フリーターが語る渡り奉公人事情

ターミネイターにならないために--フリーターの本当の姿を知ってください!

闇の仕事ーー脱開発主義

2006-08-02 23:10:14 | 現状
この記事は、「タカマサのきまぐれ時評」「ソフトなヤクザとしたの偽装請負と工場」http://blog.drecom.jp/tactac/archive/924へのトラックバックです。


ハラナさん、お久しぶりです。あなたのブログのコメント欄に書こうとしました。すると長くなったので、こちらの記事からトラックバックします。

偽装請負の話を書いてくれてありがとう。

以前、自分がとある偽装請負で働いたときにも、休憩時間はすべてのシフトで45分でした。やはり大きな事業所のなかを、食堂まで移動するのに10分かかりました。
女性のわたしは、一日5時間15分というシフトだったので、昼に疲れ果てて食事をとれないことはなかった。けれど、徹夜も含む一日12時間(+残業)シフトの男性のなかには、昼休みになると机につっぷして伏せている人たちはいましたね。彼らはほとんど毎日昼食ぬきです。
正社員はそれを当たり前のように眺めています。(わたしのシフトは女性を自立させない差別的割り当てで、こちらも男性のシフトとセットで問題なんですけれどね。長すぎる・短すぎる労働時間→性差別・過労死問題。オイルショックのときに、均等待遇とともに女性の社会進出をすすめれば、こんなことにはならかったのに……。人事部のアホ!)

電機産業って日本の主力産業で、労働組合がありますよね。その組合は、同じ業界のなかの派遣ーーだいたい今の40歳以下くらいの世代ーーをこうしてこき使い、使い捨てにしてきたのです。そうして、正社員層の分厚い給与・保障を守ってきたわけです。

「どうせ短期間で使い捨てにするんだから、ぶっ倒れるまで働け」という意識からか、派遣は、正社員の2倍・3倍のノルマ(元はソ連の収容所での強制労働割り当ての意味)を求められます。疲れ果ててノルマをはたせなくなったときにクビです。あるいは、仕事仲間が「あの人はサボっている」「会社の悪口を言っていた」などと密告したらおしまいです。

ドイツでは、「盗品を買う人がいなければ泥棒はいなくなる」という理屈をとっています。具体的には、労働力商品を買う派遣先企業が違法行為をしたら、*1民事・刑事さらに行政でもで罰せるようになっています。*2韓国では日本の惨状に学んで、ナショナルセンターが派遣制度の導入に全面的に反対しています。

日本も、複雑でわかりにくく改正も頻繁な労働者派遣法は、やめてはどうかと思います。酷使、侮辱的扱い、安易な切捨て、ムラ社会独特のヨソ者への極度の冷さ……。

これが、ヤミ派遣になると、拘束時間に対して給与を支払わないなど、もっと>ヤクザ な世界になります。

さらに、テキヤのバイトになると、想像を絶します。
以前、えびすさんの店子のバイトとして記事にしたのですが、食事抜きで働く、休憩時間にトイレにも行けない、サイフを会社に預けなればいけない(ポケットに小銭入れが入っていてもつるしあげをくらう)といった調子です。おまけに、広告に名のあった有限会社は、いつも営業している会社とは別のところなんです。まさに「無法地帯」といっていいでしょう。そういう世界での人を人とみなさない残酷さ、上司の部下の扱いのひどさも相当のものです。長居したり現場のチーフをまかせられたアルバイトの目下のアルバイトへの過酷さは筆舌に尽くしがたい。

