京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

教科書によく出るシリーズ 「児のそら寝」

2022-10-31 07:49:57 | 俳句
教科書によく出るシリーズ 「児のそら寝」
【本文】
 ①今は昔、比(ひ)叡(え)の山 に  児 あり けり。
【語句説明】
①・今は昔・・今となってはもう昔話だが、
※説話」の冒頭で使われる表現
説話=仏教の利益や面白い話を集めたもの。
代表作
平安時代の「今昔物語集」
鎌倉時代の「宇治拾遺物語」
・児・・よみ「ちご」 意味・・僧侶見習いの少年。
寺の中では大切にされた。
(ちなみに昔のお寺には女性いない。)
・あり けり
「あり」ラ行変格活用動詞
「あり」連用形 意味・・ある いる
   「けり」過去の助動詞「けり」 意味・・た
【本文】
②僧たち、宵(よひ) の つれづれ に、
【語句説明】
②宵・・夕方 
・つれづれ・・暇な時 所在ない時
【本文】
「③いざ、かいもちひ  せ む。」と 言ひ ける を、
【語句説明】
③・いざ・・意味 さあ
・かいもちい・・意味 ぼたもち 
 ※昔は甘い物は超高級品。めったに食べられない!
・せ む・・「せ」サ行変格活用動詞
「す」未然形 意味 する=作る
「む」意志助動詞「む」 意味 しよう
・言ひ ける・・「ける」
過去の助動詞「けり」連体形 意味 言った
【本文】
④この 児、心寄せ に 聞き けり。
【語句説明】
④・心寄せ・・期待
【本文】
⑤さりとて、し出(い)ださ む を  待ち て 寝 ざら む も
 わろかり な む と 思ひ て、
【語句説明】
⑤・さりとて・・そうだからといって
・し出ださ む
四段動詞「し出だす」 意味 できあがる
 「む」婉曲助動詞
 意味 ような
・ざら・・打消助動詞「ず」連用形  意味 ない
・わろかり な む
 「わろかり」
ク活用形容詞「わろし」連用形 意味「よくない」
※連用形の語の下の「な む」 意味 きっと~だろう
【本文】
⑥片(かた)方(かた) に 寄りて、寝 たる よし に て、出で来る を 待ち ける に、
【語句説明】
⑥・片方・・よみ「かたかた」 意味 部屋の片隅
・たる・・存続助動詞「たり」連体形 意味 ている
・よし(名詞) 意味 ふり
・出で来る カ行変格活用「いでく」連体形
      意味 (ぼたもちが)出て来る
【本文】
⑦すでに し出だし たる さま に て、ひしめき合ひ たり。
【語句説明】
⑦・さま・・ありさま
・たる たり 意味 存続 ている
【本文】
⑧この児、さだめて おどろかさ  むず らむ と、待ちゐ たる に、
【語句説明】
⑧・さだめて・・きっと
・おどろかさ
   四段動詞「おどろかす」未然形 意味 起こす
・むず・・推量助動詞    意味 だろう
・らむ・・現在推量助動詞  意味 だろう
【本文】
⑨僧 の、
【語句説明】
⑨・僧 の・・「の」は主格 意味 が 
【本文】
「⑩もの申し さぶらは む。
【語句説明】
⑩・もの申し
四段動詞「もの申す」連用形    意味 申し上げる
・さぶらは
四段動詞「さぶらふ」未然形  意味 ます
・む・・意志助動詞 意味 しよう
意味 申し上げましょう。もしもし。
【本文】
⑪おどろか せ たまへ。」と 言ふ を、
【語句説明】
⑪・おどろか
 四段動詞「おどろく」未然形 意味 目を覚ます
・せ たまへ 
「せ」・・尊敬助動詞「す」連用形
「たまへ」
四段補助動詞「たまふ」命令形
二語とも尊敬語 二重敬語  意味 なさってください
【本文】
⑫うれし とは 思へ ども、
【語句説明】
⑫ども・・けれども
【本文】
⑬ただ 一度 に いらへ む も、待ち ける か と もぞ 思ふ とて、
【語句説明】
⑬・いらへ
下二段動詞「いらふ」未然形 意味 返事する
・む・・婉曲助動詞 意味 ような
・ける・・過去助動詞 意味 た
・もぞ・・係助詞 意味 ~したら困る
※係り結びの法則
 文中に「係り助詞」→(結び)文末活用語が変化 
     ぞ
    なむ     連体形の変化
     や
     か

