個人的に今ホットな話題 「指導医の評価」です
最近たまたま某メーリングリストで話題になり
今週末は当プログラムの「指導医評価のための合宿(retreat)」があります
さらに、同日バンクーバーで開かれるSTFM(Society of Teachers of Family Medicine)の総会で、同僚が「指導医評価」について発表するということで
ミシガン大の家庭医レジデンシ-プログラムの指導医評価システムについてまとめてみました
以下が概要です
1. オンラインで評価表を定期的に提出
月々のローテー ションごとに遭遇した指導医、外来指導で出くわした指導医に対して評価をするように、定期的に評価表が送られてきます
これは研修医の評価も行われている、Medhubというオンラインシステムのプログラムを使っています
提出をしないと何度も催促のメールが来ます
また他の機会に、自分からある指導医を評価をしたいと思えば、自分で評価表をワンクリックでおこす事もできます
2. 評価表の匿名性
それぞれの指導医に対する評価表が3つ以上たまると、それらをまとめた評価が指導医本人に送られます
内容をまとめるのは家庭医療科専任の医学教育専門家(MDではなくPhD)
3. Retreatで指導医レポートを作成
年度の終盤に研修医30名全員が1泊2日で集まり
faculty70名全員の評価レポートを作成するretreatという合宿があります
蓄積された評価の平均点、具体的記載事項を全員で確認し
評価表に書き忘れた意見も加味し、研修医全員の総意による評価レポートを書きます
ちなみにRetreatでは指導医の評価以外にローテーションの評価もします
Retreat自体は、他のプログラムでも行われており
本来はグループで集まりgroup bondingを高めるための親睦合宿だったようです
もちろん、retreatの間は遊びもあります
今年はカラハリリゾートという大きなwater parkです
4. チーフレジデントがレポートを編集
最終的にチーフレジデントが全レポートを編集します
過去には研修医の辛辣な評価で文字通り「泣いた」指導医もいたようですが、
現在はチーフレジデントが半指導医のような立場で、「言葉を選んで」レポートをまとめます(それでも内容はかなり率直です)
5. Chairと教育専任指導者を通して指導医にフィードバック
ChairのSchwenk先生が全員の評価に目を通して、全指導医と個別面談して翌年の各指導医の目標を立てます
各指導医は、自分に対する評価についてレジデントに接触すること自体が一切禁止です
苦情その他は、全て教育専任指導者が受け付けます
6. SummativeでなくFormative
強調されているのは、指導医に対する評価は
"formative(形成的)であってsummative(総括的)でない"ということ
レジデントの教育担当者を選ぶ際には評価が活用されますが
レジデントによる評価で指導医がクビや減給になることはありません
7. 指導医に対する改善のサポート
指導医の改善をサポートするシステムが確立されています
身内で運営しているFaculty Developmentのコースと、Educational Scholars Programを受ける事ができます (もちろん外部のコースも受講可)
またメンター制で、Faculty同士が個人サポートする事もあります
8. レジデント教育への素早い反映
指導医に改善が必要な場合は、具体策が早急に練られますが
改善が無ければ最終的には研修医指導から外されます(減給、クビではありません)
また逆にレジデントからの評価が高い指導医は
翌年には業務における研修医指導のウエートが大幅に増加することがよくあります(勿論本人の希望と合致すれば)
これはレジデントがレジデンシーをする期間がわずか3年という事を考慮してのことで
前年自分たちが行った評価が、翌年の指導体制に早急に反映されるというのはかなりびっくります
分かりやすかったのは、昨年まで「辛辣で一緒に働きたくない」と評価されていたアテンディングが
retreat での酷評を経て
今年は目に見えて、良い指導医になろうと努力していたことがありました
この先生は私も苦手で、1年目はその先生と働く日は抑うつになったのですが、今年は人が変わってびっくりしました
そもそも、指導医に対する匿名の評価システムを確立すること自体はACGMEのプログラムrequirementに厳しく定められています
しかし特筆しておきたいのは、ミシガン大のシステムは
もともとはレジデントからの要望で始められたものだという事です
レジデントの要望を受けて、教育専任指導者とChairの主導で1996年から始められたのですが
指導医評価をいちいち書いたり、retreatで缶詰になって評価会議をするのは結構大変です
それでも
1. Chairと教育専任指導者のリーダーシップ
2. 匿名性の担保
3. 形成的評価と改善へのサポート
4. 評価内容の指導体制への素早い反映
「これらの蓄積と信頼関係を受けて、レジデントが真剣に指導医評価をしている」というのが現在のシステムを支えているのではないでしょうか