高原 基彰さんが、フリーター問題について、問われているのは日本国内の開発主義とその既得権益層だとの議論を提出しています。これは重要な着眼点です。
日本の場合、新中間層と言われた団塊の世代が既得権益層です。組合に守られ、女性や若い世代をパート・アルバイトの形で正社員の1/4の人件費で使いながら、その高い給与を維持してきた世代です。
本当なら、70年代初頭、オイルショックのころに、「もう高度成長は終わった」「全員が正規雇用なんてありえない」「みなが安定した中産階級になれない」と認識するべきだった。なのに日本の場合、できなかった。そして80年代半ば、バブルがやってきた。もう一度、みなが金持ちになれるという幻影が広まった。
ちょうどそのころ、労働者派遣法が成立(1986年)。不安定下層の政策的創出と、母子家庭手当てを20歳までではなく18歳までにするなどの福祉の縮小もはじまった。中曽根政権時の小さな政府改革です。
それが是正されないまま、今日にきている。そういったことが偽装請負の背景にあると考えていいと思います。

>一日ごとに売られゆく
>夢の夢こそあわれなり

(「黒田節」の替え歌より)

派遣では、人がワゴン車とかトラックに積まれて、運ばれていきます。派遣会社の営業は、どこに行くか、どんな仕事か、いつまで仕事があるのか知らせてくれません。労働者がつっこんで質問すると、仕事を干されてしまいます。労働力の商品化が進んでいます。この開発の動きを、もうここで止めて別の方向をめざさなければならない時代にわたしたちは生きているのです。

開発主義から距離をおいたオルタナティブな組合が必要です。電機・鉄鋼・炭鉱・鉄道といった主要な産業以外の労働者をも代弁する新しい組合が求められているのではないでしょうか?

(この記事はネットカフェからラフに書いたものです。後日、リンク・注を入れる予定です。)

*1 民事・刑事双方で→民事・刑事・行政で (2006/8/3訂正)
中野 麻美「労働者派遣法の解説 新訂版 一橋出版2003 pp122-123」

*2 「研究会・職場の人権」2006年5月定例会http://homepage2.nifty.com/jinken/news/yokoku.htmでの脇田 滋さんの発言より。

当ブログ内関連記事:派遣・請負の特徴
違法は日常 誰のせい?
請負・派遣の闇

→トラックバック用URL http://d.hatena.ne.jp/nami-a/20060801/p2
http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20060803/1154621348





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7 コメント

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トラックバックありがとうございました (ハラナ)
2006-08-03 00:30:12
ニホンの厚生労働省って、やっぱりダメなのかも。

先日なくなった社会学者梶田孝道さんが、行政・学問は受苦層への対応のためにくみたてられておらず、基本的に業界の利害調整機関という指摘をされていましたけど、リクルート疑獄事件や労災認定でもわかるとおり、労働力搾取のためのてだすけをしているような機関ですね。

一部の、女性官僚とかがんばっているとはおもうんですけど、総体としての体質が、業界べったりという感じですね。

もっとも、先年なくなった社会学者、飯島伸子さんは、わかいころ「厚生省や環境庁は、企業のジャマばかりする二流の官庁」みたいないいかたをされて、びっくりしたそうです。厚生省・環境庁でも、充分、公害などのおさきぼうをかついでいたのに(笑)。
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ひょっとすると・・・ (宮廷芸術家)
2006-08-03 17:54:23
ブログを開設されている高原さんは、基明さんではなく基彰さんだったように記憶しています。今一度お確かめになってください。
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動くイネ (ワタリ)
2006-08-03 22:44:06
ハラナさん、宮廷芸術家さん、いらっしゃいませ。

まとめレスで失礼します。



>ハラナさん



そういうふうに、日本の行政も学問もイマイチなのは、月並みな話になりますが学校教育に問題があったのではないかと。



日本の学校教育は、知育偏重だと時折批判されます。これは違うとわたしは思っています。

日本の学校教育は、何よりも官僚タイプの人間養成所なんじゃないでしょうか? 一部の優秀な官僚と、プチ官僚を作る。あとはただ従順にお上に従う層を作る。

官僚が政治家の「先生」となって国会答弁を作る。政治家は従順に読み上げる。その政治家のいいなりになって「常民」?)ができる。会社とか組合といった地域社会に住んでいる人たちが。

