京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

2024年8月 京都童心の会 通信句会作品

2024-08-29 07:52:52 | 俳句
2024年8月 京都童心の会 通信句会作品

この中より、十五句を選んでください。さらに特選一句をお願いします。
特選句の選評をいただけるとありがたいです。

1 まっすぐまがっている國の新札
2 神奈川民蒲団の中の都知事選
3 蕎麦湯待つ梅雨明け
4 無口の人陽炎したたる
5 陽射しの切取線猫昼寝
6 トタン屋根熱さに負けぬ猫の恋
7 売れ残り 3人句会へ茄子届く
8 整理した鶏頭の花墓に挿す
9 熱さの急流をのりきり笑うぞ
10 熱さの急流 まっ赤な鶏頭を活け
11 踏み外す事なく去りしはたた神
12 米寿旅吊橋大揺れ運、不運
13 独り居の日高き夕餉明日へ生く
14 確かなる西瓜の旨さ自作自賞
15 顔作るしわ知る暇日里の盆
16 庫は炎暑コップ酒飲む唇甘し
17 暑中見舞 癖ある友の文字弱し
18 人の世の常をまっすぐ鶏頭立つ
19 初茄子や紫紺つやつや人も尚
20 背を曲げてこぼれし種を白鶏頭
21 着駅は余儀なき未到 鶏頭は白
22 支え合う人を真似たく鶏頭活け
23 デイサービスヘルパー利用者みな仲間
24 この歳で知り合えた人皆やさし
25 風邪を引き来るべき時か?ただの気管支炎
26 あらいやだ娘一家も同じ風邪
27 唐がらしパラパラふって夏うどん
28 とうもろこしプツプツ甘く楽しみて
29 よくやった石丸君の新時代
30 若い人生めよ増やせよ今私の願い
31 賢さも美しさもやはり安定も
32 情熱も時にはヒステリックに聞こえたり
33 ただ待つだけ9月10月涼しい日
34 「知りあいは奥様のことを母さんと呼ぶ うらやむ私」
35 「ジビエ食べしかとたくさん話をす うれしき契り悲しい別れ」
36 「星座大好き青島さん 星になったね」
37 「いいですね!その一言が励みでした」
38 「他人の事をけなしたり阿呆アホ」と言う「おまえ一番カスやで」
39 「気候変動有り難い雨 一度にたくさん降らないで」
40 温度計危険表示の四十度 そのタイミングで「アイス」を出して
41 ぬいぐるみ捨てると思い出消えそうな
42 夕暮れの百合はゆらゆらする未来
43 僕を知る人なくなって行く代筆のペン字
44 病院の椅子の固さ 時間が止まる
45 若ければ熱い議論の酒だった
46 傘越しにこの世の声をそっと聴く
47 大きなハテナ今日もキラキラ光る目が
48 空家とともに消えた灯萩の花
49 猛暑の蓮 たった一人で逝った友
50 思わず居眠り単線列車の振動音
51 木の階段まあ休みなされ夏の旅
52 熱中症アラートぼんやりついているテレビ
53 スケッチのモデルの茄子の光る肌
54 百年の恋の紅鶏頭花
55 蝉鳴きて孫と歩きて耳澄まし
56 夏帽子今年も被り母想い
57 食卓に食べて嬉しや初茄子を
58 夏菊を供え仏壇に命日や
59 大暑かな水浴びる子ら笑顔出し
60 アイスティ喫茶店にて一人飲み
61 風涼し日陰探して木の下や
62 新入りの赤子猫にもご挨拶
63 カラスさえ外出控える暑さかな
64 冷房の止まって暑き夜明け前
65 こだわりの一つづつ減る介護かな
66 ブロック塀の朝顔焦げて枯葉となりにけり
67 握りしめ体いっぱい泣く赤子
68 泣く赤子の声の分かりて応う母
69 醒ヶ井に涼を求めてます料理
70 理由はとやかく殺し合うなよ原爆忌
71 今か今かと雨乞いをするトマトかな
72 鳥より早朝いちじくのつまみ食い
73 音響く何処かでやってる遠花火


