『ソフトウエア企業の競争戦略』を読んだ。400ページを超えるので疲れるが、著者の研究とコンサルティング・ワークに裏打ちされた議論には納得させられる部分も多い。一方、著者のこの領域での研究が長いためか、ソフトウェア企業の領域が閉じたものである印象を受けることなど、物足りない側面もある。
ポイントをいくつかピックアップして紹介すると。。。
◆国別のソフトウェア産業の比較
冒頭で欧州、日本、米国のソフトウェア業界を比較している。日本と欧米という見方はしたことがあるが、以下のように分類されるとなるほどといった感がある。SAPはやはりドイツでアメリカではないな、と納得してしまう。
・設計における美を追求する欧州
・高度だがイノベーションのない日本
・品質はまあまあだが業界標準を打ち立てて大もうけする米国
◆ソフトウェア企業の戦略軸
続いて、ソフトウェア企業の戦略を考える際の軸の定義と、それぞれの戦略軸における落とし穴。これを固定的な戦略軸として捉えるべきではないと思うが、スタートラインとしては有効である。また、各戦略軸の解説にでてくる、戦略遂行時の課題なども参考になる。
・製品企業かサービス企業か
・ターゲットは法人か個人か、マスかニッチか
・水平(業界横断)マーケットか垂直(特定業界)マーケットか
・市場動向に左右されない安定収入はあるか
・メインストリーム市場を狙うか
・目指すはマーケットリーダーか、フォロワーか、補完製品メーカーか
◆ソフトウェア企業の類型化とライフサイクル
まずソフトウェア企業を以下の3つに類型化する。
・製品企業(ライセンスを主たる収益源とする)
・ハイブリッド企業(ライセンスとサービスの双方を収益源とする)
・サービス企業(サービスを主たる収益源とする)
そして、多くの例から製品企業が、ハイブリッド企業、そしてサービス企業へと変化していくことを考察している。しかし、それでもどの路線でいくのかを選択する必要があるという。ハイブリッド企業であってもライセンスとサービスのどちらに比重を置くべきか明確にすべきであるという。なぜなら「それぞれで必要とされる戦略、組織能力、投資金額が大きく異なるからである。」
一方、サービス企業が製品企業になることは容易でないという。成長しようと思えば、サービスのパッケージ化も1つの手であると示唆する。
◆開発のベストプラクティス
ウォーターフォール・モデルとマイクロソフトなどの採用する同期安定化モデルの比較など、開発手法に関してもかなりの紙数が割かれているが、ここでは割愛。
◆スタートアップ企業の例
10社に及ぶスタートアップ企業の顛末を先の戦略軸と照らし合わせながら分析、解説している。
◆ソフトウェア・ビジネスの理想と現実
最後に、製品企業、ハイブリッド企業、サービス企業の特徴や課題について改めてまとめている。また、意外と著者の現実論はあまりに現実的で寂しいものである。
【製品モデル】成否がはっきりするビジネスであるが、成功した場合においても製品がコモディティ化する危険性が常につきまとう。
【ハイブリッド・モデル】製品ビジネスより安定的であるが、製品ビジネスとサービスビジネスのスキルを両方必要とするため、「とてつもなく高度な技術的、組織能力を必要とする」
【サービス・モデル】顧客ニーズに応えながらも、そこから得られた知見を「守秘義務に抵触するこ
となく、他のプロジェクトに活用する方法を習得する必要がある。」
理想論については。。。
「一般論としては、理想的なソフトウェア・ビジネスは水平市場を目指す...なぜなら水平市場は、垂直でニッチな市場よりもたいてい規模が大きく、規模の経済、成長、そして投資家にとっての大きな収穫を確保する機会がずっと大きいからである。」 しかしながら、「このような理想的なソフトウェア企業はどれだけ一般に存在するのか。そしてこのビジネス
モデルは、どれくらい長く維持できるものなのか。」
現実論となると。。。
「筆者は、法人顧客向けのハイブリッド・ソリューションこそが、ヒット製品や支配的なプラットフォームをもたないソフトウェア企業にとって、現実的ゴールであると考えている」
冒頭にも書いたが、本書の物足りなさは、ソフトウェア企業をあくまでソフトウェア企業の領域(つまり、製品、ハイブリッド、サービス)の中のみで議論しており、そこから全く新しいビジネスモデルへ向かう可能性は考慮されていないことである。また、下記の論点については議論が十分ではなく、これからのソフトウェア戦略という点では自ら補っていくことが必要であろう。
・サブスクリプション・モデルに関する議論
・オープンソースについての議論
・オフショアリングの影響についての議論
とはいえ、なかなかの力作である。
ポイントをいくつかピックアップして紹介すると。。。
◆国別のソフトウェア産業の比較
冒頭で欧州、日本、米国のソフトウェア業界を比較している。日本と欧米という見方はしたことがあるが、以下のように分類されるとなるほどといった感がある。SAPはやはりドイツでアメリカではないな、と納得してしまう。
・設計における美を追求する欧州
・高度だがイノベーションのない日本
・品質はまあまあだが業界標準を打ち立てて大もうけする米国
◆ソフトウェア企業の戦略軸
続いて、ソフトウェア企業の戦略を考える際の軸の定義と、それぞれの戦略軸における落とし穴。これを固定的な戦略軸として捉えるべきではないと思うが、スタートラインとしては有効である。また、各戦略軸の解説にでてくる、戦略遂行時の課題なども参考になる。
