

私は10年前に胃がんの手術を受けた。
その際、胸にも影(腫瘍)があるので経過観察をするようにと医者から言われた。
半年ごとに病院に通い、CTで上半身を検査し、消化器外科では胃のがんの転移有無を観察し、呼吸器外科では胸の影が成長していないか観察を続けた。
そして6年後、胸の腫瘍が半年間で急成長し、MRI、PETなどの検査でがん発症を確認し、胸骨正中切開による胸腺全摘手術をした。
この半年間は、仕事の強いストレスや不規則な生活が重なった時期で、免疫が落ちてがん細胞が増殖したと思う。
10年前、胃と胸に、それぞれ別のがん化した腫瘍があったことに疑問を持ち、二つに関連性はあるのかを医者に質問した。
すると医者は、「誰でも3~4個のがんを持っている」と答えた。
体調の変化による自覚症状が現れるまでは、気がつかないだけなのか。
がん細胞が増殖し、周囲の組織に浸潤すると、体の異変に気づく。その進行度合いがステージ0~4だ。
がん細胞が上皮内にとどまり、周囲に広がっていないステージ0の段階でがんを早期発見できれば転移のリスクがほぼない。
自覚症状がない段階でCT検査を受けるのは難しいが、胃のがんがあったから、胸のがんを見つけることができ、幸運だった。
人の体は多くの細胞でできていて、新しい細胞を作る過程でDNAもコピーされる。しかし、時々コピーミスが起こる。
通常、このミスは修復されるが、異常な細胞が生き残り増殖すると、それががんとる。
正常な細胞は増殖し死滅するが、がん細胞は無制限に増え続け、周囲の組織を破壊し、血流やリンパ液に乗って転移する。
コピーミスの原因は、加齢、紫外線、放射線、化学物質、ウイルス感染、遺伝的要因などたくさんある。
長生きするほどがんのリスクが増える。
失敗したかもしれない。
金曜の夕方に市役所へ急いだのが原因だった。
所得税の確定申告は不要というメッセージが出たので、医療費控除などは市役所の住民税で申告する必要があった。
控除対象は、医療費、生命保険料、地震保険料、ふるさと納税の寄付控除の4つだけ。
昨年と異なるのは、新たに生命保険を契約したことだった。
問題なのは、従来の生命保険に加え、新たな生命保険に加入したため、控除額が不明な点だ。
平成24年の税制改正で生命保険料の控除額計算方式が変更され、旧生命保険と新生命保険(平成24年以降)の支払い控除額が別々に存在する。
1 国税庁のHP
国税庁のHPでは、問い合わせに答えるように、以下のように記されていた。
両方の生命保険料を支払った場合、新契約と旧契約の控除額を算出し、金額の大きい方を控除額とすることができるというものだ。
控除額が大きくなれば課税対象の所得が少なくなり、税金が少なくなる。納税者の立場に立っている。
2 市役所のHP
住民税はどうなのか。
所得税より控除額が少ないが新旧控除額の合計を適用とされ、喜んだのもつかの間、控除上限額は28,000円ときびしい。
控除額が旧契約35,000円、新契約28,000円の場合、控除上限が28,000円だと控除額が減ってしまいオカシナことになる。
所得税が控除額の大きい方を使っていいと納税者の立場なのに対し、住民税は控除額の小さい方しか認めないという税金徴収者の立場。
どーゆーこと?
3 市役所の申告会場
国と市で保険料控除の考え方が違うのはオカシイ。市役所へ行けば親切に教えてくれるはずだと思っていた。
市役所から送られてきた用紙に、新契約と旧契約の支払額を記入し、証明書を添付して提出した。
旧契約の方が控除額が大きいから、新契約の提出は取り下げてもいいのかなと考えていた。
受付で書類を確認した女性の担当者は「受理しました」と日付印を押して申告受付書をくれた。
私:「ここではなく、会場の奥に座ってる係の人に説明したいのですが。」
受付:「書類は記入されているし、添付書類もあるので、これで終了です。」
私:「生命保険料の支払いが新契約と旧契約の2種類があり、どのように計算されるか知りたいのです。」
受付:「提出された書類の通りになります。金額は今はわかりません。6月には計算されます。」
なんてこったい。
控除額を減らす新契約の支払証明書をわざわざ提出して、税金を増やす人などいるのかい?
よけいなことをしちまった。
市役所に申告書類の取り下げを電話しようか迷っている。
4 市役所に電話 (追記)
月曜日に市役所に電話した。
私:今まで旧制度の保険料を申告していたが、昨年新制度の保険契約をした。控除額が分からなかったが両方記入して金曜日に提出した。でも旧制度の方が控除額が大きく、新制度の提出は損してしまう。
市民税係:有利な旧制度の方を採用します。
私:市のHPでは両方記入した場合は低い新制度とありますが、大丈夫なんですか?
市民税係:はい。大丈夫です。
制度改正が生んだ矛盾で課税への不信感を招く問題だが、現場では混乱を防ぐため現実的対応をしていることがわかった。