デカダンスの名を持つ句集

2024-08-28 13:08:45 | 俳句
デカダンスの名を持つ句集
           金澤ひろあき
 デカダンスという言葉に現代の私達はあまり価値を見いだしていないように思われる。「退廃」「腐敗」というニュアンスを含んでいる。
 しかし、デカダンスは、世の中をよく映し出す鏡でもある。デカダンスは、社会の秩序や常識を笑うものでもあるからだ。秩序や常識は私達に強制する力が働くが、それらは支配する側に都合がよいものが多い。支配する側に都合がよいものに抵抗する所まで行かないにしても、それから逸脱するデカダンスは、秩序や常識に囚われている私達の姿を映し出す。
 川口外狼氏の句集「ダブルデカダンス」は、そういう意味で「囚われている自分」を見ているかのようであった。
 川口氏の句の作り方は、句集の第一章の小題にもあるように「写生」から入っているようだ。川口氏は、デカダンスを昔の無頼派のように「演じている」のではなくて「素直に写している」のだ。
 いずれは死故にここぞと野遊びす
 灼熱やひねもすハードコアパンク
 西日の病廊影絵めく往来
 湯ざめして椅子に凭れしニューハーフ
 この句集の序文を書かれた夏石番矢氏が、句の特色として「純情」「もののあわれ」と論じられているが、まさしくその通りである。
 また一見好き勝手に句作しているように見えるが、俳句史を踏まえて、自分のものにしている。これはパロディー(本歌取り)が散見していることからも言えるのだ。本歌取りするためには、本歌の知識と理解がないと無理だからだ。理解しつつ別の世界に置き換えて行く。例えば、
 おそるべき君らの素顔夏終わる
 警官がつまらなそうに立っていた
 鬼を以て自力としたり歩み去る
 店を出て俺達帰る処なし
 去年今年貫く棒の如き形
 西東三鬼、渡辺白泉、高浜虚子、山口誓子等の大家の句を本歌にしながら、大胆に俗の世界を詠み込んでいる。かつて和歌の雅を俳諧が俗の美に転じた手法を想起させる。
この句集の中には、沢山の女性が描かれる。
 愛嬌はあれど愛は微塵もない
 王子待つ場末のダブルデカダンス
 看護婦の目元涼しく汚物処理
 職員室シンナー少女半べそ
 イケメンにやっつけられてよっれよれ
 このように描かれる女性達は、個性を発揮し自由を賛美している訳でもない。あるいは女性への憧れでもない。彼女らの凋落ぶり、軽さ、疲れのようなものが描かれる。醒めた目を持つ男が描く、女性達の厳しい現実。しかし、何と醒めた目であろうか。これは、
 女生き抜く男社会の眼下
という認識が根底にあるのだろう。
 句の中の女性は決して自由を謳歌などしていない。
 表面的な、そして短かった自由の謳歌(例えばバブル期)とその後の凋落。回復の見込みのなさ。これは女性だけのことではなく、日本社会全体のことではないか。
 大先生医療ミス隠蔽術
 大企業タカにへつらいハトに圧
 マスコミはさぞかし立派なんだろう
 いかにしてうまく生きるかそればっか
 牧師と金持ちで方舟いっぱい
 苛めせし過去を自賛のミュージシャン
 暴力に先を越さるる選挙かな
 希望など押し附けられて死ねもせず
 正直もうええわって呑むしかない
 疲弊を修正解決することもなく、淀んだままの世界。その中で器用に生きて行くことへの違和感を歌う。本当に素直だ。
 五十年目の春、出所した気分
 黙殺したきゃどうぞ慣れっこなので
 これは句集を出し、思いを吐き出せた後の正直な感想なのだろう。


川柳の日

2024-08-26 14:43:58 | 俳句
川柳の日
              金澤ひろあき
 色々な○○の日がありますね。2月22日は「猫の日」とか。
 「川柳の日」があることを初めて知りました。8月25日が「川柳の日」だそうです。宝暦年間、初代柄井川柳が初めて川柳の入選集を出したのが8月25日で、それを記念して決めたそれです。その時集まった句が二百ぐらい。川柳も小さくはじまって、大きく広がって行ったのですね。
 記念碑が、初代川柳がいた蔵前にあるそうです。
 赤とんぼ川柳の日の空遊ぼ ひろあき


