新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

歌舞伎座御名残四月大歌舞伎

2010-04-22 21:06:15 | 歌舞伎鑑賞雑記
4月17日(土)第三部
 私が歌舞伎座に通い始めたのは東京の某所で仕事をしていた約12年前。外回りの仕事の合間に一幕見でささくれた心をなだめていたものです。昼間の一幕見は私のようなサラリーマンがひとときの夢を見に来ていましたっけ。
さて,ついに歌舞伎座ファイナルとなりました。ここ数ヶ月は3部制のあこぎ、いえいえバラエティに富んだラインナップ。
そのため幕間休憩時間も短くて,このたびの助六に至っては2時間ぶっとおしでの公演でした。
観る方も演じる方も大変なことです。

「実録先代萩」
 芝翫の政岡は母の情と宮仕えの役目との狭間で揺れる女心が,のちの悲劇を予感させる重厚さで演じられていました。孫の宜夫が若君千代松,天才子役というものはこういうものかと思わせる間合いの取り方の素晴らしさ。政岡の息子亀千代には孝太郎の息子,すでに8歳になった千之助が演じておりこちらは少し残念な出来。宜夫と比較するのは厳しいとは思いますが,板を踏むのであれば歩き方ひとつにも気を遣ってもらいたいかと。

「助六縁の江戸桜」
 とにかく俳優陣が豪華で華やかで,目も眩むような~という表現はまさにこの舞台のためにあるようでした。助六にはもちろん団十郎,兄の曽我五郎に菊五郎,揚巻に玉三郎,白玉に福助・・・挙げればきりがないのでこのあたりで。しかし,仁左ェ衛門までが髭の意休手下役のくわんぺら門兵衛で出てくるに至ってはもうもうおなかいっぱいです。風呂場で女郎を待っていたけれど誰も来やしない,ゆであがっちまったという門兵衛に対して,「あの嫌な顔」と返されるものの,こんな説得力のない台詞聞いたことがないわと。門さまは風呂上がりで帯も締めずにずっと左手で前袷を押さえる格好のまま。こんなに下っ端役(の仁さま)にはらはらどきどきさせられるとは,いつもの助六がまったく違って見えました。粋人に勘三郎,助六というハレの舞台で実に巧みに歌舞伎座への追悼を織り交ぜての総まとめ役。軽口を叩かれても叩かれても「助六」でありつづける団十郎の役者魂には感服しました。

 最後の歌舞伎座での観劇,いつでも観たいときに最高の歌舞伎が観られる幸せ,常打ちの小屋というものがこんなにも素晴らしいものかと教えてくれたのが歌舞伎座でした。ありがとうございました。

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