フリーターが語る渡り奉公人事情

ターミネイターにならないために--フリーターの本当の姿を知ってください!

地獄労働としての偽装請負ーー手が曲がらない!

2006-08-12 21:00:26 | 現状
 最近、偽装請負で働いている20代の男性から話をうかがった。
 彼は、京阪神圏の大学を卒業した後、フリーターを始めた。聞けば、派遣・業務請負の会社に登録して働いているという。そこからの指令によって、たとえば大山崎など京阪神の辺鄙なところにある工場などに勤務しているそうだ。
 「自動車を作るための溶接の仕事を経験した」と彼は言った。ボタンを両手でおさえると、自動車の部品に200Kgの圧力がかかり、溶接できるそうだ。その作業をずっとやっていると、やがて、手のひらを内側に曲げる動作ができなくなるという。
どういうことか。厚手の軍手を二重にしてはめる。それで、両手のてのひら全体を使ってボタンを押す。そのうちに、だんだんと手が固まって、なめらかな動きができなくなってくるという。人を無能にしてゆく労働なのだ。
こうした、誰もが嫌がり逃げたがる過酷で破壊的な労働が、下請け・孫受け・偽装請負またはヤミ派遣などにまわってくる。そうした仕事がなければ読者も乗っている自動車は作れないのだろうか?
派遣・請負会社の仕事は、田舎か都市郊外など、交通不便な辺鄙なところに行くことがほとんどだ。現に彼は鳥取などへの出稼ぎも経験している。なのに、派遣会社は電車代は出してもバス代は出さない。タクシーチケットもない。駅から本数の少ないバスに乗るか、派遣先の会社の人たちが何台かの車で駅前までむかえにくる。会社のチャーターしたマイクロバスに乗り込むこともある。
当然、通勤時間は長くなる傾向がある。また、短期雇用契約がほとんどということもあり、どこに問題の会社があったのか本人もよく覚えていないこともある。そうすると、あとで労働組合や弁護士に相談しようとしても、なかなか場所を特定しにくい。マスコミにも報告しにくく、取材も入りにくい。
派遣・業務請負の仕事は辺鄙なところが大半だと彼は言う。わたしも経験的に言ってそう思う。また、他のアルバイターが、休憩時間に「ここ、通いにくいよね」「えー、こんなところに会社あんの?」などと言っていたのを覚えている。

少し話をするたびに、聞いているこちらがクラクラしてくる。同時に、彼もわたしの労働体験を聞いてくる。相互取材だ。少し話がすすむたびに、二人とも梅干の顔になってしまった。表情に苦悩をうかべないでは話せない内容なのだ。

今では彼は、関西のある労働組合に入っているそうだ。あんまりマッチョじゃないのが居心地がいいという。研究会・職場の人権にも出入りしている。
当然のように、労働問題で有名なルポライター・鎌田 慧さんの名前も知っていた。今後、直接働いて、参与観察のような形でレポートを作成したいと語っていた。
彼のプロジェクトはすべての働くものにとって大切なことだ。成功を祈ってやまない。


当ブログ内関連記事:派遣・請負の特徴
違法は日常 誰のせい?
闇の仕事--脱開発主義
派遣・請負の暗闇

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2006/8/15読みやすくするために一部訂正しました。大意に変わりありません。




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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (志村建世)
2006-08-12 22:06:50
労働無政府時代を少しでも改善するために、今ある制度や機関、たとえば労働基準監督署などをゆさぶってみたらどうでしょうか。役人は権限がないと逃げるでしょうが、制度や法律は、基本的に「後からついてくる」ものです。
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Unknown (ワタリ)
2006-08-15 10:58:45
志村さん。いらっさいませ。提案をありがとう。



あなたのおっしゃるのは難しい問題提起です。というのは、労働基準監督署は、中立とはいうものの企業よりだからです。また明確に法律や条令に違反している場合は労基署は動けます。だけど、それ以外のときにはほとんど効果がないでんです。

で、法律については、過労死しやすい環境を作るフレックスタイム制導入など、労働法の改悪と労働組合関係者が言うような事態が続いています。

今は、労働契約法制というものが審議されています。労働法の枠組みを形骸化しかねない危険な法案です。

こういった状況を見るに、法律を守れ、といわないと、せっかくの労働者よりの法案を自分たちで作成しても改悪派に押し切る形で利用されかねない危なっかしさはつきまといます。
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補足 (ワタリ)
2006-08-16 23:57:03
今日、同じ男性からもう一度話しをうかがいました。

指が曲がらなくなることは「ばね指」というそうです。彼によれば、それは自動車工場で働きはじめてから2-3日で発症し、ライン勤務が終わる症状がとれるそうです。実際、お会いしたらその人の指もちゃんと曲がっていました。

なお、手首のスナップはちゃんと残っており、指だけが曲がらなくなるとか。食事中、おはしは持てなくてもスプーンは持てる状態だそうです。
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Unknown (さとう)
2006-08-17 00:28:48
トラックバックありがとうございます。

私からもトラックバックをさせて頂きたいと思います。



今の企業経営はこのようなフリーターの人たちに支えられていますね。しかし、支えられているという認識があまりないのが現実なのかもしれません。
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Unknown (ワタリ)
2006-08-25 20:43:19
さとうさん いらっしゃいませ。



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昔もフリーターのような存在として、たとえば季節工・臨時工・出稼ぎ・日雇いといった人たちはいました。江戸期までは主君と短期雇用契約を交わして諸国をめぐる渡り奉公人も。

そうですね、今の企業社会はフリーターらの犠牲によって成り立っています。それについて自覚がないのはなぜでしょう? 見たくないことだから見ないことにしているんでしょうか?

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Unknown (ワタリ)
2006-08-25 20:44:14
「ばね指」について、Yahooで検索すると出てきました。

最初のひとつをあげておきます。



http://www.rakuda.co.jp/byouki/b_jyouhanshin12.html
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