新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

エフゲーニ・キーシンピアノリサイタル(2014/05/01)サントリーホール

2014-05-05 23:33:42 | ききもの
チケットを取りそびれ,さりとて1万5千円の席に座る勇気もなく悩んでいたところ,某チケットお譲りサービスでお譲りいただくことができました。(会員割引でC席8600円也ありがとうございます)
 一部はシューマンのピアノソナタ17番。練習曲風の仕上がりで,主題と展開がくっきり。~でも睡魔が少々。
 20分の休憩後,二部はスクリアビン祭り。数年前からスクリアビンのCDアルバムをリリースしているキーシン。この勢いで全曲攻略してくれると嬉しいですね。
ピアノソナタ第2番
 いきなりの大音声,キーシンのフォルテシモはお世辞にも美しいとは言い難い。譜面どおりに弾くとこうなるのかと思います。中声部が独立しているさまがすばらしく,3本目の手が存在しているかのよう。そして,ロシア!行ったことはないけれど,ロシアの湿度と香り。
12の前奏曲からNo2,4,5,8,9,11,12。
 どの曲も好きなので,ひたすら聞き惚れること。ここでもフォルテシモに深さが感じられなくて残念。ぱらぱらとほぐれる高音の音色と絶妙な間合いで紡がれる曲想。最後の曲を弾き終わった瞬間に,円い円環が閉じられたような印象を持ちました。

アンコール
いつものシチリアーノ
スクリアビン8つの前奏曲から第5番:これもご馳走。
ショパンのワルツ 革命:デザートにこれを持ってくるか。アラフォーのキーシンの,技巧と体力の頂きをみせてもらいました。

フランス・ブリュッヘン&18Cオーケストラ(2013/04/06 於:すみだトリフォニーホール)

2013-04-09 00:18:17 | ききもの
 数ヶ月に一度,錦糸町へお出かけです。職場帰りに気軽に通えるコンサートホールがあるってスバらしい。
1934年生まれのフランス・ブリュッヘン氏が振る18Cオーケストラ,最後の日本公演とのこと。舞台上にブリュッヘン氏が車いすで登場。
1曲目はモーツァルトの40番,古楽器の渋い響きと不安定さにどきどきしながら氏のなめらかな指揮を堪能。続いてピアノソロ,ユリアンナ・アヴデーエワによる「ショパンのピアノ協奏曲第1番」。すらりとした痩躯に燕尾服(もちろんズボン),長い髪を無造作にヘアクリップで束ねた姿は2010年のショパンコンクール優勝の時と変わらず。小さなヒストリカルピアノが指揮者と向かいあわせに置いてあるので,目を見はりホールを見渡すアヴデーエワさんとオペラグラス越しに目が合うような錯覚におちいります。古楽器とヒストリカルピアノの響きはニスで鈍く光る床を柔らかい皮のダンスシューズで踏み歩くような音。もともと音程も響きも不安定な古楽器(特に中低音金管,はっきり言うとホルン)ですが,ソリストがオケの響きの一番安定した瞬間にピアノの音を乗せてふくらませるので見事に調和が保たれます。主題の転調では首をかしげて,オケのみのパートでは体を揺らして音の流れに身をゆだねるアヴデーエワさん。完成された現代の楽器ではピアノとオケが対峙して「がっぷり四つの勝負」という印象となりますが,古楽器での協奏曲は「ピアノも弦楽器だなぁ」というしみじみとした音色でありました。休憩を挟んで「ショパンのピアノ協奏曲第2番」さらに音は艶を帯びてきて,後半でのチェロとピアノの掛け合いは,こんな曲想でしたっけ?という新しさです。圧倒される,というよりは一緒にゴールまで連れて行ってくれるような終曲。
鳴りやまない拍手に,アンコールのショパン/夜想曲第5番 嬰ハ長調 作品15-2、マズルカ第25番 ロ短調 作品33-4の2曲。オケへの気兼ねなくピアノの一部のようになって響くアヴデーエワさんのショパン。コンクール優勝者の貫禄たっぷりの演奏に酔いしれる観客,と舞台上の奏者たち。楽器を置いて瞑目して特等席でじっくりと鑑賞しておられました。

追記:ピアノ協奏曲第1番の2楽章,近くの席で電子アラーム音。完全に耳を無防備な状態にして聴き入っていたので,全身を針で刺されるような衝撃でした。人の五感ってすごい。そしてその瞬間に集中力が完全に切れて,ここはどちらでしたっけ状態になりました。人の五感って怖い。