で、他候補に流れようとする「雑草」はむしる。将来の雑草にならないように、子ども、特に中等教育の段階で「腐った果物」を切り捨てる。

滋賀では、いつも当選していた候補を破って、みどり系の元学者議員が誕生した。これは、選挙民が、会社や組合といった田んぼ(票田)のなかにきちんと整列したりせず、「動くイネ」になった結果だと思う。

「動くイネ」は、じっとしていないで踊ったりする。子どもがこれをやると、AD/HDというレッテルを貼られてクスリづけにされる。若者がやるとレイブやサウンドデモ禁止令が出される。だけどやっぱり止まらない。

また、「動くイネ」は、個人の判断により席を立って、田んぼのなかの好きな席に座ってしまう。政治家の統制はきかない。学校教育の軍隊式行動訓練も効かない。

あるいは、別の田んぼに歩いていったり(転職・転社)、畑にいつくイネさえあったりする。つまり、海外に行ったり、学校の外での経験をもって学校に戻ったり、役所から会社へ、会社からNPOへと動く。

こうすると、政治家は誰がイネで誰が雑草か、区別がつかなくなってしまう。

今起こっている事態は、これまで田んぼにいたイネが、教育の効果もむなしく自由に移動するようになった、ということだと思うんです。



で、動きがノロくて、人を教化しようとしてばかりのお役所を、もう一部の人たちはあてにしなくなりつつある。役所とか、半分は役所みたいな大企業の安定したサラリーマンというのもだんだん口が減ってきている。



まあ、役所は役所でやることがあるんで、それはやってもらわないと困るんですが。NPOのボランテイアを、人件費の安い下請けとして使う傾向はなんとかしなければ。。。。



厚労省に環境庁ですか? 別名「国土破壊省」とも言われる国土交通省よりはマシなのか?

環境庁については、知り合いの自然保護活動家が、動植物の生態に詳しくない官僚たちが、いいかげんなことをやっていると言っていましたね。現場の活動家、自然愛好家らのほうが実情はよく知っている、と。



で、問題解決には、遠回りではあっても役人とその僕を作る教育をやめるべきじゃないかと思うのですが、どうでしょうか?

役人志向の教育だけではなく、芸術志向、学問志向、起業志向などいろいろな教育ルートを作る。これしかないと思うんですけど。



「ある教授の形態がある学習者にはたいへん効果があっても、他のものにとってはほとんど効果がないことがありえる(ブルース・ジョイス、マーシャ・ウィル)」

「彼(ロバート・フィッゼル)は、学校における成功ということについて50の変数を見出し、驚くべき結論を引き出した。すなわち、ある学校で成功することに関わる特性は、他の学校で失敗することとしばしば関係しているということである。もしフィッゼル説が正しいとすれば、一つの学校で教育の機会均等を図ろうとすることは、不可能になるということに強い根拠を与えるものである。(ヴァーノン・スミス、ホワイト・バー、ダニエル・バーク著 仲原 晶子 監訳 角本 向樹 中西 良夫 共訳 「教育におけるオルターナティブ」学苑社1990.4pp112-113)



ま、どんなタイプの教育でも失敗したとか、自分にあったタイプの学校や教育とめぐりあえなかったといった人の尊厳も尊重する、ということも忘れずに。



そうそう、補足を。この記事でちょっと労働組合について書いたのは、「大学入学率100%」を目指す組合活動家との会話がきっかけでした。抜け目のない秀才、といったタイプの彼は「今時、大学出ていないなんて」と、まさに大学を出ていないわたしに向かって言い放ったんです。

そうやって能力開発を全員に強いて、結果として障害者を「果てしない教育(佐々木 賢)」のアリ地獄に陥れるのでは、国家財政も個人の家計も、それに高卒や中卒で働く人の尊厳も決壊してしまいます。

