セブン&アイは子会社のセブン-イレブン・ジャパンで社長を務める井阪隆一取締役を新社長に起用しました。原動力となったのは「物言う株主(アクティビスト)」で知られるダニエル・ローブ氏率いる米サード・ポイントです。2015年10月末にセブン&アイ株を(取得単価は、5400円?)取得。比率は5%未満とみられるが、傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂の分離や配当額の増額を求めている。」同社の株式5%を握ったサード・ポイント登場により鈴木敏文前会長の築き上げた支配体制は崩壊しました。しかし、良く分からないのはヨーカ堂分離を要求していたサード・ポイントに何故創業家が賛意したかです。考えられるのは伊藤雅俊名誉会長が高齢で判断力を失ってしまったことによるものです。いずれにしても新社長はクビになりかけていたところを米サード・ポイントに助けられ今後、サード・ポイントから影響力を受けることは避けられないでしょう。井阪隆一新社長はCOOとして力不足として交代を考えていた鈴木前会長の退陣により、求心力を失ったセブン&アイは普通の会社に向けて船出したとみるべきです。
以下本音インタビュー抜粋コピー
──CEO(最高経営責任者)としての会長自身の責任についてはどう考えていますか。
こっちも任命した責任はあるよ。それは当然ある。しかし、CEOとして出した方針は間違っていない。
CEOの進退を議論する話ではない
──CEOの進退を議論する話ではないということですか。
そうだよ。その証拠にセブンイレブンはどうか。同じ人間が具体的に「この商品を作れ、この商品を」と言っているのではなく、「こういう方針でやれ」ということを言っている。要するに業態は違っても言っていることは共通なんだよ。特にヨーカ堂の場合には、脱チェーンストアという理論を言ってきたが、脱チェーンストアになっていないのが影響している。
──前社長の亀井顧問が社長に復帰しました。後戻りにも見えます。
亀井君は早稲田大学の商学部卒で、戸井君も同じ商学部で後輩ということもあり、とてもかわいがっていた。だから、彼も戸井君を推薦していた。亀井君も「いやあ、人間というものはわかりませんね。あれだけいいやつだったけれども……」と話していた。
それで、今の改革の精神をわかっているのが、やっぱり一緒にやってきた亀井だから、「じゃあ君、もう1回やりなさい」と言ってやらせているわけ。何も不自然ではない。
よそから見れば、「何で昔の人間にやらせるんだ」と言う人もいるかもしれない。それは一般論のへ理屈だよ。今、われわれが考えている改革の方針というのは、まったく変わらない。その改革の方針をいちばんわきまえているのは亀井なんだよ。別に後戻りするのではない。
──亀井社長時代にもヨーカ堂の業績は低迷していました。「人材不足」との声もあります。
言いたい者には言わしておけばいいんだよ、そんなもの。経営をわからない人が、いろいろ言うのであってね。評論家が言うことはわかっている。若い人に任せれば、何でもいいのか。そんなことではない。亀井にやらせるのが一番。ヨーカ堂として最高の選択肢なんだ。世の中、一般論に流されていたんじゃ、経営なんか、改革なんかできない。
亀井に言ったこと?「改革について、われわれがやろうとしている道筋を君はわかっているか」と尋ねたら、彼は「もちろん、わかっています。いっとき、病気もしたが、今は健康体だからやりますよ」と。
スキーのジャンプの選手、知っているでしょ、葛西(紀明)選手。若い選手がいっぱいいるけど、あの年(43歳)で世界トップクラスの記録を出すんだよ。「あれは年寄りだからダメだ」なんて誰が言うの? 実績を出せばみんな認めるんだ。
方針を出すのがCEO、実務をやるのはCOO
──暫定的な人選ではないと。
暫定的ではない。僕も一緒になって今まで以上に見ていく。ただ、CEOとしては方針を出すのが仕事で、実務をやるのはCOO(最高執行責任者)であり、社長。社長の域まで僕が降りて、商品部に入ってしまうと組織上、CEOとCOOの差がなくなるので、それは違う。おたくの会社も社長がいちいち雑誌の編集部に乗り込んで、「ああしろ、こうしろ」とは言わないでしょ。やったら、どうなっちゃうの。
──昨年夏、米ファンドのサード・ポイントがセブン&アイ・HDの株式を5%未満取得しました。
その問題については、彼らが株主としてやっていることで、われわれは関知しない。われわれは自分の進むべき道を一歩一歩進んでいく、ということなのでね。
──サード・ポイントはグループから不振のヨーカ堂を切り離すべきだと主張しています。
株主として、そのほうが自分の持っている株の価値が上がるんじゃないかということであって、われわれはそういうふうなことは考えていない。向こうは向こうとしての考え方であって、彼らは実際にこの会社を経営しているわけじゃないから。
──そのとおりにやってもうまくいかない?
うまくいくか、いかないかは知らない。それは評論家がいろいろ言うことであってね……。株価からいえば、ヨーカ堂というか、要するに経費増のところより、セブンイレブンのほうが効率はいいから、セブンイレブンを中心にして優良会社だけまとめれば、そのほうが株価は上がる。それは理屈上そうだよ、いいところだけ切り取ればさ。そういうことを無視するわけじゃないけれども、気にしてばっかりいたら、自分たちの経営なんかできないよね。
そもそもファンドがいろいろ手を出して、成功しているものもあれば、失敗しているものもある。全部成功しているわけじゃないから。
僕が後継者を決めなくちゃいけない理由はない
──鈴木会長が経営全般に目配りできるうちに、後継者を決めておくという選択肢はありませんか。
人材は育ってもらわなければ困る。ただ、今回のヨーカ堂だって、すぐ実際的な効果を上げられる亀井君が、スーッと出てきた。これを「人材がいない」と、なぜ言うのか。若い人が出てくれば「人材がいる」ということなのか。それぞれの会社に、それぞれの生き方があるわけ。どこのやり方がまずいとか、いいとかはない。
たとえば、資生堂の魚谷雅彦社長は昔からよく知っている。彼は化粧品業界では素人だが、今は立派な経営をしている。スカウト人事で、あれだけ歴史のある会社に入ってやっている。そうすると資生堂が「ダメだった」とか「よかった」とか誰も言えないでしょ。スカウトしたということが立派なのであって、人材がいたか、いないかなんてことは、二の次、三の次の問題なの。
──セブン&アイ・HDについても、外部からの人材登用はあると。
それでもいいでしょう。すなわち万人が適任者だ、というふうな考え方をすればいい。僕が後継者を決めなくちゃいけない理由もない。
──会長自身が年齢に関係なく、経営できるのであれば続ける、という選択肢もありますか。
だけど僕も、いつまでもやっているのはしんどいもんな。本当は顧問でも何でもやっていたらそのほうが気楽だよね。でも、そんなことは考えない。だって明日どうなるかもわからない、人間なんて。