昔から本を読むのが好きだった。
今も大量に読んでいる。
本好きの人ならやっている人も多いだろうが、
逆に普段全く読書をしない人は信じられないだろうが、
僕は大体いつも3冊の本を同時進行で読む。
本を持って歩くのが面倒ということもあって、
リビング、寝室、書斎のそれぞれに本を置いておき、
その部屋にいるときにその本を読む、
というやり方で本を読んでいる。
そのほうが変化があって面白い。
そんな僕は、作家になるのが夢だった。
その夢が、じつは一度実現しかけたことがあった。
いや、一度は実現したといってもいいか。
あれは30歳手前のころ。
僕の書いた小説が出版されたことがある。
もちろん自費出版じゃない。
誰もが名前を知っている大手出版社からだ。
わりと売れて2冊目も出た。
そして編集部から作家にならないかと誘われた。
いちおう本を世にを出していたのだから、
その時もう既に作家だったと言えなくもないが、
僕はまだ本業の仕事のほうも続けていて、
つまり、それをやめて作家一本でやらないかと言われたのである。
悩んだ。
本当に悩んだ。
大学を卒業して働き出してから7年。
仕事も順調だったし、収入もそれなりにあった。
その安定を捨てて、
どうなるか分からない未知の世界に飛び込む恐怖。
しかし、作家は子どもの頃からの夢。
実際に2冊の本を出して、
編集部からもそれなりの評価をもらっている。
何とかやっていけるのではないか。
いや、もしかしたら売れっ子作家になって、
もてはやされるのではないか、なんて妄想もしたりした。
家族がいなければ間違いなく作家の道を選んでいただろう。
奥さんに暗に反対された。
それがいちばん大きかったかもしれない。
いや、ここで奥さんのせいにするのは卑怯だな。
自分に勇気がなかっただけ。
作家一本でやっていく自信がなかっただけ。
断って以来、小説を書くことはすっぱりとやめた。
そのまま二足のわらじを続けてもよかったのだが、
そこは何となくけじめをつけたかった。
それが自分に負けた男のほんの少しの矜持だったのかもしれない。
いま思えば、あのとき本当に人生の岐路だった。
いま、あのときの選択が間違いだったとは思っていない。
後悔もしていない。
今は、趣味の範囲ではあるが芝居の脚本を書いている。
それを公開する場もあって、多くの人に喜んでもらえている。
描いていた夢の世界とは別の形ではあるものの、
それなりに満足感はあり、
これもまた夢の実現のひとつなんだろうと思っている。
ただ、別の道に進んでいたらどうなっていただろう、
という素朴な思いはある。
人生という道をもう一度歩けるなら、
今度はもうひとつの道を選んでみようと思う。
今も大量に読んでいる。
本好きの人ならやっている人も多いだろうが、
逆に普段全く読書をしない人は信じられないだろうが、
僕は大体いつも3冊の本を同時進行で読む。
本を持って歩くのが面倒ということもあって、
リビング、寝室、書斎のそれぞれに本を置いておき、
その部屋にいるときにその本を読む、
というやり方で本を読んでいる。
そのほうが変化があって面白い。
そんな僕は、作家になるのが夢だった。
その夢が、じつは一度実現しかけたことがあった。
いや、一度は実現したといってもいいか。
あれは30歳手前のころ。
僕の書いた小説が出版されたことがある。
もちろん自費出版じゃない。
誰もが名前を知っている大手出版社からだ。
わりと売れて2冊目も出た。
そして編集部から作家にならないかと誘われた。
いちおう本を世にを出していたのだから、
その時もう既に作家だったと言えなくもないが、
僕はまだ本業の仕事のほうも続けていて、
つまり、それをやめて作家一本でやらないかと言われたのである。
悩んだ。
本当に悩んだ。
大学を卒業して働き出してから7年。
仕事も順調だったし、収入もそれなりにあった。
その安定を捨てて、
どうなるか分からない未知の世界に飛び込む恐怖。
しかし、作家は子どもの頃からの夢。
実際に2冊の本を出して、
編集部からもそれなりの評価をもらっている。
何とかやっていけるのではないか。
いや、もしかしたら売れっ子作家になって、
もてはやされるのではないか、なんて妄想もしたりした。
家族がいなければ間違いなく作家の道を選んでいただろう。
奥さんに暗に反対された。
それがいちばん大きかったかもしれない。
いや、ここで奥さんのせいにするのは卑怯だな。
自分に勇気がなかっただけ。
作家一本でやっていく自信がなかっただけ。
断って以来、小説を書くことはすっぱりとやめた。
そのまま二足のわらじを続けてもよかったのだが、
そこは何となくけじめをつけたかった。
それが自分に負けた男のほんの少しの矜持だったのかもしれない。
いま思えば、あのとき本当に人生の岐路だった。
いま、あのときの選択が間違いだったとは思っていない。
後悔もしていない。
今は、趣味の範囲ではあるが芝居の脚本を書いている。
それを公開する場もあって、多くの人に喜んでもらえている。
描いていた夢の世界とは別の形ではあるものの、
それなりに満足感はあり、
これもまた夢の実現のひとつなんだろうと思っている。
ただ、別の道に進んでいたらどうなっていただろう、
という素朴な思いはある。
人生という道をもう一度歩けるなら、
今度はもうひとつの道を選んでみようと思う。