新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

こけら落とし歌舞伎座四月大歌舞伎・第一部(2013年4月13日観劇)

2013-04-16 00:44:53 | 歌舞伎鑑賞雑記
待ちわびました,3年余の空白のあと新生歌舞伎座での公演です。

寿祝歌舞伎華彩、鶴寿千歳:テレビのニュースその他で何度も流れためでたさ満載の舞踊。クライマックスではセリで藤十郎が登場し,魁春と染五郎を脇に置いて天上とはかくあるべきかの風情。

お祭り~十八世勘三郎に捧ぐ
勘三郎ゆかりの俳優さんが勢揃い。楽しい舞踊,嬉しい初舞台のはずが,七緒也くんが花道に登場した瞬間,客席からすすり泣きがもれました。
どの踊りも魂がこもっており,異様なほどの緊張感。とくに勘九郎からは今までのきっちりしすぎた踊りに加えて,客席の空気をかきまわすような勢いとタメを感じました。ここでまた観客が号泣。

熊谷陣屋
熊谷に吉右衛門,相模の方は玉三郎,藤の局は菊之助,義経に仁左衛門,弥陀六に歌六。
まさに綺羅星のごとき俳優陣。
一瞬も睡魔の訪れない熊谷陣屋は人生初。吉右衛門の熊谷の立派さ,そこに安定した相模の方が加わり鉄壁の陣容。演者と役柄の必死さが良い方向に働いた菊之助は若くも威厳のある藤のお局,仁左衛門の義経はひととなりが結晶したような深いこころざしと優しい目差し。弥陀六のかけあいは一歩も引かず,歯切れの良い台詞まわし。
相模と藤のお局が妙に息があっており,玉菊コンビが隠し味となって舞台に妙味を添えていました。
3階席最後列からでも観られるようになった花道で,僧形の熊谷が嘆息。合戦の合図で最初は反射的に身震い,次ぎには傘で耳をふたぎ崩れ落ちるように座り込む。立派な姿なだけに,無様なまでの喪失感が哀切きわまりない。「十六年はひとむかし~」の台詞に,はっと私の歌舞伎座観劇がちょうど十六年になることに気づき,こちらも大きく嘆息致しました。

 やはり歌舞伎座で観る歌舞伎は格別です。音響,光,空気,匂いの肌触りすべてが歌舞伎座です。舞台は先代と寸分違わず再現したというだけあって,「ここはどこで・いつだろうか?」とめまいを起こすほど精緻に再現されています。おそらく観劇歴の長い方は酩酊されたのではないでしょうか。劇場内は三階席までエレベーターがつながり,ベンチが減って,物販のスペースが一階と三階にまとめられた他は,こちらも先代とほぼ変わりなし。だもので,三階のカレーコーナーが無くなってしまったと係員に尋ねる人が続出していました。そうそう,女性用お手洗いも素晴らしく増設されていましたので,これからは安心して観劇できますね。

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