新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

坂田藤十郎 扇千景―夫婦の履歴書 (2008年10月刊)

2009-02-23 23:56:44 | よみもの
 人間国宝坂田藤十郎と元国交省大臣扇千景夫妻。字面だけでも超重量級の二人。
双方の視点からの人生は非常に重く深く、読み応えたっぷりでした。
扇雀時代の藤十郎がその資質ゆえに先達から愛され、同じくらいに同輩から激しく憎まれていた事。そして松竹東宝の華やかな映画時代。
私が歌舞伎を見始めたのが15年ほど前なので、子供の頃にちらほら聞いていた上方歌舞伎界のうわさ話を総まとめで読めたのは収穫でした。
扇千景に至っては3時のあなた~以降しか知らず、須磨生まれでたいそう厳しい家庭に育った美女・・・そして宝塚から女優への転身。
もちろん梨園の嫁姑の確執あり、借金問題あり、それでも最後には自分の信じた道を真っ直ぐに進んでいく扇千景。
神戸の知識階級出身の底力を感じました。~ちょっと泣いた。
※昔聞いた都市伝説で、「京阪神三竦み」というものがあります。
曰く、神戸は大阪の迫力に負ける・大阪は京都の伝統に負ける・京都は神戸のハイカラに負ける;というような内容だったと思います。
あながち間違いではありませんな、扇千景伝説!

ポアレとフォルチュヌイ~20世紀モードを変えた男たち

2009-02-23 23:50:14 | Weblog
 10数年ぶりに会う友人と観に行ってきました。建物自体が美術品のような旧朝香宮邸に麗しいドレスをまとったマネキンが配置されていました。
テーマは「夜会」。小柄で華奢な愛妻をより愛らしくみせる為に作られたポアレのドレスはフレンチロリータ元祖の香り。
スレンダーで背の高い美女に似合いそうなフォルチュヌイのドレスはプリーツプリーズの元祖。
NYのブティックで売られたフォルチュヌイのドレスがオリジナルの丸い紙函に入っていました。側に添えられたお店のカードには「着こなし指導のポンチ絵」が鉛筆で描かれていました。・・・100年弱の時を越えて鮮やかに蘇るポンチ絵魂!NYの流行最先端の店でおそらく店員さんが描いたと思われるポンチ絵は一見の価値ありです。
(20080208目黒庭園美術館にて鑑賞)

13番目の物語(上・下) ダイアン・セッターフィールド著 2008年8月刊・NHK出版

2009-02-03 00:13:21 | よみもの
手にとって「物語を読んでいる」幸せを感じるサイズで、落ち着いた色目で装幀してある本でした。
謎に満ちたベストセラー作家の語る怪しく悲しい物語。語りの合間に現実に引き戻されるという構成はありがちなのですが、
過去の物語が現実と繋がり全てが一つの流れになっていく迫力には、あらためて本を読むことのステキさを感じさせられました。
読書の最中に目で入った活字情報が鮮やかな視覚情報に変換されることがあります。この本はまさにその優れた変換装置でした。
・・・だってだって双子の物語なんだもの・・・。

蝋梅;Chimonanthus praecox

2009-02-03 00:08:50 | 今様草木名彙
少し前に「どうかしてる」くらいにこの花の香りが好きでした。
冬枯れの中に紙細工のように透き通った黄色。同じ時期に咲く水仙を足下に従えて香る蝋梅。
らふばい、唐梅、南京梅、九英梅、奇友。
おセンチメンタリストでイタかった、少々若い頃を思い出して地団駄を踏みたくなる花でもあります。