Innocence / Mamoru Osii
イノセンス (2004) 脚本・監督 押井守
押井さんは作画監督としてはなみなみならぬセンスがあると思う。ただ、あらためて思うけれど、脚本はむり。このひとの長台詞のほとんどは幼ないナルシシズムの域を出ない。物語の生命が腐るまで、どの場面もクサイ言葉でこねまわしてしまう。この作品はその傾向の極みで、結果として全体の展開速度がまったく上がらないまま、ひたすらだれる。離陸しないまま滑走路を移動するジャンボ機のよう。実写ならシーンごとの素材を大幅に刈り込んでテンポを上げることで多少救えたかもしれない。でもCGとはいえ、アニメではそうもいかない。良い箇所をあげるなら、ブレードランナーの影響が濃すぎるにせよ、北端の都市のデザインは豪奢ですばらしかった。
『攻殻機動隊』の1がよかったのは、士郎正宗さんの原作の密度が高いことと、それを生かして仕上げた伊藤和典さんの脚本の手堅さが大きいのでは。絵のうまさでいっても士郎さんは名手だけど……。人間の重心の移動感をきちんと出せるひとはそういない。士郎さんには士郎さんのクササがあるんですけど(笑)、あそびがあるし、他の要素も多い。押井さんが扱うとそこだけ培養されて、どっぷり浸ったものになってしまう。
■メモリータグ:北端都市の、中国風の祭。
イノセンス (2004) 脚本・監督 押井守
押井さんは作画監督としてはなみなみならぬセンスがあると思う。ただ、あらためて思うけれど、脚本はむり。このひとの長台詞のほとんどは幼ないナルシシズムの域を出ない。物語の生命が腐るまで、どの場面もクサイ言葉でこねまわしてしまう。この作品はその傾向の極みで、結果として全体の展開速度がまったく上がらないまま、ひたすらだれる。離陸しないまま滑走路を移動するジャンボ機のよう。実写ならシーンごとの素材を大幅に刈り込んでテンポを上げることで多少救えたかもしれない。でもCGとはいえ、アニメではそうもいかない。良い箇所をあげるなら、ブレードランナーの影響が濃すぎるにせよ、北端の都市のデザインは豪奢ですばらしかった。
『攻殻機動隊』の1がよかったのは、士郎正宗さんの原作の密度が高いことと、それを生かして仕上げた伊藤和典さんの脚本の手堅さが大きいのでは。絵のうまさでいっても士郎さんは名手だけど……。人間の重心の移動感をきちんと出せるひとはそういない。士郎さんには士郎さんのクササがあるんですけど(笑)、あそびがあるし、他の要素も多い。押井さんが扱うとそこだけ培養されて、どっぷり浸ったものになってしまう。
■メモリータグ:北端都市の、中国風の祭。