玉川上水 花マップ

玉川上水沿いの主な野草の生育地図を作ります

喜平橋 - 茜屋橋間の伐採予定木の緊急調査

2020-10-04 19:07:17 | シンポジウム
2020.10/4

玉川上水喜平橋-茜屋橋間の伐採予定木についての緊急調査

花マップネットワーク代表 高槻成紀

2020年9下旬に玉川上水花マップネットワークのメンバーが調査中に玉川上水の喜平橋-茜屋橋間に多数の赤テープが巻かれており、それが伐採予定であることを知った。玉川上水の法面崩壊を予防し、あるいは住民の安全のために一部の樹木を間伐することは必要であるが、皆伐に近い強伐を行うことは景観を大きく変えるだけでなく、林の下に生える野草にも決定的な影響を与え、林床植物が消滅する危険性が大きい。このことは玉川上水の生物多様性保全という意味で大きな問題を残すことが危惧される。そこで、この伐採を再考してもらうための資料を得るために2020年10月4日に緊急に調査を行なった。
 調査では当該区間の赤テープを巻いた樹木の樹種と直径(目測)を記録した。なお、樹木には番号が付けられ、C=xxという数字が記されていた。このC値は周(cm)と思われ、我々の目測直径のほぼ3倍であったが、株分れした種では数字が大きく異なる場合があった。ここでは目測値を採用する。

結果
 調査の結果、800 mの区間の南北で85本の樹木に赤テープが巻かれていた(表1)。南北で大きな違いがあり、北側が70本、南側が15本であった。内訳は大半がケヤキであり、北側ではクヌギ2本、コナラ1本があり、南側ではエゴノキ、オニグルミ、トウガエデ、ミズキがあった。

表1 喜平橋-茜屋橋間の赤テープが巻かれた樹木の内訳


 ケヤキの直径は10 cmから80 cmまであり、20-50 cmが多かったが、30 cm未満のケヤキも30本程度あった(図1)。伐採が行われれば、30 cm以上の樹木はほとんど残らないことになる。


図1. 伐採予定のケヤキの直径階頻度分布

問題点
 この範囲の高木はほとんどがケヤキであり、小平桜橋よりも上流でコナラ、クヌギが多いのと対照的である。その理由は不明だが、今回伐採予定の樹木も大半がケヤキであった。実質的に皆伐に近い強度伐採を行う理由は安全性や法面保護とは直接つながるものとは思えず不明である。現地には伐採作業の説明看板があるが、これが設置されたのは9下旬と察せられ、伐採予定まで1ヶ月もない。この伐採についての住民説明もなかった。もし伐採が強行されれば、現在ケヤキ並木のような状態で緑陰を提供している林(図2)が失われ、直射日光のあたる全く違う景観になるのは必至である。


図2. 喜平橋-茜屋橋の北側のケヤキ林

 これはすでに小金井橋の近くで起きたことである(図3)。


図3. 小金井橋近くで皆伐されたケヤキの伐採痕(2020.3/5)

このことは同時に、現在生育している雑木林の林床に生えるアマナ、アズマイチゲ(図4)などの野草が生育できなくなり、生物多様性保全という意味で東京都の方針にも反する。

図4. 当該区間に生育するアザマイチゲ(2020.3/15)

 従来行われてきた安全性や法面保護のための伐採は必要である。その伐採が間伐であれば生物多様性を保存することは可能である。また中低木が繁茂して対岸が見えなくなるなど景観上不適切な状態を改善するための下刈りもまた必要であろう。しかし今回のような皆伐に近い上木の伐採はその必然が認められず、大きなマイナスが想定される。一度伐採されれば、その回復には数十年の年月を要する。関係各位にはこの伐採に対する見直しを求めたい。
 以上は、玉川上水の樹木の伐採の行政的な側面、すなわち住民の安全、苦情への対応、法面の保護、ヤブ状態の景観改善のための中低木の除伐などを考えてきた。以下には主観的と言えるが、おそらく重要であることを記す。
 樹木の伐採について、我々の心に、50年を大きく上回るような大樹(図5)がやすやすと伐採されることに対する素朴な「申し訳なさ」があることを否定できない。人間には大樹を前にした時、自然に両手を合わせたくなる心情がある。それは生命に対する素直な心であろう。感情で行政はできないのかもしれないが、このことは行政も心して考えるべきだと思う。


図5. 伐採予定の直径50 cmほどのケヤキと基部の直径が90cmにもなるケヤキ

しかも、今回の伐採はほとんど全ての樹木を伐採しようとしている(図6)。もし、この強度伐採が強行されれば、数十年を生き、玉川上水沿いを歩いて緑を楽しむ市民に緑陰を与えてきたケヤキ大樹の無残な切り株が並んだ状態を市民が目にすることになる(図3参照)。そうなれば多くの市民が「東京都は大樹を平気で伐採するのか。小平市はそれを容認したのか」と思うことになるであろう。そのことの意味は決して軽くはないと思われる。


図6. 選抜することなく全てを伐採する指示を出すテープを巻かれたケヤキ

 なお、北側のクヌギは法面にはなく直径80 cmもある立派な大樹である。また南側のオニグルミも直径90 cmほどある。これらの樹木は歴史的意義もあり、ぜひ残していただきたい。

 調査に協力いただいた桜井秀雄氏に感謝します。
コメント
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