-i- と -uj- についてある程度説明している入門書は少ないように思うが、手元にある入門書の中に2つの対照的な記述があったので紹介する。
大島義夫「エスペラント独習」(1949年初版発行)より
国の名を示す接尾辞わ現在二つもちいられており、一つわ -i- 、も一つわ -uj- である。-uj- にわもともと「いれもの」の意味があり、古くから使われてきたが、国際労働者 esp. 運動がさかんになってから、国際的な -i- がひろくもちいられるようになった。-uj- が保守的なエスペランティストにもちいられているのにたいして、-i- わ進歩的な人びとのあいだにひろまりつつある。
-i- が用いられる理由:1)国際的な接尾辞であること(ブルガリア、ギリシァ、ルーマニア) 2)-uj- にいれものの意味があるのにたいし地理的な意味しかないこと 3)-uj- にわ、いれもの、植物名など多くの意味があること。
小坂エスペラント講座(1954年初版発行)より(一部簡略化)
国名接尾辞 -uj- の代わりに、国際性接尾辞であるとして、-i- を用いる人がある。・・・しかしエスペラントには io(何かあるもの), litanio(連祷), polio(騎乗球技), monarkio(君主政治), gobio(川はぜ), angio(脈管), geranio(げんのしょうこ)など -io に終わる語が非常に多いので、その上に接尾辞 -i- を用いることはまぎらわしいのみならず、一般に接尾辞はそれに品詞語尾を付して独立に用いられるものであるが(ilo, ina, ree, emi など)、接尾辞 -i- は除外的存在となり(io, ia 等は用い得ない)、エスペラントの合理性の上から見て感心出来ない(Cxilio, Algxerio などの i は接尾辞ではなくして、元来 i のついた語根なのである)。
なおこの接尾辞 -i- は1907年エスペラントに対抗して起った新国際語 Ido の影響を受けて万国エスペラント協会(UEA)の Hodler 氏一派が用い始めたもので、これに対し日本エスペラント大会は満場一致で接尾辞としての -i- 排撃の決議をしている。
このカテゴリーは一応これで最終回とする。私には -uj- 支持者の論理が勝っているように思える。あなたはやっぱり -i- を使い続けるだろうか?
写真はハノイ近郊のお寺