藤野から世界へ

神奈川県の北端、藤野町に住み始めた夫婦が山里の暮らしの中で感じたり、考えたりしたことをつれづれに綴ります。

ラダックその3 下ラダックのゴンパ

2010-09-28 21:13:00 | 海外
 上ラダックに対して、インダス川下流域を下ラダックという。上ラダックを端まで行くと、外国人旅行者はILPという許可証が必要になる。そして更に行くと、中国側が実効支配(今流行の言葉?)しているアクサイチンに突き当たる。下ラダックを端まで行くと、またILPが必要になり、今度はパキスタンとの軍事境界線に突き当たる。

 上ラダックの有名なゴンパはいずれもレーから近いため、ILPは必要なかった。次に、下ラダックのゴンパと村を回ろうということで、2泊3日の車の旅に出かけたのだが、村の方に行くためにILPが必要となった。ラダックは、レーの空港に着くと、外国人の場合は入域証みたいな書類を書かされる。いずれも、現時点では形式的なもののようだが、軍事的緊張感が高まると、旅をするのも厳しくなるということも充分あり得る。下ラダックを旅していると、ひたすら続く山々と点在する村、そして時々軍事施設が立ち現れてくる。

 編集の都合上、下ラダックのゴンパをまとめて紹介したい。

 まずは初日に訪れたリキル・ゴンパ。ヘミス・ゴンパと並んで、ラダックでは最も権威のあるゴンパである。バカンというお堂のチューチグザル像(千手観音)が見事で、連れ合いが痛く感動していた。



 壁画も結構見事だったのだが、髑髏が至る所に書かれていて、例えばこの髑髏からは目が飛び出している。他にも、髑髏に、さいころの入った袋がぶら下がっている絵などがあり、「悪い」ことをするとこういう目に遭いますよ、という戒めなのだろうか。


 
 憤怒尊(日本では不動明王とか仁王?)が髑髏を鷲づかみにしている。



 ラマユルでは、有名なラマユル・ゴンパよりも村の中にある小さなセンゲガンというお堂が良かった。壁画の痛みが激しいのが残念だが、13世紀の頃のものと見られている。





 印象的なゴンパとして、リゾン・ゴンパを上げたい。藤原新也の「全東洋街道」にも現れる寺として有名だそうだが。

 リゾン・ゴンパの特徴は、まずその位置付け。普通のゴンパは集落の中にあって、人々の生活と密着しているが、リゾン・ゴンパは純粋に修行だけを目的としているため、人里から遠く離れた山中に忽然と出現する。1840年に建てられたラダックで最も新しいゴンパだが、厳しい修行が行われている。



 ゴンパの前から見える山並み。



 ドゥカンというお堂を訪れると、何と、丁度砂曼荼羅ができた所で、法要が執り行われており、私達も末席に参加することになった。



 こちらに写っているのは、全員が尼さんの卵。適当に出入りしたり、テキストを読んだりよそ見をしたり、落ち着かないが、まぁ子供なので愛嬌がある。



 これが砂曼荼羅。直径は1・5m位だろうか。金属の漏斗を使用して、着色した石英で描く。実際に見てみると、息を呑む程美しい。これが見られたのは、はっきり言って幸運以外の何物でもないだろう。砂曼荼羅の模様は、ゴンパによって違っていて、同じものはない。砂曼荼羅は、決まった日に作成されているわけではなく、大体1~2ヵ月に1度、1週間懸けて作成され、翌日壊される。







 さて、ここでは紹介していないお薦めのゴンパが2つある。有名なアルチ・チョスコル・ゴンパとマンギュ・ゴンパである。何故紹介していないかというと、文化財保護の観点から写真撮影が禁じられているからである。内容は、今から1000年程前のカシミールの仏画師が描いた極彩色の仏画や曼荼羅の数々で、地球上でもここにしか残ってないという代物。ラダックを旅して出会った日本人のタンカ師や仏像修復師の女性達も絶賛していた。素晴らしすぎる。

 個人的には、有名になってしまったアルチ・チョスコル・ゴンパよりも規模は小さいのだがマンギュ・ゴンパが一押しである。マンギュは、最寄りのバス停から歩くと2時間半程かかる山の中にある20軒程の小さな集落なのだが、こんな片田舎のごく小さな寺が世界レベルの仏教美術を蔵しているなんて、なかなか凄い話ではないか。興味ある人には是非直接、この目で見て欲しい。期待を裏切らない(と思う)。
コメント
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