今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

他者からの評価と自己評価の乖離

2009-06-03 07:43:40 | 教育
小児ERローテーションが終わり、今月はチェルシー病院のInpatientローテーションです

しばらくアウェーで苦戦し、くたくたになっていたのですが

チェルシーにやってきて、すこし精神的にも落ち着きました

その理由は
  • 昨年の7月に既に一度やっていること
  • 自分にはなじみ深いフィールド(成人の病棟)
  • 田舎の小病院で大学より雰囲気が和んでいる
  • なんといっても家庭医療科のサービス(ホーム)であること


さて小児ERですが、かなり手厳しい評価をされてしまいました

評価の内容を細かくみていくと、「まあ仕方が無いかな」という部分もあるのですが

知識部門に対する評価が、自己評価と著しく乖離しているのには苦しみました

途中で「もっと勉強しろ。この本を読め」と勉強を薦められたのですが、

レトロに振り返ってみても、アテンディングはともかく同級生と比べて自分の知識が劣っているとは、とても思えません

このことは、先々月の成人ERの評価にも当てはまります

成人ERに関しては、一緒に働くシニアレジデントよりも自分のアセスメントや評価の方がエビデンスに基づいており、正しいと思うことも多いぐらいだったのですが

知識の評価は「標準かそれ以下」と書かれてしまい、正直「??」と思っていました

自分でもかなり内省し、メンターや他のアテンディングとディスカッションして、出た解釈は

知識不足が本質ではなく、コミュニケーション、プレゼーテーションの問題がメインであるということ

ERや小児ERでは、働く相手が毎日かわり

1回きりしか一緒に働いていないアテンディングもかなりいます

コミュニケーションレベルが落ちるIMG(外国人)レジデントが他に全くいない環境に現れた、英語のいまいちな私は

少し言葉が詰まるだけで、「はい、ダメ~」と判断されてしまったのではないかということ

最低でも1週間、おなじアテンディングとじっくりつきあうパターンの病棟勤務では

自分でも納得の範囲内の評価をしてもらっていることからも、自分の分析はあたらずとも遠からずではないかと思います

問題は、必ずしも適切ではない中間フィードバックを鵜呑みにして

改善ポイントを見失った状態で、落ち込み、空回りしていた自分です

人のフィードバックを真摯に受け止めるのも大事ですが

評価材料が充分でない場合は、必ずしも適正な評価をされていない可能性もあるのではないかということです

振り返ってみれば、FMB(お産と新生児)ローテーションも同様の問題に苦しみました

FMBでは、2ヶ月のローテーションの間で、一番長く一緒に働いた先生でも、合計2日半程度です

日替わりのアテンディングと、日替わりのフィードバック

「知識」が問題と指摘されていたのですが、コミュニケーションなどが一番問題だったことに最後のほうで気づいた点が同じパターンです


自分の問題が明確になったことを前向きにとらえるとともに

自分が指導し、評価する側になった時に注意するべき点も、明らかになったと前向きにとらえたいと思います





写真は前向き倒産を発表したばかりのGM本社

同ビル内にデトロイト日本領事館があり、パスポート更新で行ってきたときの写真




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4 コメント

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re:Unknown (GYNE) (familymed758)
2009-06-07 22:02:34
GYNEさん、コメントありがとうございます。そうなんですよ。「経験が乏しいのに自信満々で振る舞えるわけが無い」と肌で感じていても、それ以上を要求されている気がしてなりません。こちらのレジデント全般に共通するようにも思うのですが、わずかな経験、わずかな症例での上達を要求されているように思います。まさにカーター君も言っていた「see one do one teach one」です。周りのレジデントの成長曲線も日本より高い気がします。そのスピードに自分がついていけていないのが問題のように感じています。
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re:home base (Wolverine in Paris(WIP)) (familymed758)
2009-06-07 21:53:17
Wolverine in Parisさん、はげましのコメントありがとうございます。先生の書かれていることよく分かります。やはり他科ローテでつらい時はクリニックに行くとほっとします。家庭医的なところを大事にしつつ、頑張っていきたいと思います。
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Unknown (GYNE)
2009-06-07 20:55:00
日本の8年目産婦人科医です。いつも楽しみに先生のブログを拝見しています。
失礼ですが、遅れてきたカーター君みたいで(済みません)、カッコいいですね。
僕も早く臨床留学したいです。
でも、FМBについては、お産と新生児の管理については、知識より経験がずっと大切な分野だと思います。僕の場合、市中病院に出て、1人でお産を管理するようになって、入院から分娩までかかりきりでみたお産が1000件を越えた辺りから、なんとなく産科医としてやっていけそうな感覚がでてきました。それまではボス的助産師にボロカスに言われながらボロ雑巾のようにつかわれていましたが、その辺りから、ボス助産師ともうまくいくようになりました。(相手によりますが。その頃になっても上手く付き合えないようなボス助産師は、他の助産師やドクターからも嫌われているダメМWでした。)
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home base (Wolverine in Paris(WIP))
2009-06-06 08:48:06
景先生
 レジデンシーもそろそろ佳境に入ってきましたね。一番つらいのはこの時期です。
 いろいろな科にローテするFPレジデントはHome baseであるFPのクリニックに帰ると本当にほっとします。その繰り返しで家庭医のアイデンティティーができていくと思います。 各科にいくとロテーターであるというハンディだけでなく英語が少し不自由そうなIMGということで思いやってくれる年配のアテンディングもいますが、若手やミドルクラスのアテンディングではかなり失礼なことを言う上級医が結構おります。多くは自分より医者経験の少ない卒後まだ数年のシニアレジデントだったり、フェローだったりしますが、変に彼らの期待するようなレジデントにならないほうがいいと思います。仕事はさっさとこなしても医療のフィロソフィーというかプリンシパルがないレジデントや医者はいっぱいいます。
 よくあるのは、家庭医療的にサイコソシアルなことを強調したアプローチをすると、全くそれが意味のないようなことを言う内科や外科・EMレジデントとか、結構おります。特に一期一会のERではそうです。変に毒されないようにしてください。先生は家庭医になるのです。ERとか他科の専門医がどういう考え方をするのかを知るためにローテしているのだと思ってください。知識技術的には身につけるものはあると思いますが、患者へのアプローチ法はあくまでも家庭医としての特徴が出るように心がけ、家庭医としての医療に対するプリンシパルは犠牲にしないようにしてください。評価者が何と言おうといいではないですか。またアテンディングに対する評価に気に入らないことをしっかり書いてください。それは家庭医療的に診た他科に対する感想で結構ですから、自分の意見をしっかり主張してはどうでしょうか。
 めげないめげない!ホームベースでしっかり家庭医療の鋭気を付けてください。
 私ももう家庭医療を始めて25年もたちますが、家庭医は他科とは違った考え方をもって医療にアプローチしないとその価値が半減します。全科の寄せ集め医療にならないように気をつけて研修してください。がんばって!
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