ターフの風に吹かれて

一口馬主の気ままな日記です。
キャロットクラブの会員です。

あのとき人生の岐路

2015年04月09日 | ブログ
昔から本を読むのが好きだった。
今も大量に読んでいる。

本好きの人ならやっている人も多いだろうが、
逆に普段全く読書をしない人は信じられないだろうが、
僕は大体いつも3冊の本を同時進行で読む。

本を持って歩くのが面倒ということもあって、
リビング、寝室、書斎のそれぞれに本を置いておき、
その部屋にいるときにその本を読む、
というやり方で本を読んでいる。
そのほうが変化があって面白い。

そんな僕は、作家になるのが夢だった。

その夢が、じつは一度実現しかけたことがあった。
いや、一度は実現したといってもいいか。

あれは30歳手前のころ。
僕の書いた小説が出版されたことがある。
もちろん自費出版じゃない。
誰もが名前を知っている大手出版社からだ。

わりと売れて2冊目も出た。
そして編集部から作家にならないかと誘われた。

いちおう本を世にを出していたのだから、
その時もう既に作家だったと言えなくもないが、
僕はまだ本業の仕事のほうも続けていて、
つまり、それをやめて作家一本でやらないかと言われたのである。

悩んだ。
本当に悩んだ。

大学を卒業して働き出してから7年。
仕事も順調だったし、収入もそれなりにあった。
その安定を捨てて、
どうなるか分からない未知の世界に飛び込む恐怖。

しかし、作家は子どもの頃からの夢。
実際に2冊の本を出して、
編集部からもそれなりの評価をもらっている。

何とかやっていけるのではないか。
いや、もしかしたら売れっ子作家になって、
もてはやされるのではないか、なんて妄想もしたりした。

家族がいなければ間違いなく作家の道を選んでいただろう。
奥さんに暗に反対された。
それがいちばん大きかったかもしれない。

いや、ここで奥さんのせいにするのは卑怯だな。
自分に勇気がなかっただけ。
作家一本でやっていく自信がなかっただけ。

断って以来、小説を書くことはすっぱりとやめた。
そのまま二足のわらじを続けてもよかったのだが、
そこは何となくけじめをつけたかった。
それが自分に負けた男のほんの少しの矜持だったのかもしれない。

いま思えば、あのとき本当に人生の岐路だった。
いま、あのときの選択が間違いだったとは思っていない。
後悔もしていない。

今は、趣味の範囲ではあるが芝居の脚本を書いている。
それを公開する場もあって、多くの人に喜んでもらえている。
描いていた夢の世界とは別の形ではあるものの、
それなりに満足感はあり、
これもまた夢の実現のひとつなんだろうと思っている。

ただ、別の道に進んでいたらどうなっていただろう、
という素朴な思いはある。
人生という道をもう一度歩けるなら、
今度はもうひとつの道を選んでみようと思う。

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