京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

「あまのがわ」266号 読後感

2021-03-31 11:32:30 | 俳句
「あまのがわ」266号 読後感
                 金澤ひろあき
 桜は咲き出すとあっという間で、京都の町を埋めています。誘われて人出も多くなっているのですが、コロナ禍の中ですので、遠目に見ております。
 「あまのがわ」誌いつもありがとうございます。266号、まずは表紙絵の素朴さににっこりしました。美術館をなさっておられるだけあって、毎号表紙絵がすばらしいですね。
 今号の平嶋先生の、「新・むがいしゃ教室」は、考えさせられました。「ことば」が「視覚」に結びついてしまうこと、「視覚優位」の現状、改めて実感します。私もたぶん、その傾向が強いのだと思います。今、文明は、スマホ等で、ますます「視覚優位」を突き進んでいます。その傾向が偏重されると、人間の生きていくこと自体に、重い問題を起こすような気がします。
 皆様の句、いろいろな個性が見えて、その人となりや生活も伝わってきますね。そこが口語俳句の良いところかもしれません。
○くり返す手指の消毒 胸に潜む毒は消えない  池田洋子
「手指の消毒」はコロナ対策で、日常になってしまいました。しかし、その中で「胸に潜む毒」を考えた人が、他に居るでしょうか。「胸に潜む毒」って、何なのでしょう。深く考えさせられる句です。
○雪を払う ピエロのパンジー笑ってる     裏文子
 こんな時代だからこそ、こんな明るさがほしい。この句を読んで、すぐにこう思いましたよ。「ピエロのパンジー」って、それこそ絵になりそうですね。このパンジーは、どんな動き、ひょうげをやってくれるのかな。
○雪の夜コトコト唄うクリームシチュウ     岡田桂子
 「雪の夜」だからこそ、シチュウを煮込む音に心が寄せられます。シチュウが「唄う」という表現が生きていますね。これを作っているご家庭の様子も、思い浮かびます。
○自家栽培 捥ぎたてぶどうに頭をさげ     井出サダ子
 本当に土の恵みに「ありがとう」ですね。
 
 また毎号、吉岡禅寺洞先生の句と文の紹介をされているのは、本当に貴重です。今回は、多行書き作品ですね。そういえば、今月の「現代俳句」に、二行書き俳句の論があり、禅寺洞先生のことも触れられていました。興味深く読ませていただきました。
ありがとうございました。
※「あまのがわ」誌は湯布院で、裏文子様が出されている口語俳句誌です。

世界一の木橋  国民文化祭島田市レクレーション記

2021-03-31 07:52:07 | 俳句
世界一の木橋  国民文化祭島田市レクレーション記
           金澤 ひろあき
 きのうの雨がうそのようにサラッと晴れた。島田というところは、情は熱いが、サラッと晴れた印象ばかりがある。駅を降りると、休みと休みの谷間(2009年11月2日)のせいか、人も車も少ない。万事ゆっくり動いている。
 三布袋と書いて「さんぽてい」と読む。駅の近くの本日の宿の名前だが、これまた島田の秋の雰囲気に似合う名だ。
 ここで俳句結社『主流』の人で、今回の俳句大会の運営をされている植田次男さんと羽田知行さんに会う。羽田知行さんには、予定を連絡していただいたりで、本当にお世話になった。いっしょに昼食をということで、駅前の蕎麦屋に入る。旅の先々で蕎麦屋に入るのは、先祖が東国出でその血のなせるわざかもしれない。鈴木和枝さんや、山田智津子さんらと再会する。
 島田駅国民文化祭の案内の人達に会い、地図やシャトルバスの時刻表をいただく。20分ごとに駅の南口よりバスは出ている。満員である。
 まずは大井川にかかる蓬莱橋へ。世界一長い木の橋でギネスブックにものっているとか。897メートルほど。橋のたもとに、『主流』を創った田中波月の句碑がある。句碑のまわりに、みかげ石の侘びた石がたくさんある。たくさんある石は、田中波月を慕う人達の象徴だと、これを作った田旗光さんが言う。田旗光さんは句碑のところで案内をしている。楊の木があり、さるのこしかけが生えている。植えた当初にくらべ、幹の太さが二倍になったそうな。
  ひょうきんなきのこが句碑のそばにある  ひろあき 
 昔、口語俳句協会の大会が島田であった時も、この橋を渡った。京都から来たAさんがこわがって、それを植田さんと宮津の宮城益雄さんが支えてわたったそうな。口語俳句協会大会で、作家の小川国夫氏の講演も聴いた。宮城益雄さんも小川国夫氏も今は鬼籍に入られた。秋風とともに思い出す。
  秋風とともに鬼籍の人しのぶ         ひろあき
 橋を渡ると確かに高い。秋の日射しの大井川は、銀を撒いたようだ。
  秋深む天より大河銀流す        ひろあき
 その後再びバスに乗り、川越遺跡へ。江戸時代、大井川は幕府の政策で橋をかけられず、人足が旅人を渡した。その遺跡である。人足は十三歳ぐらいの子供から採用していったそうな。みよりのない子、一家の生計を支えなければならない子を優先的に採用していったという。厳しい仕事ではあるが収入は良く、そのあたりあたたかさがある。弱者がまっ先に職や保障が奪われることなどあってはならない。ここで、田中陽さんと田中潤さんに会えた。陽さんはさっそく握手を求めてくる。
  握手しようと渡ってきたよ虹の橋       ひろあき
ここにもやはり田中波月の句碑があり、陽さんはそちらへ行ったようだ。

