園、俳句など枚挙にいとまがない。また、寿司、会席・懐石料理などを含めた和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、食文化も世界に大きな影響を与えている。スポーツの分野では相撲、柔道がよく知られていたが、近年になり野球、サッカー、フィギュアスケートなどでも世界に通用する選手を輩出するようになり、注目を集めている。
◆3位 アメリカ
世界で最も経済的、軍事的な支配力を持つアメリカは、その文化的影響力も世界で群を抜く。その証拠として、アメリカで起こった市民運動「# MeToo」「ブラック・ライブズ・マター」は世界中に波及した。アメリカは文化的にも人種的にも多様で、ヨーロッパをはじめとする海外からの大規模な移民が文学、芸術、音楽を築き上げてきた。移民が作り上げた文化として代表されるものにジャズ音楽がある。アフリカ系アメリカ人の間から生まれたこの音楽は、のちの音楽界にさまざまな影響を与えた。また、アメリカは映画、音楽、テレビなどのメディ産業でも世界をリードしており、その中心地となるロサンゼルス市のハリウッドは世界的に知られている。
◆2位 フランス
フランスは世界で最も歴史ある国の一つで、その影響は科学、政治、経済、文化を通じて世界中に及ぶ。芸術、文学、ファッション、音楽、食文化など、あらゆる方面で世界に影響を与えている。国内にも多くの文化遺産を有し、フランス文化に少しでも触れようと観光客が絶えない。そんなフランスだが、一般には余り知られていない文化を一つ紹介したい。それは、フランスは文化として数学が根付いているといわれていることだ。最近になって少し様子は変わってきているようだが、フランスはデカルトやフェルマー、パスカルなどを輩出。数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞に輝く研究者はアメリカに次いで多い。
◆1位 イタリア
イタリアは毎年4000万人以上の観光客が訪れる人気の国。ミラノのハイファッションなどがよく知られるイタリアは、常に世界に多大な文化的影響を与えている。14世紀から始まった古代ギリシャ、ローマの古典文化を復興させようとしたルネサンス運動も、同国から起こった。芸術の分野では、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロなど、非常に著名な芸術家を輩出。また、イタリアの食文化は世界中に受け入れられており、ピザやパスタ以外にも、フォカッチャ、生ハム、ミネストローネなど、普段から口にすることが多い料理もイタリア発祥である。