2024年7月 京都童心の会 通信句会結果

2024-08-25 08:02:27 | 俳句
2024年7月 京都童心の会 通信句会結果
【選評】
○金澤ひろあき選
特選 天 58 朝起きて心臓に触れるありがとう 佐久間照三
 自分の命の危うさ、有限性に気づいた時、当たり前と思い深く意識しないことが、どんなに大切なのかと実感します。たとえば、心臓が休まずに動いてくれることなども。
地 68 七月は産み月ゆったりと待つ 三村須美子
 新しい生命がやって来る。その喜びをかみしめているひととき。暑い中ですが、無事お産がすみますように。
人 7 くちなしの花 医師の無用の聴診器 塩見すず子
 大切な人を亡くされたのでしょうか。亡くなったその時の情景を伝えているように思えます。私も今夏、大切な友人を亡くしました。亡くなる際には会えませんでした。
 心に響きます。
 今月は共感する句が多くて、好きな句も落としてしまいました。特に好きな句を見て参ります。
1 あふれ出す星あかりの人魚 野谷真治
 ファンタジーの世界の中に入ったようです。日常に疲れたり、違和感を抱いた時、ファンタジーが人を甦らせてくれることがあります。この句もそんな世界を持っています。
18 出目金や賞められて又潜り行く 松村芳子
 猫、犬、金魚など、身近に飼っているものは、人の言葉がわかるのかなと思う時があります。この金魚、得意顔なのでしょうか。
62 来夏も見たし永らえ蛍火や 野原加代子
 季節のもの、たとえば初夏だったら蛍、初秋だったら送り火など、見る度にここまで永らえたことを感謝したり、次の年もまたと願ったり。私も同じことをして生きています。
81 子がいう「ばあばの亡くなった日逆さにすれば母さんのバースデーだよ」 遠藤修司
 子供の素直な言葉にハッとさせられることがあります。それで教えられたり、救われたりです。
36 好きな上衣カーテンの柄にどこか似て 蔭山辰子
 「カーテンの柄」も大好きな好みで選ばれているのでしょう。そして上衣も同じ趣味で。二つのものの関連性に気づいた所が面白いです。
○野谷真治特選
10 糸の雨降る三途の川のど真ん中 塩見すず子
 糸のような雨の降る、それは、何処かで、三途の川とつながっているのだろうか。
 哀しい雨の一日の風景なのだろう。
○松村芳子特選
51 梅雨寒や何処にあるのか我が心 佐久間照三
 控え目しっとり、上品さを感じました。
○塩見すず子特選
27 海の家すだれの下は小さき足 松村芳子
 写真で見ているような情景描写。すだれの下からかわいい足が見えている海の家の風景が目の前にあります。
92 アメンボ、ゲンゴロウ、となりにプラごみ 遠藤修司
 気になった一句です。現代の風景ですね。批判的な句、こういう句をつくりたいものです。
○三村須美子特選
特選句 39 いつも居る一人が居らず青葉道 金澤ひろあき
 いつもの句会の仲間の突然の訃報の知らせ、残念でなりません。
思慮深く、文筆家である佐久間照三さんが急死されました。句会後、八丈が池や長岡天満宮で吟行を一緒に楽しんでいました。
いつも居る一人がおらず青葉道   
辛いです。
朝起きて心臓に触れるありがとう   
佐久間さんの句です。涙します。
 ご冥福をお祈りします。 
○野原加代子特選
83 相合傘初恋の香り雨も良きかな 遠藤修司 
 ふと微笑みが出る俳句だと思いました。淡い初恋の想い出に相合傘って情景が目に浮かびます。
〇蔭山辰子特選
83 相合い傘初恋の香り雨も良きかな 蔭山辰子
 豪雨、地震、高温、戦争。日本も世界も辛いニュースばかりです。遠い遠い昔になりますが、「初恋の香り・・・」いいですね。ほっとしました。
74 夏座敷後期高齢者の同窓会  三村須美子
 私も入れて下さい。
87 梅雨はイヤ!カッパの出番!!水が好き どしゃぶりオッケーへのカッパ? 
遠藤修司
 激しすぎる夏。カッパに願いたい適当な雨。適当な夏を。
〇遠藤修司特選
70 ささげ豆母の面影細く長く  三村須美子
 身にしみます。良い句ですね。母が亡くなって38年。私が何を言っても、ウンウンと聞いてくれた。
母ともっともっと話をしたかった。
○岡畠真理子特選
91 紫陽花を池に浮かべるモネもびっくり  遠藤修司
「モネもびっくり」というフレーズがとても斬新で、私もびっくりしました。

お知らせ
8月句会 お盆等で変更あり すみません
日時 8月24日(土)午後2時
場所 阪急長岡天神駅東口 喫茶 アーバンにて
投句 毎月第2週まで 10句前後ですが、少なくても可です。
 84円切手3枚同封下さい。
選評  来月第1週までに頂けるとありがたいです。
京都童心の会  年会費 3000円
月句会参加の方は句会で頂いておりますので、不要です。