京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

2021年12月 京都童心の会 通信句会結果 【選評】前半

2022-01-17 07:52:02 | 俳句
2021年12月 京都童心の会 通信句会結果
【選評】前半
○岡畠さな子特選
1 銭湯の牛乳一本湯冷めする    野谷真治
○三村須美子特選
6 老斑もわたしの勲章初日の出   暉峻康瑞
 私ごとですが40代前半から顔や手の甲に老斑が現れ、医薬品、化粧、帽子や手袋、長袖等で日焼け止めを試みていました。年老いて年相応として化粧での隠し立てもしなくなりました。老斑を勲章ととらえるプラス思考に、希望、めでたい、初日の出がマッチして素晴らしいと思いました。
○蔭山辰子特選
49 色変えぬ松や妙心寺のコの字道  三村須美子
 京都は四季折々風情があり、いいですね。朝夕も。私は家にいる生活ですが、わかいこ路歩いた京の町を思い出します。句会の方々お御作品をいつも楽しく拝見いたしております。
○野谷真治特選
39 冬日ぽかぽか背伸びするお墓   金澤ひろあき
 父の月命日であることに気付き、墓参り。冬の寒さの中、日差しが暖かだった。
「背伸びするお墓」が印象的。父の姿を思った。
○白松いちろう特選 
39 冬日ぽかぽか背伸びする墓    金澤ひろあき
 いかにも長閑な小春日よりの一日。お墓までが伸び伸びと背伸びするような       な暖かさだった。平和で幸せな冬の1頁でした。
43 大地潤す中村哲氏の遺志半ば   金澤ひろあき
 中村哲氏の偉業はアフガンの大地に水を引き人々を幸せにすることでした。もっと      もっと実り多き土地が蘇る筈だったのに、残念で仕方ありません。地球の損失です。
○野原加代子特選
88 去年今年まだ生かされてる熱い舌  暉峻康瑞
 歳をとるとあとどれぐらい生きられるのかと思います。去年食べれたおせちを、また新しい年明けに食べれたらと思うような歳になってしまいました。生きてるっていいなあーと味わえる舌鼓を打てるって良いですね。
○青島巡紅選
特選  
6 老斑もわたしの勲章初日の出     暉峻康瑞
  老いを肯定し、自然と出てくるものも自分の現状の証だとし、明日を見据えて入る。僕もこういう気持ちで老いを受け入れたい。
並選
① 3 寄席やい噺家の似顔絵展     野谷真治
 「寄席」と「よせやい」の掛け合わせが、似顔絵展の人出の多さを表して面白い。
② 4 差歯入る牡蠣雑炊の約束     野谷真治
 牡蠣は前歯がしっかりしていないと噛み切れない。嫌々ながら、早く治すための約束をしたとのこと。僕は行かない理由を考えがちですが。
③ 8 去年今年まだ生かされてる熱い舌   暉峻康瑞
 人にもよるだろうが、歳をとると、生きているというより生かされているという気持ちが強くなる。気力も体力も衰えていく。そんな状況で、まだ雄弁に言える、或いは、まだこんな熱いものが食える、そんな気持ちになれたことが嬉しい、というのでしょう。
④ 10 田の神さあ拝むお婆のお正月    暉峻康瑞
 素朴で何処か懐かしい原風景です。
⑤ 14 黄檗の開梛打ちて秋惜しむ     中野硯池
 萬福寺、開梛(かいぱん)。斎堂(食堂)の回廊に吊るされている、時を知らせる魚板で木魚の原形。口には玉を咥えていてユーモラスな形をしている。叩かれる横腹の部分の埃が綺麗だ。異国情緒がある。それを叩いて秋が去ることに心を馳せている。お洒落なと言うか、ダンディな笑いのある作品。
⑥ 15 大屋根を超へて山茶花咲きにけり  中野硯池
 原種は2m〜6mぐらいですが、中には10mを越えるものもあるようです。大屋根を樹高が抜いて咲き誇っている。夏でなく冬にです。生命の力強さを感じますよね。
⑦ 32 寒の月食アリバイ作りうまくいく  金澤ひろあき
 これ以上ない言い訳ですね。ちょいと立ち飲みに寄っても、ちょいと古本屋を覗いても、ちょいと物陰でキスしても、最後は蛇足です。
⑧ 39 冬日ぽかぽか背伸びするお墓    金澤ひろあき
 雨の日とか雪の日に行くと石でもいじけているというか、なんだか小さく見える事があります。分子間の距離とは言え、縮まるのでしょう。それが小春日和の陽気の日ともなれば、分子間の距離も広がってなぜか大きく見えますよ。お経をあげてからこちらが背伸びしたくなる程に。
⑨ 42 干し大根乙な甘みは大人向き    金澤ひろあき
 癖のある、ほろ甘さというか苦さは、若い人には苦手となる味かも知れません。母の味と言うよりも祖母の味という感じです。人生も半ば超えた人の味ということですね。
⑩ 44 ぬける青カラカラカラと芙蓉の実  三村須美子
 冬の空の青さとドライフラワーのようになった芙蓉の実が空っ風に揺れる対比が面白いです。着膨れの作者or人物の姿が見えてきそうです。
⑪ 49 色変えぬ松や妙心寺のコの字道   三村須美子
 冬に松の緑を見るのは、いつも何処にでもいて下さる神仏の存在に感謝したくなる。妙心寺の中の塔頭を迷路のように繋ぐ道の角に見える松の形でどこにいるのか判る事もある。これは四季折々の美しさを見せるお庭とは違って、切なさの中に変わらぬ見守りがあることを教えてくれますね。
⑫ 57 毛糸編み母の背中や丸くなり    野原加代子
 背中が丸くなるのは年齢によるもので、自分もそうなっていると姿を重ねているところが良いですね。或いは、編み物に集中していると背中が丸くなっていくこともあります。母だけでなく、自分もそうなっていると苦笑しているところも伺えます。
⑬ 62 宇宙までとどくか青空風走り     蔭山辰子
 晴天の空、一陣の風が駆け抜ける。その風が空を貫抜け宇宙まで届けというスケールの大きさが良いですね。
⑭ 73 草臥れた心臓の弁置換新しい句へ挑戦 白松いちろう
 大きな手術をして色んな感情が渦巻いている中で、それらを見据えるもう一人の自分が居て、新しい句作に生かすぞ、生かしてみせるぞと鼻息荒くなっている。その生の輝きというか、新たな情熱というか、良いですね。死ぬまでこういう精神力を持っていたいですね。
⑮ 78 カフェオレが身体の細胞を呼び起こす 白松いちろう
 疲れた時、甘いものが欲しくなります。僕の場合は、微糖の缶コーヒーですが、運転に疲れた時飲むと回復した気分になります。或いは夜明け前ウォーキングしていて、飲むと昼間より身体が喜んでいるような感じがします。外気温の低いところから暖かい室内に入り、カフェオレを飲めば尚更でしょう。