今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

家庭医とお産

2008-01-30 09:41:30 | 家庭医療
お産はライフサイクルの中でも1大イベントです

米国の家庭医の研修でお産は必須です

日本の家庭医療学会が示した施設認定の基準では、お産は必須にしませんでした

もちろん、研修でお産が必須の米国でも、診療としてお産を続ける家庭医の数は全体の20%ぐらいまで減っています

研修にお産を入れるかどうか?
その後の診療でお産を続けるかどうか?

ここは明確に分けるべき議論です

私は「仮にお産をその後の診療でしなくても、研修としてのお産は必須にした方が良い」と思います

ライフサイクルの一大イベントのお産を研修せずして、その前の避妊教育から、若夫婦が抱える問題や、新生児の健診まで家庭医としてみていくには、ちょっとデメリットを感じるからです

お産を組み込んだ研修を効率的にまわしていく為には、自らがお産診療をする家庭医のロールモデルがいたほうがbetterです

産婦人科の先生に丸投げでなく、また産婦人科の先生とはちょっと違う視点を持った家庭医の指導医がお産の現場にいた方が、研修医の学びは多いはずです

そう考えると、アメリカで研修をした後、日本へ帰国してお産を継続できるようになりたい

その為には、お産をしっかり研修できるレジデンシープログラムを選んで、お産をみっちりやって日本へ帰ろう!

希望的に考えていたのですが、「福島県立大野病院事件」の話(ブログ:天国へのビザ)を読んで、また気持ちが萎えました

この事件について見聞きするたびに、いつも絶望的な気持ちになります

産婦人科の専門医でさえこんな状況ですから

帝王切開を診療範囲に入れずに、産婦人科のバックアップありでお産をしようと考えている自分の診療(家庭医によるお産)は、日本の社会情勢ではまだ受け入れてもらえないのではないかと不安になります

少なくとも助産師さんがOKなら、上記の診療パターンは許容されるはずだと思うのですが(開業の助産師は、提携した産婦人科をバックアップとしてお産をしています。勿論帝王切開は自分でできません)

家庭医によるお産は、産科医師不足に対するよい処方箋のようにも思うのですが、

いったん歓迎されても、いざことが起きると、手のひらを返したようにマスコミに袋だたきにされるとか

気持ちが萎えるというより、不信感でいっぱいです

さらに泣けてくるのが、診療関連死法案

「医学も医療も、死ぬしかない」とはよく言ったものです

一生懸命、家庭医の修行をして帰国しても、国の医療が死んでいたら何をすれば良いのでしょうか?