新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

歌舞伎座新開場 杮葺落六月大歌舞伎 (2013/06/25)

2013-08-01 23:09:12 | 歌舞伎鑑賞雑記
第3部

>御存知鈴ヶ森
ありとあらゆる殺陣の工夫を見せてくれる段。つい最近新橋でこの段を観て,通し狂言でも幡随院長兵衛をみたところなので残念ながら新しい発見はなし。
白子()の梅枝は演じ慣れていて一歩あゆむと17,8の美少年の風情がこぼれます。吉右衛門の長兵衛は親分肌らしく,相変わらずの色気。江戸前の親分を演じるには現在この方が最高峰かと。暗い鈴ヶ森から,幕が落ちて淡い色彩の明るい武蔵野の風景に変わって幕。分かっていても,いつもこの視覚効果に驚かされます。

>助六縁の江戸桜

口上にはえび茶に三升の裃を着た幸四郎が登場。これだけでもう涙腺が緩みます。

出の若手の俳優さんできれいどころがならび,やはり米吉の古風な丸い顔が好ましくてすぐに目につきました。下手のお花畑は百鬼夜行の地区もあり。
揚巻は福助。一種壮絶な美貌。甲斐庄楠音の描く花魁のように毒があり,華がある。
海老蔵襲名の揚巻は玉三郎でひたむきに助六を恋い慕うようでしたが,この福助揚巻の色気は助六と並ぶと恋心とは違うものに変化してしまいます。しかし意休相手につく悪態の,滑舌のスバラシさは福助の真骨頂。福助の目指した女形の美とイキとの完成形を観た気がします。言うまでもなく助六に海老蔵。精悍な面差しと何か憑きものがおちたようにスッキリとした印象の美貌。地のやんちゃさが消え,自惚れも自己陶酔も消え,ひたむきに「芝居として暴れん坊な助六」。團十郎がこれを観ていたら・・・(以下略)。助六兄白玉売りに菊五郎,余裕の演者。母が東蔵,武家の寡婦らしい風格がたまらない。
こけらおとしのご馳走は,おかもちに菊之助,藍染め半纏に緋縮緬の下帯という,なんともはや色白の肌に映えて目の毒。くわんぺら門兵衛に吉右衛門,立派な俳優が演じてこその門兵衛。歌舞伎座さよなら興行では仁左衛門さんでしたっけ。
粋人に三津五郎,こちらは前回勘三郎。奇しくも鬼籍に入られた助六と粋人の股くぐり。
時事ネタとおめでたい話題(白玉さんのところに門兵衛さんとこからお嫁が来たってねえ),そして海老蔵の長男が初舞台を迎え,助六を演じるその日までそのまた先の日まで歌舞伎座をご愛顧下さいと語っての締め。
華やかで切ない,自分の生きている時代に観ることが出来た史上最高の助六のひとつになりました。

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