Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

日本初の個人向け映画ファンド 「忍-SHINOBI」

2005-01-30 | ◆ビジネス
本日の日経5面の右下の広告が気になった。『映画「忍-SHINOBI」へ投資しませんか?』とある。(その左側の「グルコサミン」、前頁の「虎目菩提樹 念珠」っていうのも別の意味で気になるが)

最近新聞にしばしば登場していた、映画制作費を借り入れではなく、証券化などの手法で集めようというやつだ。広告には、「日本で初めての個人向け公募映画ファンド」とある。ファンドのホームページから、その特徴を書き出してみると…


・製作・配給に掛かる費用15億円のうち、10億円をフ
 ァンドによって集める
・匿名組合への出資という形式で、一口10万円である
・収益は、興行とビデオグラムの事業収益 から分配
 される
・リスク限定型の2商品が用意されている。1つは元
 本60%確保型、もう1つは90%確保型。
・投資額によりいろいろな特典がある。(試写会招待
 や映画本編への名前のクレジットなどなど)

こうした特定の映画に対する出資の形態を取ると、貸付と違って製作会社そのものの信用力ではなく、映画そのものの収益力によって資金を集めることが可能となる。逆に、映画の企画そのものの収益性をアピールできなければ、資金を調達することが難しい。

とはいえ映画に当たり外れがあることは誰でも知っていることである。今回はリスク限定型の商品にしているところがポイントだが、それでもこの映画はヒットするのだと投資家に納得させなくてはならない。ファンドのメインページから、「映画の特徴」へ飛ぶと、その努力が見られる。例えばこんな項目が並ぶ。

・ヒット作の要素を満載
・魅力的なキャスティング
・巨大なセットと情緒ある風景
・世界初のVFX技術とワイヤーアクションの合成
・力強いストーリー
・世界で活躍するクリエイターが集結
・「忍者」というテーマでビジネスチャンスを拡大

一番最初の「ヒット作の要素を満載」というのが象徴するように、純然たる投資家を納得させようと思うと、ヒット作の要素を満載しているから収益性が高いファンドであるという理論になる。同じ理屈でいくと、同じような映画がたくさんできてしまう。今なら、侍映画ばっかりか。

資金調達の手段としての面白さがある一方、映画そのものの画一化と紙一重であるところが、映画ファンドの危うさであろう。もちろん、これは一般投資家から投資を募らなくても常に問題として存在するが。

むしろ、金銭的リターンに加えて「精神的リターン」を堂々と謳うアイドルファンドの方が、潔く見えてくる。第二弾もやってるみたいだし。

最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (大田原牛)
2005-01-30 21:42:21
同じ広告を見ました。

60%確保型で10万円投資した場合、135,785円のリターンがあるというシミュレーションでは、興行収入40億円となっています。



これはかなりハードルが高いと思われます。

ネット検索によると以下のとおりです。

宮崎駿か踊る~でこのシミュレーションなら絶対に買いと思いますけども。



http://www.narinari.com/Nd/2004093279.html



興行収入ランキング

1位 「千と千尋の神隠し」(304億円) 2001年

2位 「もののけ姫」(193億円) 1997年

3位 「踊る大捜査線 THE MOVIE 2」(173.5億円) 2003年

4位 「南極物語」(110億円) 1983年

5位 「踊る大捜査線 THE MOVIE」(101億円) 1998年

6位 「世界の中心で、愛をさけぶ」(83億円) 2004年

7位 「猫の恩返し / ギブリーズ episode2」(65億円) 2002年

8位 「ポケットモンスター 結晶塔の帝王」(48.5億円) 2000年

9位 「ホワイトアウト」(42億円) 2000年



(参考:配給収入上位作品)

「子猫物語」(54億円) 1986年

「天と地と」(50.5億円) 1990年

「敦煌」(45億円) 1988年

「ポケットモンスターミュウツーの逆襲」(41億円) 1998年

「ポケットモンスター 幻のポケモン・ルギア爆誕」(35億円) 1999年
返信する
Unknown (つりたけ)
2005-01-30 22:40:26
可能性低そうだねえ。テレビ番組とか邦画って、真剣に創っているのだろうか。盗むのはせめて時間だけにしてくれって感じだけどなー。







返信する
Unknown (e-Tetsu)
2005-01-31 22:31:27
なるほど。なかなか大変ですな。映画の路線、俳優の知名度、技術の先進性なんかを客観的に評価する指標を作り、過去の映画の指標化と興行収入をデータベース化してみれば、きっと新しい映画の興行収入予測ができるかもしれないですね。そうすると、一定の収入が確保される作品と、博打的な作品が判って、投資もしやすくなるかも。



今回の映画は、この前やってた金城武の「Lovers」なんかが路線的に近いような気がするけど(見てないでいってますが)、そっちの興行収入はどうだったのかな。



返信する
Unknown (hiro)
2005-02-16 12:34:10
映画ビジネスは非常にハイリスク/ハイリターンですが、これまでは協同組合形式に金を集めるくらいしか方法がなかったものが、ようやく広義のソフトウエアについて調達手段が広がってきたということでしょうか。

また、同様の新たな調達手段としてLLC/LLPがあり、これは更に進んで資本がないが能力のある個人へも、大きなリターンが期待できるスキームとして、期待できるのではないかと思います。(確か日本は今秋に法律施行)

返信する
Unknown (e-Tetsu)
2005-02-17 00:42:48
hiroさん、コメント有難うございます。

LLC/LLPはどんな特徴を持つスキームなんですかね?
返信する
Unknown (hiro)
2005-02-17 19:33:11
株式会社が出資者に出資額に応じたリターンをし、また組織として取締役会など意思決定/牽制機能を定義しているのに対して、LLC/LLPは出資者が有限責任なのは同じですが、取締役会など設置強制はなく、また契約により出資額と関係なくリターンを定義できるのが良いところではないかと思います。

適用例ですが、たとえば青色発光ダイオードの中村教授はサラリーマン時代に、会社組織にいたからこそ彼の発明によるリターンは出資者である株主に還元されましたが、もしLLC/LLPで当初から始めていれば、契約により金はなくても技術がある中村教授も利益をどうどうともらえるスキームも構築可能だったことになります。

まあ、中村教授の話は極端な例ですが、実際に想定されるスキームとしては数社で先端技術の共同開発をする場合に投資額と関係なくノウハウのある会社(例えばベンチャー)にも適正なリターンを保証することが可能になるのではないかと思います。

詳細、経済産業省ホームページで参照可能です。

http://www.meti.go.jp/policy/economic_oganization/pdf/honnbun.pdf
返信する

コメントを投稿