新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

2013年1月の紙魚

2013-01-31 01:42:09 | 紙魚記録
1.病気の日本近代史
2.コケの自然史
3.夢と眠りの博物誌
4.竹島史考
5.ハッカーの手口
6.大川周明 アジア独立の夢
7.古代・中世の芸能と売買春 遊行女婦から傾城へ
8.鷗外の父 森静男の生涯
9.すごいぞ折り紙
10.根付コレクションの研究 高円宮コレクションを中心に
11.心の整理学

長い冬休みをはさんだわりには読めませんでした。
4は知人の韓国人と竹島の話題ができなくて悔しかったので勉強のため読みました。
6は考えさせられることの多い内容。ドラマチックすぎる。
8が掘り出し物でした。平成7年、静男没後120年記念でしたっけ。
11は最近の職場環境のシチュエーションにあてはまりすぎて・・・

寿初春大歌舞伎 (於:新橋演舞場)2013/01/25 

2013-01-31 00:52:24 | 歌舞伎鑑賞雑記
團十郎休演につき幸四郎祭り。
夜の部は逆櫓と大星由良之助の大役を続けて演じた幸四郎,前回にも感じたとおり幸四郎の役作りの大きさと男の魅力が際だっていました。
ひらかな盛衰記 逆櫓:前段は,設定を確かめるためのくどい台詞が続いて,睡魔との戦い(そして負けた)。後段は派手な立ち回りの連続。幸四郎の着る蛸模様の肩から手に握った綱をつたって舞台から花道全てを使い一本の線でつながる造形美。空想の世界であり虚構の出来事である事件が,幸四郎の大きさで壮大な物語に昇華されておりました。女房に高麗蔵,女官でお筆に福助は地味に説明役。漁師に錦吾,説得力のある爺役。

仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の段:初めて歌舞伎を観たのが高校の観劇会,西宮市民会館にてこの演目でした。あれから幾星霜,両の手で足りないほど観た芝居です。
大星由良之助・團十郎の代役は幸四郎。一力茶屋で飲み惚けている由良之助は紫色のちりめんに朽ち葉色の裾ふきには綿がたっぷりと入っていて,腰まわりから落ちる布の質感がたまらない。練りに練られて完成された一力茶屋の段は完璧な型の上で俳優がのびのびと演じている円熟の舞台でした。お軽に芝雀,お軽兄の平右衛門には吉右衛門。どちらもきっちり,愁嘆場は品良し。由良之助にあまりに色気があるので,お軽の助太刀で斧九太夫を刺す場面がケーキ入刀に見えてしまうほどでした。

釣女
長者に橋之助,美女に七之助の叔父甥コンビ。太郎冠者に又五郎,醜娘に三津五郎。
まだこの舞踊には勘三郎の空気が濃く残っていて,みな舞台上の亡霊と踊っているようでした。やはり最後は涙で前が見えない・・・。

夢市男伊達競(ゆめのいちおとこだてくらべ)

2013-01-31 00:50:37 | 歌舞伎鑑賞雑記
黙阿弥作品と音羽屋さんの相性がよいことは重々承知でしたが,今回もみごと。
まずは怪異の主題を出してから人情もので地固め,そののち怪異の人情ものへ移行する筋立てで,踏み外さない手堅い笑いと冒険心でがっちりまとめあげられていました。
西行が猫と来豪が鼠:という副題のとおり,松緑の木曾義仲が来豪阿舎利の怨念と合体して頼朝が統べる鎌倉を悩ませます。その魔を打ち払うのは西行法師ゆかりの白銀の猫の置物。松緑は数多くの舞台をこなしているので,型が美しくお肌も美しく,台詞回しも安定しています。
二幕目では菊之助の珍しい力士姿,松緑とともに美しすぎる力士のそろい踏み。力士の兄,夢さんこと夢野市郎兵衛・菊五郎も加わって化け鼠と白銀の猫をめぐる怪異譚と実世界が交錯しはじめます。菊五郎の夢さんの堂々とした男伊達ぶり,女房おすまは時蔵で水もしたたる女房ぶり。江戸の町方のくらしが匂うようです。悪役にはいつもの團蔵。
五幕目でお待ちかね,時蔵の傾城薄雲と新造胡蝶・菊之助が登場。時蔵の妖艶なことと菊之助の新造の可憐なことは言うまでもありませんが,それにも増して萬次郎の三浦屋女房お牧のまとう空気感が遊郭らしくていつも心がときめきます。怪しの虚無僧・松緑が薄雲を見初めてからの,胡蝶をまじえての三つどもえの駆け引き。板の上の空気は必見。特殊効果や音効は全く使用せずにここまであやかしの世界を演じられる,これぞ黙阿弥,そして音羽屋。胡蝶実は猫の精となって三毛柄の着物と付け耳の装束で立ち回り。・・・菊之助三五才,日本一猫耳の似合う男。幕切れは全ての舞台予算を結集した化け鼠の特効で終劇。黙阿弥と音羽屋が長年かけて築き上げた演芸をじっくり堪能できる,いつもながら国立劇場らしいよいお芝居でした。

追記:別館の博物館で黙阿弥展。黙阿弥直筆の舞台設定用のポンチ絵に心をわしづかみにされてしまいました。巧いんだわ,これが。