ポーランドからの報告

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ポーランド人とカトリック ②

2007年04月15日 | 政治・経済

今日4月15日は、カトリックの祝日。クラクフの街は、街南部の巡礼地ワギャヴニキ(Łagiewniki) に集まった世界中からの大勢のカトリック信者でごった返しました。サンクタリウム・ボジェゴ・ミウォセルジャ(Sanktuarium Bożego Miłosierdzia) にて行われたミサでは、クラクフ教区のスタニスワフ・ジーヴィシュ大司教が、命の大切さ、とりわけ妊娠中絶に反対する姿勢を訴えました。

折りしもポーランドでは、中絶を一切認めないように変更する憲法改正案が否決されたばかり。それに抗議する形で、マレック・ユレック下院議長が辞任・PiS党脱退を表明する騒動に発展しています。

そもそもポーランドでは、現在の時点で、いくつかの例外事項を除き、原則として妊娠中絶は認めていません。この例外事項というのは、
  1.妊娠継続により、母体に危険が及ぶ場合
  2.子供に発育異常が認められた場合
  3.犯罪行為により妊娠が成立した場合
のケースで、これらの場合に限っては、現行の法律でも中絶を認めています。

今回の憲法改正案は、中絶を「いくつかの例外を除き、原則認めない」という現行の案から、「いかなる条件であろうとも認めない」へと改正しようとしたものです。右派カトリック政権である与党「法と正義(PiS)」主導で進められていた今回の法改正案は、「命の大切さ」を説くカトリックの教えに基づき、いかなる命の根も摘んではならないとの見方から、妊娠中絶はいかなる場合も認めないように法律を改正しようとしたものです。しかも事前の準備段階では、法改正できるとの大方の見込みがあったようなのですが、それがいざ票決してみたら否決されたため、「法と正義(PiS)」党員の中にも反対票を投じたものが多数いる、つまりPiSが内部分裂しているとの見方もあります。

世論調査では、ポーランド国民、とりわけ女性の多くが、今回の法改正案に反対でした。ですので今回の国会での否決を受けて、今ポーランド人女性の多くが、まずはほっと胸をなでおろしているところカも知れません。しかも、現行の「いくつかの例外を除き、原則として妊娠中絶を認めない」状態も、実際には、望まない妊娠を希望しない女性が国外の病院で中絶手術を受ける例が後を絶ちません。また数年前の一時期、オランダの「妊娠中絶船」なるフェリー形の移動病院がバルト海に停泊し、中絶手術を希望する女性が集まるなど、社会問題化していました。それを法律を改正してさらに条件を厳しくしたら、ますますこの手の裏ビジネスがはびこるであろうことが懸念されています。

ちなみに今後国会で審議予定の議題として、「離婚を一切認めない」という法改正案もあるとかで、掛け金がはずれたかのごとく極右カトリックへと暴走していくポーランド政界の動きに、今後も注目していきたいと思います。

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