冠句エッセイ 広重のブルー
金澤ひろあき
若い頃に、絵をかじったことがある。写生した絵にはもの足りず、ピカソや北斎が好きだった。ダリの絵の不思議な着想に魅せられた。
自分が描く時も、わざと歪みを入れたり、構図を大胆に組み替えたりすることを好んだ。
六十を越えてから、それまでじっくり見なかった広重を観た。何気ない風景、庶民と思われる旅人が宿で飯を食べているような、どこにでもありそうな風景。描かれている人々は美男美女ではない。それが深いブルーと相俟って、何と美しいことか。
こういう美を、私も句で描けたらというのが、願望になった。
水に寂ぶ 広重版画濃いブルー ひろあき
※四条大橋から三条大橋を望む。三条大橋は旧東海道の終着地。(京都側から言えば始発ですが)