     こそ    已然形
    意味 強調 疑問など
・とて・・・と言って
【本文】
⑭いま 一(ひと)声(こゑ) 呼ば れ て いらへ む と、念じ て 寝 たる ほど に、
【語句説明】
⑭・いらへ む 
   いらへ・・返事する
   む・・意志助動詞  意味 しよう
・念じ・・サ行変格活用動詞「念ず」 意味 我慢する
・たる・・存続助動詞  意味 ている
【本文】
「⑮や、な 起こし たてまつり そ。
【語句説明】
⑮・や・・呼びかけ 意味 これこれ
・な~そ 意味 禁止  するな
・たてまつり 
四段補助動詞「たてまつる」連用形    意味 申し上げる
【本文】
⑯をさなき 人 は、寝入り たまひ に けり。」と 言ふ  声 の し けれ ば、
【語句説明】
⑯・たまひ 
四段補助動詞「たまふ」連用形 
 意味 尊敬語 いらっしゃる なさる
・に・・完了助動詞「ぬ」連用形     意味 してしまう
・けり・・詠嘆助動詞 
意味 なあ
・声 の ・・「の」 主格  意味 が は
【本文】
⑰あな、わびし と 思ひ て、いま 一度 起こせ かし と、思ひ寝 に 聞け ば、
【語句説明】
⑰・あな・・ああ 
・わびし シク活用形容詞「わびし」 意味 つらい
・いま 一度 意味 もう一度
・かし・・念を押す 意味 よ な
・聞け ば 
四段動詞「聞く」已然形
※已然形―ば・・「確定条件」という
意味 ので と
【本文】
⑱ひしひし と、ただ 食ひ に 食ふ 音 の し けれ ば、
【語句説明】
⑱・ただ~に~  意味 ひたすら~する
・し・・サ行変格活用動詞「す」連用形  意味 する
・けれ・・過去助動詞「けり」 意味 た
・ば・・確定条件 意味 ので
【本文】
⑲すべなく て、無(む)期(ご) の のち に、 「えい。」と いらへ たり けれ ば、
⑳僧たち 笑ふ こと 限りなし。
【語句説明】
⑲・すべなく  ク活用形容詞「すべなし」連用形
    意味 どうしようもない
・無期 よみかた「むご」 
意味 長い時
・えい 意味 はい
・たり・・完了助動詞 意味 てしまう
・けれ・・過去助動詞  意味 た
・ば・・確定条件    意味 ので
【訳】
①今となってはもう昔話だが、比叡山に稚児(ちご)がいた。
②僧達は、夕方の退屈な時に、③「さあ、ぼたもちをしよう=作ろう」と言ったのを、
④この稚児は、期待して聞いた。⑤そうだからと言って、作り上げるのを待って、寝ないのもきっとよくないだろうと思って、⑥部屋の片隅に寄って、寝ているふりをして、ぼたもちが出て来るのを待っていた時に、⑦すでに作り上げているありさまで、ひしめき合っている。
⑧この稚児は、きっと起こすだろうと、待っていたが、⑨僧が、⑩「もしもし。
⑪目をお覚ましください。」と言うのを、⑫うれしいとは思うけれど、⑬たった一度で返事をするようなのも、(ちごが)待っていたのかと(僧達が)思うと困ると(ちごが)思って、⑭もう一声呼ばれて返事をしようとがまんして寝ているうちに、「⑮これこれ、起こし申し上げるな。⑯幼い人は、寝入りなさってしまった。」と言う声がしたので、⑰ああ、つらいと思って、もう一度起こせよ、思いながら寝て聞くと、⑱ひしひしとひたすら食う音がしたので、⑲どうしようもなくて、ずいぶん後に、「はい」と返事をしていたので、⑳僧達が笑うことが、限りなかった。


フリー句(自由連句)「天上に」の巻

2022-10-29 07:48:39 | 俳句
フリー句(自由連句)「天上に」の巻
天上に楽奏上し火の祭        金澤ひろあき
月を経て火星に至る未来の図     青島巡紅
無重力で食べるヌードル発明し    ひろあき
※カップヌードルが開発したそうです。
無重力できちゃった婚はまだ先の話  巡紅
諦めない今日も朝日はまた昇る    ひろあき
飯の湯気寝坊助は尻叩きだと朝の月  巡紅
残業代飲み屋ハシゴで使いきり    ひろあき
重力の井戸から逃れられぬ人の性   巡紅
ジャンプして妖精になるバレリーナ  ひろあき
風光る棒高跳び選手の勇み足     巡紅 
クリアーするたびに目標高くなる   ひろあき
段々目標低くなる事に抗えない60代  巡紅
早い日暮れのひとりごと増える    ひろあき
捲って破いた日めくりの枚数     巡紅
初めての子の出産の近づいて     ひろあき
逆子と診断されて正常で出てくるタフガイ 巡紅
底力谷の底にも花の咲く       ひろあき
分裂と結合繰り返す海洋底と大陸   巡紅
*一枚の超大陸から分裂しまた一枚の超大陸に結合。5〜6億年のサイクルで繰り返される。
京都のへそここ千年はうごかない   ひろあき
喜びのスパイスは淡白で悲しみのそれは奥深い 巡紅
コインの表裏悲劇と喜劇       ひろあき
カップ麺お釈迦様でもお腹はすきます 巡紅