・製品企業かサービス企業か
・ターゲットは法人か個人か、マスかニッチか
・水平(業界横断)マーケットか垂直(特定業界)マーケットか
・市場動向に左右されない安定収入はあるか
・メインストリーム市場を狙うか
・目指すはマーケットリーダーか、フォロワーか、補完製品メーカーか
◆ソフトウェア企業の類型化とライフサイクル
まずソフトウェア企業を以下の3つに類型化する。
・製品企業(ライセンスを主たる収益源とする)
・ハイブリッド企業(ライセンスとサービスの双方を収益源とする)
・サービス企業(サービスを主たる収益源とする)
そして、多くの例から製品企業が、ハイブリッド企業、そしてサービス企業へと変化していくことを考察している。しかし、それでもどの路線でいくのかを選択する必要があるという。ハイブリッド企業であってもライセンスとサービスのどちらに比重を置くべきか明確にすべきであるという。なぜなら「それぞれで必要とされる戦略、組織能力、投資金額が大きく異なるからである。」
一方、サービス企業が製品企業になることは容易でないという。成長しようと思えば、サービスのパッケージ化も1つの手であると示唆する。
◆開発のベストプラクティス
ウォーターフォール・モデルとマイクロソフトなどの採用する同期安定化モデルの比較など、開発手法に関してもかなりの紙数が割かれているが、ここでは割愛。
◆スタートアップ企業の例
10社に及ぶスタートアップ企業の顛末を先の戦略軸と照らし合わせながら分析、解説している。
◆ソフトウェア・ビジネスの理想と現実
最後に、製品企業、ハイブリッド企業、サービス企業の特徴や課題について改めてまとめている。また、意外と著者の現実論はあまりに現実的で寂しいものである。
【製品モデル】成否がはっきりするビジネスであるが、成功した場合においても製品がコモディティ化する危険性が常につきまとう。
【ハイブリッド・モデル】製品ビジネスより安定的であるが、製品ビジネスとサービスビジネスのスキルを両方必要とするため、「とてつもなく高度な技術的、組織能力を必要とする」
【サービス・モデル】顧客ニーズに応えながらも、そこから得られた知見を「守秘義務に抵触するこ
となく、他のプロジェクトに活用する方法を習得する必要がある。」
理想論については。。。
「一般論としては、理想的なソフトウェア・ビジネスは水平市場を目指す...なぜなら水平市場は、垂直でニッチな市場よりもたいてい規模が大きく、規模の経済、成長、そして投資家にとっての大きな収穫を確保する機会がずっと大きいからである。」 しかしながら、「このような理想的なソフトウェア企業はどれだけ一般に存在するのか。そしてこのビジネス
モデルは、どれくらい長く維持できるものなのか。」
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冒頭にも書いたが、本書の物足りなさは、ソフトウェア企業をあくまでソフトウェア企業の領域(つまり、製品、ハイブリッド、サービス)の中のみで議論しており、そこから全く新しいビジネスモデルへ向かう可能性は考慮されていないことである。また、下記の論点については議論が十分ではなく、これからのソフトウェア戦略という点では自ら補っていくことが必要であろう。
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とはいえ、なかなかの力作である。
この度、「週刊!ブログランキング」を開設致しました。
貴サイト様を拝見させて頂きまして大変興味深いサイトだと感じました。
是非、当ランキングに登録して頂けませんでしょうか?
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初期の登録運営者様はライバルも少なく、ランキング上位サイトとして後々の訪問者数が期待できる事と思います。
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宜しくお願い致します。
この場合、ソフト企業が成長を持続するためには、各国のベストプラクティスモデルを持つ企業をクロスボーダーM&Aなどで買い、特に企業間の開発プロセスなどはインテグレートすることなく、ただひたすら自国のビジネスでの成功を追及することになるんですかね(あまりマクロ的に見ても意味がないかもしれませんが)?
開発のベストプラクティスや類型化とライフサイクルの部分はClayton M.Christensenの「イノベーションの解」でいうと相互依存アーキテクチャ(ウォーターフォール型)とモジュールアーキテクチャ(同期安定化)、顧客ニーズとソフト性能のギャップの大きさ(ライフサイクルのタイミング)によって相互依存型(サービス~ハイブリッド)かモジュール(ハイブリッド~ライセンス)のようにそれぞれ当てはめることができるのではないかと思ってみました。
おもしろそうな本ですね。
「筆者は、法人顧客向けのハイブリッド・ソリューションこそが、ヒット製品や支配的なプラットフォームをもたないソフトウェア企業にとって、現実的ゴールであると考えている」
この結論、言われなくても、日本のSIベンダーはそういう形態ですもの。
結論に至る膨大な分析のほうに、読む価値がありそうですね。
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