新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

旅行の進化論

2006-06-18 22:30:43 | よみもの
ヴィンフリート・レシュブルク著 1999年7月刊 青弓社

 温泉好きのローマ人が立派な道路と温浴施設を作ってから後,千年にわたる旅の暗黒時代。特に中世の旅の悲惨さが重々と綴られていて興味深い。
 整備されていないぬかるみ道と馬車の事故,不潔で不快な宿屋から一気に開放された清潔で快適な汽車の旅。庶民にも手が届くようになったリゾート。
近代に入ってからのスイス・山岳観光ブームやモータリゼーションによる宿場町の再発見まで語られていて,縦横無尽な旅の博物誌。
 100年前に世界中に溢れたイギリス人観光客が金離れのよいアメリカ人観光客に代わり,騙しやすく泣き寝入りしやすい日本人観光客(コレは私見)へと移り変わっていく。上出来の2時間ドキュメンタリー番組でも見ているような本でした。