2022年10月 京都童心の会 通信句会作品

2022-10-28 07:47:40 | 俳句
2022年10月 京都童心の会 通信句会作品

この中より、十五句を選んでください。さらに特選一句をお願いします。
特選句の選評をいただけるとありがたいです。

1 螺旋階段止まらない訃報
2 陽射しまあるい黒電話
3 砂時計一日観ている鏡
4 夕焼け赤いバス停の季節
5 黄色い涙体中秋風
6 京都午前三時ホテルの貝殻
7 灯を浴びて香と花こぼす金木犀
8 左袖林檎磨いて一齧り
9 長袖で泥の投げ合い国家葬
10 五位鷺と無言の問答雨上がり
11 ただいまとローソク線香般若心経
12 日が沈むバス乗る人は知らん顔
13 京都タワー夜の帳に染る蒼 
14 蕗の薹顔出す雪間朝日満つ
15 草いきれ身を潜めたるスナイパー
16 風呂なしの家々の子ら雨に笑む
17 溝萩や小川に咲きてみとれしや
18 鰯雲空を見上げて散歩する
19 秋日和窓から覗く猫の顔
20 孫摘みし朝顔の種手のひらに
21 墓参り草刈りして手を合わせ
22 新涼や農道歩きして二人旅
23 草の芯小瓶に生けし眺めして
24 この季節のお楽しみ無花果スイーツ店頭に
25 通り過ぎやっぱり気になり戻る別珍瓜の漬物
26 雲間からまんまるお月さまのお出まし
27 名月に大接近白く輝くジュピター
28 静けさの中で輝く十六夜の月
29 ウイズコロナ3年ぶりのイベント続々と
30 金木犀空に向かって深呼吸
31 肌寒し猫を布団に引き寄せる
32 新米や道の駅から誘いくる
33 4度目の大根の芽の根付くかな
34 地蔵堂どんぐりまつる小さき手
35 猫眠る柚子の根元の丸い石
36 心して食べよ秋刀魚の値はりかな
37 苦瓜の黄のエキスを飲み尽くす
38 朝顔や名は団十郎と申すなり
39 早起きの台風一過の道路掃く
40 秋植えの花とりどりや園芸店
41 国民の飛び交う意見小鳥くる
42 キンモクセイ 恋人たちは目で話す
43 二番手に引き際なんぞありはせぬ
44 夜の噺 見えない星を探す旅
45 虫の音の暗闇にはまる
46 花ニラの地上にこぼす白い星
47 六十年演じるちっぽけなピエロ
48 六十年 なんと日暮れの早いこと
49 朝顔もオルガン唱歌小学校
50 冬支度丸く小さく晩年は
51 芒にはキラキラネーム似合うまい
52 就職試験視線まっすぐ新スーツ
53 株価暴落残暑のベンチ皆猫背
54 左翼も右翼も人間みんな戦死した敗戦日
55 宴にも逢えずマッチ一本擦って初秋刀魚
56 国葬だなんて〝俺の遺体は鴨川に捨てよ〟と親鸞は
57 日本中が忖度と付和雷同になっちゃった総理よ
58 生きかわり死にかわりして時代を創る言葉たち
59 死ぬ時も生まれる時も無一物煎じつめれば赤子になってお浄土へ
60 鉛筆でありがとうとだけの父の遺書今宵は独り秋の月を拝んでいます
61 りんどうのむらさきしみる風爽やか
62 日本の四季春夏夏夏秋冬冬
63 遠い国平和になれと手を合わせ
64 隣国で殺しあうのはもう止めて
65 切れて三つき今さらどこへ行くパスポート
66 街頭の証明写真歳がばれ
67 夢の中夫の世界へのパスポート旅
68 「民のほねをくだける白米」と日蓮 ありがたい「いただきます」
69 違う場所停めたばっかしタマゴ割れ気持ちが転倒
70 走ったよ一つ前のバスに乗れたよ良き流れ
71 助け無きあてのない旅宙ぶらりん
72 女心と秋の空せめて今日だけ晴れの日に
73 早くカッてとたわわの稲穂台風一番恐いです
74 八十八の手塩と心かけた宝
75 御米をば粗末にするなバチ当たる
76 朝顔のあいさつは秋でもうれし
77 鼻から主役だキンモクセイ
78 待ったなし光射す言急募です







