もう20年以上この先生の本を読んでいる。
はじまりは子どもの本だった。
心理学者だが子どもの本についてたくさん書いている。
大人の文学にしろ児童むけにしろ、文学を心理学の観点で語ると
とたんに色あせてしまうのが一般的。
でもこの先生の視点は少し違う。
人間の心理を深く追求?していくと
文学とオーバーラップしてくるところがある、
というようなことを自著によく書いている。
夢、もそうであるという。
ここに出てくる「トムは真夜中の庭で」(ピアス著)は
大好きな児童書のひとつだ。不思議な作品だけど
長く生きていると、世の中なにもかも明らかで不明な点は無い、
とは言えないことがよくわかるようになる。
逆に子どもにとっては、生まれてからの時間が短いので
世の中不明なことがあるのが当たり前、の世界で生きている。
そんな子どもと大人が、現在ではないときをいっしょに過ごすのだ。
真夜中の庭で。。。
表題の本の中で、河合先生は「あまり、自己を深く追求しては危険」と
いう趣旨のことをやんわりと述べている。
「自分探し」「本当の自分とは?」「自己を見つめなおそう」
そんな見出しの本も数多く出版されているが
あまり深く自己を追求してはいけないような気がする。
自分はどんな人間なのか、よし、とことん考えてみよう、
なんてしないほうがいいと思う。
うっすらと靄がかかっているほうがいいのだ。
靄を掻き分け、突き進んでいって、たどり着いた湖に映った自分の姿は
鬼か蛇か・・・
正気と狂気の境は紙一重・・・あちらの世界とこちらとを
行き来するのは作品のなかで、虚構のなかで味わうだけの方が
よろしいかと・・・。