新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

「大正期の家庭生活」 湯沢 雍彦著 クレス出版 (2009/01)

2009-01-25 19:34:34 | よみもの
たまたま同じ時期に読んだ本が戦前の暮らしを取り上げており,全く違う味わいのあるものでした。
地道な資料の読み解きと聞き書きの分析によって,大正期の生活の骨組みが浮き上がった来る様子は読者冥利に尽きるものです。
惜しむらくは本がA5左開き横書きという体裁であったこと。これはかなり読みにくかったです。
2008年12月読了
(写真は自宅にて愛用の火鉢・ノリタケ社製)

都市を創る~建築への挑戦

2009-01-25 19:25:58 | Weblog
2009年1月17日 於:埼玉県立近代美術館
土曜日の昼間に鑑賞。タイトルを見る限り地味な展覧会かと思っていたのですがなかなか盛況な催しでした。
企業ごとにブースを分けての展示のため、美術館というよりも企業コンペや展示会のようなイメージで、企業ごとに広報部が展示企画をしたのかしらと思うほど気合いの入ったものでした。
それにしても、都市というものは誰のものなのか。
耳あたりのいいコンセプトに基づいて新素材や新工法を駆使して建てたお洒落な建物。幻想で立てた空疎な枠の中にどういう魂が生まれるのか。
そんなことを考えさせられました。

チャイナ×3 チャイナドレスの変遷史

2009-01-10 22:23:23 | Weblog
2008年7月12日~10月7日 :於 神戸ファッションミュージアム

神戸のファッションムゼウムでチャイナドレス展をやっているというので,わくわくしながら見てきました。コレクターの情熱に乾杯,いや完敗。
それはすばらしいものでしたよ,チャイナドレス黎明期の長袍から,20年代の衿が高く気品のある,選ばれし民にのみ着装を許されているよな旗袍,
そして庶民化したかわいいチャイナ,これはチーパオという言葉の響きそのまま。。。ああ楽しかった。
かなり前に台湾へ旅したときに太極拳用の上衣を買おうと探していたら「それは唐装(トーザン)だよ」と教えてもらいました。現在のチャイナ服は唐装と呼ばれているのです。
で,常設の時代衣装も面白かったのですが「型紙あります」の文字が。ん?型紙??
元祖ナポレオン時代のシュミーズドレスとヴィクトリアンなアフタヌーンドレスの型紙を買ってしまいましたよ・・・各2千円。制作(復元)課程の詳細な解説と型紙が付いていました。

ああ玉杯に花受けて    佐藤紅緑著

2009-01-10 00:37:11 | よみもの
近所の図書館にて復刻版が「郷土の作品コーナー」に並んでいたので往年の少年小説の名作を読む良い機会だと手にとってみました。
これは確かに面白い。貧乏な学生と裕福な学生,乱暴者と洒落者。型通りの登場人物の筈が,人物の多面的な個性を描いているので乱暴者であっても人間の善の部分を持っていて憎めない。明るい洒落者が次第に不良少年になっていくが,昭和初期の不良は「映画館にたむろする,シナ料理を食べに行く」程度のことだというのに、堕ちる高さがとにかく高い。その予感でさえも最初の登場から感じられるほど。紅緑が表層ではなく変わらぬ本質を見て書いていたのだろうなと感じました。
後日私と友人の年齢を足して、まだ手の届かない憧れの大先輩に「ああ玉杯~」の話題を振ってみました。たちまち紅顔の美少年の面影がちらりと見え隠れ。まさしく現役世代の方であらせられました。

旧制浦和中学の跡地は現在埼玉県知事公舎となっています。写真にしてもあまり面白くなさげだったので、私的に「主人公の父が建てた家ってこんなだったんじゃないかな?」と思ったお宅の写真など。

戦前の少年犯罪   管賀 江留郎 (著) 築地書館 (2007/10/25)

2009-01-06 22:32:03 | よみもの
少年犯罪データベースということで最近よくみかける表題だったので,読んでみることにしました。
原典資料にあたって調べてある本を読むとき編者の労力と構成力に感謝しつつ読むことが多いのですが,まずは文体に違和感を覚えました。
軽い重いの問題ではなく語彙の少なさと,書き手が読者を誘導していく方向がありありと見えるセンスの無さ。この人は他人が愚かに見えて仕方ないのだろうなあ。
半分過ぎたところでかなり食傷したものの,日本軍人女学生論には多少共感するところもあり最後まで読み切りました。終章を読んで納得したのは,そもそも発祥がweb上でのデータベースであったこと,そして編者はおそらくかなり若い年代であろうこと。この本は過去にはありえないほどの膨大なデータを個人が手に入れることのできるようになった現在ならではの形態なのでしょうね。着眼点切り口ともに面白かっただけに惜しい勿体ないという気持ちになりました。

(2008.11下旬読了)
写真は小田原少年鑑別所:2003年撮影