最近たまたま某メーリングリストで話題になり
今週末は当プログラムの「指導医評価のための合宿(retreat)」があります
さらに、同日バンクーバーで開かれるSTFM(Society of Teachers of Family Medicine)の総会で、同僚が「指導医評価」について発表するということで
ミシガン大の家庭医レジデンシ-プログラムの指導医評価システムについてまとめてみました
以下が概要です
1. オンラインで評価表を定期的に提出
月々のローテー ションごとに遭遇した指導医、外来指導で出くわした指導医に対して評価をするように、定期的に評価表が送られてきます
これは研修医の評価も行われている、Medhubというオンラインシステムのプログラムを使っています
提出をしないと何度も催促のメールが来ます
また他の機会に、自分からある指導医を評価をしたいと思えば、自分で評価表をワンクリックでおこす事もできます
2. 評価表の匿名性
それぞれの指導医に対する評価表が3つ以上たまると、それらをまとめた評価が指導医本人に送られます
内容をまとめるのは家庭医療科専任の医学教育専門家(MDではなくPhD)
3. Retreatで指導医レポートを作成
年度の終盤に研修医30名全員が1泊2日で集まり
faculty70名全員の評価レポートを作成するretreatという合宿があります
蓄積された評価の平均点、具体的記載事項を全員で確認し
評価表に書き忘れた意見も加味し、研修医全員の総意による評価レポートを書きます
ちなみにRetreatでは指導医の評価以外にローテーションの評価もします
Retreat自体は、他のプログラムでも行われており
本来はグループで集まりgroup bondingを高めるための親睦合宿だったようです
もちろん、retreatの間は遊びもあります
今年はカラハリリゾートという大きなwater parkです
4. チーフレジデントがレポートを編集
最終的にチーフレジデントが全レポートを編集します
過去には研修医の辛辣な評価で文字通り「泣いた」指導医もいたようですが、
現在はチーフレジデントが半指導医のような立場で、「言葉を選んで」レポートをまとめます(それでも内容はかなり率直です)
5. Chairと教育専任指導者を通して指導医にフィードバック
ChairのSchwenk先生が全員の評価に目を通して、全指導医と個別面談して翌年の各指導医の目標を立てます
各指導医は、自分に対する評価についてレジデントに接触すること自体が一切禁止です
苦情その他は、全て教育専任指導者が受け付けます
6. SummativeでなくFormative
強調されているのは、指導医に対する評価は
"formative(形成的)であってsummative(総括的)でない"ということ
レジデントの教育担当者を選ぶ際には評価が活用されますが
レジデントによる評価で指導医がクビや減給になることはありません
7. 指導医に対する改善のサポート
指導医の改善をサポートするシステムが確立されています
身内で運営しているFaculty Developmentのコースと、Educational Scholars Programを受ける事ができます (もちろん外部のコースも受講可)
またメンター制で、Faculty同士が個人サポートする事もあります
8. レジデント教育への素早い反映
指導医に改善が必要な場合は、具体策が早急に練られますが
改善が無ければ最終的には研修医指導から外されます(減給、クビではありません)
また逆にレジデントからの評価が高い指導医は
翌年には業務における研修医指導のウエートが大幅に増加することがよくあります(勿論本人の希望と合致すれば)
これはレジデントがレジデンシーをする期間がわずか3年という事を考慮してのことで
前年自分たちが行った評価が、翌年の指導体制に早急に反映されるというのはかなりびっくります
分かりやすかったのは、昨年まで「辛辣で一緒に働きたくない」と評価されていたアテンディングが
retreat での酷評を経て
今年は目に見えて、良い指導医になろうと努力していたことがありました
この先生は私も苦手で、1年目はその先生と働く日は抑うつになったのですが、今年は人が変わってびっくりしました
そもそも、指導医に対する匿名の評価システムを確立すること自体はACGMEのプログラムrequirementに厳しく定められています
しかし特筆しておきたいのは、ミシガン大のシステムは
もともとはレジデントからの要望で始められたものだという事です
レジデントの要望を受けて、教育専任指導者とChairの主導で1996年から始められたのですが
指導医評価をいちいち書いたり、retreatで缶詰になって評価会議をするのは結構大変です
それでも
1. Chairと教育専任指導者のリーダーシップ
2. 匿名性の担保
3. 形成的評価と改善へのサポート
4. 評価内容の指導体制への素早い反映
「これらの蓄積と信頼関係を受けて、レジデントが真剣に指導医評価をしている」というのが現在のシステムを支えているのではないでしょうか