今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

COURAGE Trial 日本の心カテ件数はどうなっているのでしょう?

2008-01-07 03:23:22 | 時事ネタ
たまには家庭医と違う話題も

ニューヨークで内科研修をされている先生のブログ

米国臨床留学への道-Manhattan

2007.9.15の記事を読んでいて、気になる記載に出会いました

「COURAGE Trialを受けてStable Anginaに対するカテが激減した」

COURAGE Trialって何だろう?

気になって、The New England Journal of Medicine (NEJM) に2007年3月に発表された下記論文を読んでみました

Optimal Medical Therapy with or without PCI for Stable Coronary Disease

かいつまんで結果を言うと

冠動脈病変がある症状の安定した人に対して、

ステントを含めた血管内治療薬物治療5年生存率

全く差が出なかったということです

デザインも見てみましたが、ざっとみて大きな穴はあまりなさそうです
(intention to treat, lost to follow upなど)

あえて言えば3000人ぐらいのenrollmentのために3万人以上も候補者がいたこと(絞り込みの率がとても高いので、そのプロセスで恣意的な操作が入ったという疑念が残ります)


これを受けてアメリカでは心カテが激減したとのこと

以前、循環器をやっていたのですが

症状の比較的安定した血管内病変に対して、PCIをしながら

「本当にこれに長期的なメリットがあるのだろうか?」

疑問に思っていました

あまりメリットが無いのではというのは、結構言われていました

循環器はやることが派手なので満足感も高いのですが、EBMを勉強して、PCIの限界を感じたことが記憶に残っています

くしくもその答えとなる論文が出たようです

たった一つの論文ですべてを言い切るのも危険ですが

新しい知見に敏感に反応するのがアメリカ

対して日本はどうなっているのでしょうか?

日本では、欧米でバイパスの適応症例でも積極的に循環器内科がPCIをする傾向にありました

つまり循環器が結構イケイケです

となると、この論文をまともに受け止めた場合、日本の方がカテ減少率が多いはず

なんて勝手に思いましたが

どうなっているのでしょう?

ちなみにCTで冠動脈病変を良好に描出することが可能となり、診断カテが激減したということを、先日ある病院のホームページで知りました。

循環器の世界は変動が激しいので、専門外といえど新しい動きには目を向けておきたいものです