フリー句(自由連句)「捨てられた」の巻

2022-10-27 07:57:40 | 俳句
フリー句(自由連句)「捨てられた」の巻
捨てられたハムスター抱き動物病院 青島巡紅
*ハムスターを診てくれる場所は少ないそうです。行く前に電話して確認したそうです。
手のひらに包む小さな命の熱    金澤ひろあき
離す前に指をくすぐる石の記憶   巡紅
ピラミッド王はこの世を棄てたまう ひろあき 
宇宙の旅に飽きたと隕鉄の刀語る  巡紅
鬼の腕斬った闇夜に紅葉散る    ひろあき
夕陽受け沖向かう船の開かぬ瞳   巡紅
琵琶法師平家のその後を語り継ぐ  ひろあき
狼も親子で食べるブルーベリー   巡紅
*アメリカ・ミネソタ州北部のボエジャーズ国立公園での調査の結果、野生のブルーベリーが豊作な時は一週間の食事のうち80パーセント強がブルーベリーだった。
閑けき日一品多くなるレシピ    ひろあき
残せない一品に下剤いるなと    巡紅
ムリすんな残せばいいよ年だから  ひろあき
花も茎も右に倣えの彼岸花     巡紅
秋雨の風を伴う夕暮れに      ひろあき
傘一つ二つの肩が笑ってる     巡紅
ハロウィンのサプライズを相談中  ひろあき
警官に大目玉喰らう血糊カップル  巡紅
*数年前実際にあったそうです、深夜の花見小路で。
鏡見て初めて愚行に気づくとは   ひろあき
精一杯頑張った結果の大裏目    巡紅
リベンジを果す来期の開幕戦    ひろあき
見返り美人になる寝床冬の朝    巡紅
視線の先に銀杏ハラハラ      ひろあき


坪谷様の思い出

2022-10-25 07:54:39 | 俳句
坪谷様の思い出
       金澤ひろあき
 神戸三宮駅の近くに、赤い煉瓦の建物があります。三宮は人通りが多いのですが、ここは静かで落ち着いています。二階に図書館、三階に喫茶店。
 坪谷智恵子さんとよくこの喫茶店で句会をしました。少し前にご主人を亡くされたのですが、その後、一人暮らし。
 神戸のこの建物も、ダンス教室に通い出して知ったそうです。お元気な時は、三宮の句会と京都の句会、ともに出席され、私達を支えて下さいました。
 最初の頃は、「句は書けません。詩が好きです。」と。句より詩が多かったのです。

 それぞれの旅立ち
         坪谷智恵子
大きく息を吸いこんで
片道切符だけ手に持って
一人で旅立ちをしてしまいました

現実に向き合っていると
心も体もボロボロになってしまいそう
私も夢の世界へ旅立ちます

 悲しみの後、生きる決心をされたこの詩を冒頭に詩集『夢』を出されました。
(2007年5月のことです。)
 句も詩も素直にありのままをすくい取るように歌い上げる方でした。日々の暮らしや心の動きが、鮮やかに見えてくるのです。
  ゆったりと会話できる友がいる  智恵子
  台風すぎ明石大橋胸はりて
  枯草の中を覗くと春の顔
  花嵐窓に花弁こんにちは
  キッチンの城のトリデに立てこもる
  お菓子の城蟻のような観光客
  蒲公英に目線合わせて対話する
 最後にお会いしたのが、令和元年五月一日。雨模様でしたが、須磨の明石海峡大橋のたもとで、童心の会の皆さんと楽しいひとときを過ごさせていただきました。
 その後、コロナ禍でお会いできなくなりました。
  風に乗り友の手紙の届く頃    智恵子
 まさかこれが最後になるとは。もう少し詩や句を拝見
したかったですよ。
 長い間、私達を支えて下さいましてありがとうございました。
  もういないんだ須磨の海に雨の涙  ひろあき

※童心記念号2022年より 写真は坪谷様とお会いした時撮影した明石海峡大橋です。