今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

今更アメリカに行ってまで学ぶこと

2008-05-26 14:05:17 | 家庭医療
ブログの名前にしているぐらいなので、このテーマはしつこく書いていきます

ある家庭医の先輩からのアドバイス


その先生曰く、
「ITの発達した今日、研修のcontentsだけ考えれば、日本での研修でも悪くない。日本の家庭医研修施設のトップレベルにいれば、アメリカの上位20パーセンタイルぐらいの研修はできているはず。そんな状況であえて、渡米する理由をしっかり考えておきましょう。」

自分の中でも色々考えては、います

というより、受験勉強の苦労や、家族への負担その他諸々の犠牲を払っている状況に対して、説明義務が有るのです

自分のこころに対して

今更「家庭医」の留学にどんな価値があるのか?
のエントリーでも書いていますが、改めて考えてみました

前回あげていたのが
1. 人材が豊富
2. 研修システムが確立している
3. 指導者のフェローシップのコースがある
4. スポーツメディスンのフェローシップがある

他に軽い理由(メリット)として
  • 異文化にいると、日本のことがよく分かる
  • 単にアメリカでもう一度生活してみたかった
  • 名古屋の生活に飽きたので刺激が欲しい
  • 子供をバイリンガルにしたい
そんなことを考えていたおりに、ちょうど良いタイミングで、ある原稿の話題が出ました

日本内科学会雑誌の2008年4月号、p865-p871
札幌医大 山本和利先生「ジェネラリストと地域医療」

この原稿をあるメーリングリストで紹介(絶賛)され私も読みました

全てを説明するのは難しいですが、簡単に要約すると

  • 疾患(disease)と病(illness)の体験の両方を探りましょう。
  • 全人的に理解しましょう。
  • 転移,逆転移をうまく利用して、患者医師関係を強化しましょう などなど

最初の感想は、

「自分たちが大学の総合診療部で普通に実践していることだよなあ~」

山本先生や絶賛された先生に失礼かもしれませんが、最初はちょっと拍子抜けしました

そして気づいたのが、「こういうことを、声を大にして言っていくことから始めなければいけないのでしょう」ということ

さらに驚いたのは、この文章を読んだあるアメリカの家庭医レジデント経験Drからのコメント

「アメリカでもこのような問題が起こっており、家庭医療のレジデンシーではあまり教育されていないのではないか。うまくできないから専門医への紹介が増える一因にもなっているのでは?」

あくまでも個人の感想であり、局地的な傾向かもしれませんが・・・

専門医への紹介も、訴訟とのからみもあるでしょうし

それでも医師-患者関係をきちっと構築していれば、家庭医こそ、このような役割をこなせると思います

ミシガンでどのように教育されているか、実際に見てくるポイントだと思いました

そして改めて思ったのは、

「単に学びにいくのではなく、先方にもプラスをもたらせるような存在でありたい」

家庭医療先進国のアメリカでも、実は家庭医療の世界はピンチなのです

端的に言えば、「若手が家庭医にあまり入ってくれない」

また変わりゆく医療環境の中で、自分たちのidentityをどう再構築するか模索しています

そんな時期にある彼らに、日本から輸出できるものもあるはず

さらにそれを加工して逆輸入

原料を持って現地までおもむき、加工して付加価値をつけて、逆輸入

いつだったかNHKの「プロフェッショナルの流儀」でみた総合商社の新しい戦略のようなイメージです

医学部卒後すぐの渡米ではなく、日本の総合診療部である程度generalを経験した自分だからこその何かを探し続けたいです

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