うさこさんと映画

映画のノートです。
目標の五百本に到達、少し休憩。
ありがとうございました。
筋や結末を記していることがあります。

0084. Man on Fire (2004)

2005年11月10日 | 2000s
マイ・ボディーガード/トニー・スコット

Man on Fire (2004)
Directed by Tony Scott, screenplay by Brian Helgeland based on the novel by A.J. Quinnell. Denzel Washington as Creasy, Dakota Fanning as Pita, Marc Anthony as Samuel, Radha Mitchell as Lisa, Christopher Walken as Rayburn.


あまり評判にならなかったようだけれど、悪くない。邦題が情けないことを別として、多少の傷はある。原作を未確認ながら、途中で脚本をかなり変えたかもしれない。シーンに矛盾が出ていた。

メキシコの誘拐はかなりシビアらしい。身代金が支払わなければ人質は残虐に殺される。これが前提。実際の誘拐の成り行きについては観客もすでに慣れているという判断だろう、冒頭からフラッシュバックに近い演出を採用、ぶれた画像を断片的につなぐ激しい「コマおとし」で処理している。酒びたりの主人公の持つ「精神的外傷」も、もはや具体的な場面としては見せない。そうした約束事はぎりぎりまでスリムにおさえて、幼い少女と「古傷もち」のボディガードの心の接近を描くほうに時間を割いた。そして彼は立ち直る……。やや展開はありきたりだけれど、デンゼル・ワシントンがハードボイルドな殺人者を演じたのは初めてでは。なかなか風格のある、いい殺し屋だった。少女を演じたダコタ・ファニングはとにかく達者。水泳のハードな訓練もみごとにこなしたよう。ブライアン・ヒルゲランドはL.A. ConfidentialやMystic Riverを手がけた脚本家。


で、脚本の傷だけれど(以下ねたばれです)。

少女は殺され、ボディーガードは復讐に入る。後半はもっぱらそのシーケンスになるけれど、この展開だと物語の緊張感を保つのがつらい。つまり、人質が生きていれば助けるための焦燥や緊迫が出るのだが、その「時限爆弾」という切り札が使えない。これが一つ(ただ、それにしてはよく見せている)。

もう一つ、じつは少女は生きていて最後に救出できる。ところがその手前で、どうみても亡霊としての演出がされていて、復讐のシーンを彼女がみていたカットが入っている。これは苦しい。なぜ? ひとつ考えられるのは、制作途中まで少女はほんとうに死んだという筋立てで進行していて、粗つなぎの段階でプロデューサー側などから強い修正意見が出た可能性。ここでは、子供が殺されるのは陰惨で共感をえられないという理由から、助かることに変更された、というのがありそうな展開にみえる。それにしても、その場合は最終編集であのカットを落とすべきだった。わたしが記号を読みちがえていなければ、ですが。

そういえばジュマンジのときがそうだったといわれている。前半までが仕上がった段階で、暗すぎるという意見が出て後半が妙に明るくなった。あれはあのまま暗くてよかったと思う(笑)。



メモリータグ■車が右手へ走り去る。舞台奥、座っている少女。