能力開発しなくたっていいから、自分は警備員で行く。あるいは、荷物運びでいいよ。だけど、自分たちの権利はちゃんと守る。そういう、脱開発型の労働組合があったらいいな、と思うものです。



私事で恐縮ですが、自分は、片親が理系の研究者でした。そういう関係もあって、登校拒否すると大学・院には行けない、そうしたら一生知的に自立できないっていうプレッシャーをかけられました。それでも、親の能力開発主義をはねのけて、もう一生知的に半人前でもかまわないや、と思って、学校に行くのはやめたんです。個人的な成長・開発を拒んだんです。

知的・身体障害者とのフリースクールの寮での共同生活や、愛媛県の伊方という原発所在地への数度の訪問が、教育者にして学問者でもある父に抵抗する基盤となったんですね。



家のなかでの教育という開発主義とおさらばしても、その後苦労しています。でも、正しい選択をしたんだという自負だけはあります。

こういう、選択による自信があるからこそ、会社とか組合といった田んぼを批判できるんだと思います。

そのうち、高度成長ムラ社会とゼロ成長都市社会というようなタイトルで記事を書く予定です。



>宮廷芸術家さん



親切なご指摘、恐れ入ります。この種のミスが多くて読者には申し訳ないことです。訂正しておきます。







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奴隷か!? (通りすがり)
2006-08-05 14:43:49
ヤミ派遣や請負は過酷すぎますね

労働者を人間として扱わない、まるで、もの扱いですね

日本は、どこからおかしな社会になってしまったのでしょうか!?

身分が保障されている政治家や官僚や公務員は、解らないでしょうね!?

団塊世代の生活安定のために、40歳以下の世代を奴隷のように働かせるのは、おかしいですよ

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Unknown (ワタリ)
2006-08-07 02:42:17
通りすがりさん、このブログにようこそ。



派遣・請負業界全般にわたって、この種の違法/問題行為は日常茶飯事です。



おっしゃるとおり、団塊世代の理解力は絶望的です。

でも、なんとか訴えていかないといけません。彼らが定年が早まってもいいとか、女性でも失業したら困るとかいったことを認め、二歩も三歩もゆずってもらわなければラチがあかないです。

ひとくちに正規雇用とか団塊世代といっても、いろんな立場があります。

自分の息子や甥などが失業したり過労死しそうだったりするとさすがに感づいて、ふだんは若者の悪口を言って盛り上がっている人たちが、自分の身内だけはかばったり心配したりすることもあります。

「ほかの若い世代にも身内はいるんだよ」「それに若者全体への悪い政策をやめさせないと、あなたの身内も守れませんよ」と説得するのもひとつの方法かもしれません。
返信する
Unknown (馬糞)
2006-08-09 10:15:14
転載です



http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20060807/1154959371

>長期雇用の仕組みは、企業特殊的な技能を身につける

>インセンティブを労働者に与えることで、生産性向上に

>寄与している

逆に言えば、それ以外のものにディスインセンティブを

与えているわけで、一概には、いいかわるかは、わから

ない。もちろん公的所得移転システムと無関係に企業が

選択したものなら構わないのですけど、日本型所得移転

システムの上での選択であるという点が問題になります。



http://bewaad.com/20060809.html#c02

ま、金融政策が無用にリスクを拡大する必要は

全くない訳で、長期金利がマイルドなプラスで

安定するようにすべきでしょうけど。
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お知らせをどうも (ワタリ)
2006-08-12 21:38:57
馬糞さん。いらっしゃいませ。

まるで燃料のようなお名前ですね。



ご意見の紹介、ありがとうございます。面白そうですね。また、見させてもらいます。



ラスカルの備忘録さんとわたしとでは、話がかみあっていないという印象があります。



>金融政策が無用にリスクを拡大する必要は

>全くない訳で、長期金利がマイルドなプラスで

>安定するようにすべきでしょうけど



そうですね。それが妥当なところだと思います。





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