新日本フィル チャイコフスキー交響曲第4番・春の祭典(2012/12/01 於:さいたま会館)

2012-12-02 04:35:51 | ききもの

ニュー日本フィルでチャイコの4番と春の祭典を聴いてきました。生チャイコ4はやっぱすごいわ、まっすぐ座ってられなかったです。


近所でお気に入りのオケを聴けるというのは。なかなかステキなことです。
すみだトリフォニーでピアノコンチェルトを聴く機会が多かったので一度オケ単体での演奏会を聴いてみたくなっていました。
家のすぐそばの公演を半年ちかく前の発売日に張り切って購入しましたので,前方真ん中という最高の位置で鑑賞できました。 チャイコの4番は例のド派手な旋律をこれでもか,と舞台みっちりの大編成で演奏。
バイオリン30丁の迫力と揃ったボウイングはすさまじいものでした。
最終楽章の副旋律にロシア民謡があらわれてくると,年の瀬の気分が盛り上がり,
きらびやかとしか言いようのないフィナーレまで一気に持って行かれました。
春の祭典:すでに古典,しかしどうやってこの変拍子を振るのだろう?
と思ったら,最大公約数の拍でもって,打楽器が入るタイミングを指示するんですね,なるほど。
聴いていると,妙にバレエ・リュスの映像がちらついてきたので何かしらと思ったら,映画「シャネル&ストラヴィンスキー」の映像が脳裏に浮かんでいたのですね。ヴァツラフ!
今年のクラシックも聴き納めになりそうです。よい音楽をたくさん聴けた一年でした。

ダン・タイ・ソン ベートーベン全曲演奏会 第二夜

2012-11-09 04:41:24 | ききもの

トリフォのダンタイソンのベトベン終了。抜群の安定感!

ダン・タイ・ソン ベートーベン全曲演奏会 第二夜 11月8日(木) 於:すみだトリフォニーホール
 
行けるかどうか,日程を悩んでいるあいだに良い席もよくない席もだいぶ売れてしまいました。さすが人気ピアニストの公演です。公演5日前にようやっと3階席を入手しました。
ロシアピアニズムシリーズのダン・タイ・ソンのプログラムはベトベンのピアノ協奏曲4番と5番。オケの第一音がホールに響いた瞬間に「至福」という言葉が脳裏に浮かびます。いつもは1階席で聴くことが多かったので,生オケの醍醐味は体に受ける空気の振動かと思っておりました。3階席では天から降ってくる音に巻き込まれるものなのですね。
ダン・タイ・ソンのピアノは抜群の安定感と一音一音を確かめて楽しんで弾くようす。技巧的な部分はことさら軽やかなタッチで,しかも確実に音をとらえて弾いておられました。指揮のクラウディオ・クルスはベトベンらしい「しつこい」主題のかけあいを丁寧に振り分け,転調を繰り返し音階が渦になっていくピアノ協奏曲の醍醐味をじっくり味わわせてくれました。  
 
~しかし,3階席でオペラグラスを使うと微妙な音のタイムラグに気づいてしまい、軽く酔いそうになってしまいましたよ。

由紀さおりとピンクマルティーニ(2012/10/24 於:大宮ソニックホール)

2012-10-25 23:57:18 | ききもの
友人からのご招待で行って参りました。海外で大ブレイク中の由紀さおりのコンサートということで,全席ソールドアウト。
ピンクマルティーニはオトナの楽団で,サパークラブ(行ったことないけど)なんかでグラスを片手に聴いてみたい雰囲気です。ジャンルもシャンソン・ジャズ・ボサノヴァと多彩。構成員も多国籍で芸達者。ユニゾンでは7割くらいの力量で演奏していても,ソロになると本気度150%で聴かせまくるという力配分もオトナです。

さて,由紀さおりの登場とともに会場にあふれる期待感。鍛え抜かれた声の魔術,エフェクトをほとんどかけていないだろう生演奏であの安定感は驚異です。
1部の後半,バンマスのトーマスが音楽的暴走を開始。そう,昭和ムード歌謡ゾーンです。
完璧なバックバンド,直立不動で歌うスキンヘッド・ロン毛・赤いドレスの女。その曲はザ・マヒナスターズの「菊千代」・・・ステキすぎて腹がよじれました。
メリハリの効いた曲目の構成と分厚い音の渦。ピンクマルティーニと由紀さおりが「音楽で食べていっている」というプロ根性を感じました。
さいごはお客をステージに上げて,ジェンカを踊らせるという趣向付き。(登ってきました)
2時間(うち休憩20分)の濃厚な秋の宵でした。