新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

八月納涼歌舞伎第3部:平成25年8月22日(木)

2013-09-01 23:04:00 | 歌舞伎鑑賞雑記
 狐狸狐狸ばなし(昭和36年初演)
新生歌舞伎座になって初の現代もの。
何も下調べもせず,筋書きさえ読まずに観劇。これが,もう,すばらしく楽しい芝居でした。
扇雀が上方の役者くずれのしっかい屋 伊之助(粘着質),面白くならない筈がない配役。ここ数年の翫雀・扇雀きょうだいの芝居は冴えていて,特に現代ものの芝居になったときは往年の(涙)勘三郎を凌ぐ勢いがあると思います。嫁 おきわに七之助,これがまた声も通って芝居の勘所もつかんだ名女優。さすが勘九郎の息子にして福助の甥!(どうしてこれが正当派のお姫様になるとつまらないのか・・・)なまぐさ坊主に橋之助,ワルい男のダメな魅力がよく出ていて,これも良い配役。勘九郎が少々足りない丁稚の役。シェイクスピアの愚者を彷彿とさせるような,人のうちにある純なる闇を見せてくれてすばらしい。脚本は全く古びず,スラップスティックな味わいが生きておりました。だましだまされ(狐狸狐狸)の内容は,途中でオチが読めてしまったことと,おさわの豹変で水を差されてしまい,客席が冷えたことが残念でしたが大団円の終劇には満場が充実感で満たされました。
劇中,気になる男前が舞台をちらりちらり,劇作家の役どころ。はてこんな役者さんが居たかしらん?と思ったら・・・巳之助でした。まあずいぶんと垢抜けて男前になっていましたよ。
大笑いして,ふと我に返ると。この狐狸狐狸夫婦(扇雀・七之助)は,野崎村のお染久松
じゃあありませんか。こちらの仕掛けにもうひと笑いさせていただきました。

 棒縛り
太郎冠者に三津五郎,次郎冠者に勘九郎,主人に弥十郎。
脳をまっさらに,ただひたすら三津五郎の動きだけをトレースするように観ていました。勘九郎との息のあった舞踊,絶妙なバランスで舞い,飛び,回転する身体。
三津五郎と勘九郎の連れ舞いを観ている時の幸福感はひさびさのものでした。
弥十郎は老け役では小さく見えるのが,この役ではずいぶん大きい。ということは,いつものあの体はどうやって縮めてたたんでいるのでしょうか?これが役者魂なのでしょうか。
ほんとうに8月の芝居は全てすばらしかったです。

まさか,前〃楽のこのスバらしい芝居から明けて月曜日。
三津五郎丞が膵臓癌のため休養に入られることになろうとは予想だにせず,思えば役者さんたちの魂のこもりようは三津五郎へのはなむけでしたか。三津五郎,一世一代になるかもしれない芝居と踊りだったのか・・・。
しばらく私の落ち込みは続きそうです。

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