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◇企業システム◇米アップル、多機能情報端末「iPod」発表

2010-02-03 09:18:14 | クライアント

 【クライアント】米アップルは、ウェブの閲覧、電子メール、写真の鑑賞、ビデオや音楽の視聴、ゲーム、電子書籍の読書など、数多くの用途に使える革新的なデバイス「iPad(アイパッド)」を発表した。ユーザはiPadのレスポンスの良い高解像度マルチタッチディスプレイで、iPad専用に設計された12の革新的なアプリケーションや、App Storeで提供されている140,000以上のアプリケーションのほぼすべてを利用することができる。iPadは厚さが約1.3cm、重さが約680gと、現在販売されているどのノートパソコンやネットブックよりも薄くかつ軽量。iPadは499ドルからという破格の価格で3月下旬より販売される。 (アップル:10年1月28日発表)

 【コメント】アマゾンンの「キンドル」が注目される中、アップルは多機能情報端末「iPad」を発表した。丁度手のひらに乗る端末(PC)として、今後急速に普及が見込まれている。米国内ではソニーが対抗機種を発売しているものの、国産メーカーは沈黙状態である。わずか、米国内において「iPad」の商標を富士通が取得していたということで、今後交渉が行われるといった報道のみである。商標登録もいいが、国産メーカーとしてあまりにもふがいがない。よく考えてみると、もう十年近く前になるのであろうか、NECなど国産メーカー数社が「電子ブック」を製品化し、大々的に売り出したが、売れ行きは散々で、その後、国産メーカーから電子ブックの新製品発表は途切れてしまった。

 そんな中、アマゾンや今回のアップルの製品が発表され、世界的に注目を集めている。日本国内での市場は、新聞社や雑誌社との著作権の問題が複雑に入り組んで、電子ブックのを販売するのは容易ではないことは十分に察しは付くが、さりとて後発の海外メーカーが新市場開拓に向け新製品を市場に投入し、成功を収めつつあるのを見て、国産メーカーは何らかの手は打てないのかと、はがゆい気持ちにさせられる。かつて、ホストコンピューターすなわちメインフレームに関しては、国産メーカーはIBMの後追いをしていれば何とかなった。その後、IBMはPC事業を放棄したわけだが、国産メーカーはIBMの後追いばかりするうち、自発性が損なわれてしまったかに見えて、PC事業での戦略が見えてこない。

 SAPのERPはトヨタのカンバン方式を真似したといわれ、また、アップルのiPodは日本のMDの圧縮技術を応用し、成功を収めたとも言われている。ここには、日本人が開発した技術を基に、海外メーカーが製品化し成功を収めるという図式が感じ取れる。これはかつて日本メーカーが得意としてきた戦略ではなかったのか。何故、逆転したのか。その一つの原因は国産メーカーが官僚体質化しているからではなかろうか。アマゾンもアップルも中小企業みたいに一つの目的のために全社一丸となって完成させる。これは一昔前の国産メーカーの姿だ。今国産メーカーの多くが、会議会議の連続(会議は本質的に責任を相手に擦り付けることがほとんど)で、誰もが責任逃れをして、一向に進むべき道が明確にならない。これではアマゾンやアップルの敵にはなり得ないし、韓国や台湾のメーカーにも抜かれてしまう。

 ところで多機能情報端末「iPad」や「キンドル」の前途は洋々としている。今後ノートパソコンやデスクトップパソコンの市場を、侵食する可能性も秘めている。特にマンマシンインターフェイスは新鮮だし、より幅広い業務に応用が可能のように思われる。本格的な情報革命がこれから訪れる気配が感じられ、今後は多様なアプリケーションの開発が焦点になろう。しかし、ここでも国産メーカーの存在感は限りなく薄い。(ESN)