今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

お産病棟におけるエスニック事情 その2 ムスリム

2009-08-22 20:23:23 | 家庭医療
独断と偏見のエスニック事情、第2弾はムスリムです

「男性の医療者はお断り」

毎度のことながら、繰り返される問題です

ゆるいムスリムの妊婦さんは良いのですが

厳格なムスリム女性の場合、男性の医師が会話をするために部屋に同席することすら断られます

ミシガン大の家庭医療科では「性、文化、心情などによる差別は一切認めない」という基本方針をとっており

お産を提供しているアテンディング、レジデントのそれぞれ半分程度が男性である現状をふまえて

「男性医師は一切お断り、という信条を譲れない妊婦さんのお産のお世話をするのは現実不可能」ということを明言しています

もちろん最大限患者さんの要望をかなえるというフレキシビリティはありますので

女性医師がたまたまいればその人が担当する、男性医師はなるべく患者さんにふれない(緊急時を除く)などの対応は出来ます

このトピックは産前の外来通院時に、毎回のように妊婦さん、家族とディスカッションがなされ

どうしても男性医師は受け入れられない場合は、助産師サービスや、他施設への紹介の便宜も図っています

さらに、当科でお産をされる場合は事前に同意書にサインもして頂いています

こうした産前の綿密な準備、根回しにも関わらず

いざお産で入院してくるや

男性医師を見つけた妊婦さんの旦那が

大声で「お前は男だろ、出て行け」と怒鳴りつけます

私も以前怒鳴られました

さんざん相談して、同意もして、理屈を通しても

いざとなると覆されるという事態が、周期的に繰り返されます

この背景を、或る先生はこう説明していました

「理屈で分かっていても、旦那さんが声を荒げて断ってくるのは、『自分が家族を守っている良い夫だ』というポーズの行為である」というものです」

それの解釈が正しいのかは分かりませんが、「メンツ、体面、示威行為」という解釈はつじつまが合うと妙に納得させられます

確かに理不尽なことを言いつつも、いざとなると交渉に応じて

最低限の妥協をしてくるところも見ていますので

毎回繰り返される「ポーズ」だと割り切れば、対処もできます

ただ毎回、長々と交渉するのは正直しんどいです

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