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家庭用SOFCシステム

2007-02-05 | 省エネルギー
大阪ガスと京セラは共同開発した家庭用SOFC(固体酸化物形燃料電池)システムの市場導入を2008年度に行なうと発表しました。2006年5月のプレスリリースでは出力1kWのテスト機で2000時間運転を達成して実証データを得ていましたが、これを700W出力に下げることで装置の大きさを世界最小クラスにしたといいます。

既に家庭用FCはPEFCで1300台のテスト運転が行なわれていますが、3-4年後追いでSOFCも実用化に向けて開発が進んでいるようです。SOFCは運転温度が750℃と高いですから、電池本体やその周辺部に高温に耐える材料を用いる必要があり、これがPEFCよりも開発が遅れた要因でしょう。

出力を1kWから700Wに下げたのは、その方が運転しやすいためと考えられます。SOFCは高温で運転されますから、運転開始・停止を繰り返すことなくずーっと運転していたい。低出力運転の限界は30%といいます。家庭での電力使用は深夜に最低になりますが、省エネ機器の導入が進んだ現在では300Wをはるかに下回っているといいます。つまり1kW定格出力装置では300Wまでしか出力を落とせないので、深夜には運転を停止しなければなりません。そこで、定格出力を700Wにすれば210Wが最低出力ですから、深夜でもSOFCの運転を継続できるというわけです。

SOFCがPEFCよりも優れているのは、発電効率が高い、したがって熱出力と発電出力の費が小さいことにあります。PEFCの実証試験結果を見ると、夏場では一般家庭の熱需要がわずかに9.7kWh/日であるのに対して、電力使用量は27kWh/日となっており、およそ熱1に対して電気が3の割合になります。つまり熱よりも電気を遥かに多く使っているということです。

ガスエンジンコジェネのエコウィルでは発電1kWに対して熱出力2.8kWで、割合は熱と電気で逆になっています。これではもっと発電したくても熱が(お湯が)一杯になるので発電を続けることが出来ません。SOFCシステムでは発電700W、熱出力470Wだそうですから、より多くの発電をすることが出来ます。つまり装置の稼働率が高くなるわけです。

同じ理由で燃料電池は寒冷地向きといわれています。

公表資料のデータを見ると電気と熱を合計した総合効率では、ガスコジェネ(エコウィル)が88.5%(22.5%+63%)、PEFCシステムは80%(35%+45%)、SOFCシステムは75%(45%+30%)になっています。確かに発電効率が高いのは良いことですが、総合効率が下がっていてはより多くの燃料を使うことになって、省エネ効果が半減します。この辺りが今後の開発課題ではないでしょうか。

SOFCはPEFCに比べて発電効率が高いのは、実証試験結果からも裏付けられています。ところでどうしてSOFCの発電効率は高いのでしょうか。不勉強で原理的にこれが説明できません。


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