お便りありがとうございます。2021年3月 ○暉峻康瑞様より

2021-03-30 11:24:20 | 俳句
お便りありがとうございます。2021年3月
○暉峻康瑞様より
 〝童心〟心より御礼申し候。
 経典の中に〝汝自当知〟とあり、人間は自分がいちばんわからぬ。他人の欠点はよく分かる。よって煩悩・迷うのである。わからん自己を、佛にきいてゆけと云う事也。「わからんもんがわからんことをわからんように話すからますますわからんようになるのだ、わからんもんとは自己也。佛道とは自分を学ぶことなり」
句 人間に鍵かけさくらに逢いにゆく
人間は国盗り鶴は落穂を拾いをり
歴史を煮込むと戦争だけが黒光る
さくら散る人間こうして逝くんだね
別姓を思考している女雛もいる

2021年3月 京都童心の会通信句会 特選評 その5

2021-03-30 11:03:55 | 俳句
2021年3月 京都童心の会通信句会 特選評 その5
○坪谷智恵子特選
7 この石は山のおへそよ山笑う  金澤ひろあき
 山笑うで春を感じさせられて、山のおへそでユニークさを感じ、ほっこり楽しくよませて頂きました。
○宮崎清枝特選
43 名残雪老いても解る同級生   青島巡紅
 久々振りに集まる同級会、誰もが友人の顔が分かるだろうかと案じつつ、でもお逢ひ出来たら話々止まらない様子。お上手に俳句になされ感心致しました。
○野原加代子特選
61 小春日や故郷の匂ひの宅急便  宮崎清枝
 初冬の頃の暖かい穏やかな天気の日に故郷の母から送り物があったのを想い出しました。亡き母ですが、季節毎に畑でとれた野菜や柿等を四季折々を感じる事が出来ていました。歳を取れば取るほど故郷や父母の顔が浮かびます。穏やかなほっこりする句だと思いました。
○金澤ひろあき特選
43 名残雪老いても解る同級生   青島巡紅
 私が大学生の頃でしたか、イルカさんの「なごり雪」という歌が流行しました。一つの時代が終わり、別れて行く恋人の心境をせつせつと歌い上げています。この句の「名残雪」は、その曲を指すのかどうかはわかりませんが、生きてきた時代を共有する者同士が、言わなくても解り合えるものがある、大切な物があるのだということが伝わってきます。心に響くというのは、そういうことかもしれません。


真珠庵

2021-03-30 08:08:17 | 俳句
真珠庵
              金澤 ひろあき
 2009年の11月のある日。朝方は秋の良い日和です。昼すぎからどんよりと曇り、そして大雨となります。秋の大雨の中、大徳寺の真珠庵へでかけます。酔狂ですね。真珠という名なので、暗がりの中で、ひそと光るものがあるかもしれません。
 京都といっても、アスファルトやビルのある所は灰色できたない。土と緑と石がある所で、はじめて美しいと思えます。
 大徳寺の石だたみ、そしてそれをとりまく苔。雨に濡れて生き生きとしています。かたや、来ている人間は、悪天候のせいかしょぼしょぼしています。本坊の裏手に、真珠庵。一休禅師を追慕した堺の商人が作ったお寺だそうです。ふすま絵は「蛇足」という人が描いている四季図。「蛇足」なんていう名前がおもしろい。人生ナナメにみているな、と思ったら、何と代々襲名するらしい。
 わび茶に縁の深いお寺で、村田珠光が作った七五三の庭というのがあります。石が七、五、三で、約3メートルおきに並べてあります。何か言いたいこと、表現したいことがあったのでしょうね。凡夫の目には、「そんなもんかね」というところ。
 金森宗和が作った茶室があるのですが、雨天のため、中はまっ暗。狭い、暗い二畳の茶室で、主客一亭の茶事をやったら、さぞや緊張するでしょう。利休の孫、千宗旦が「姫宗和は根性悪」といったそうですが、それが本当なら、緊張はもっと高まりますね。
 長谷川等伯の描くふすま絵の「四皓図」。それからエビが大好きな禅僧と、ブタの頭が大好きな禅僧の図などがあって、これがおもしろい。グルメな坊さんですね。ついでに一休さん、森侍女という美女が大好きで、無常とか言いながら、皆生きることが大好きだったようです。
 なお、一休さんの木像の上に、仏教最高の教えが書いてあります。
「諸悪莫作 諸善奉行」
「悪いことはするな 良いことをやれ。」という意味だそうですが、それが守れたら、とっても良い人生になりそうです。
  ぼちぼちと熟年落ち葉と話する    ひろあき