蔵の中の美術館
金澤 ひろあき
京都の南、向島の田のあぜ道に、犬ふぐりの花が一面。梅もだいぶ開いて春めいてきました。
犬ふぐり鉛筆書きの詩が似合う ひろあき
せっかくの陽気ですので、大阪の藤田美術館まで足を伸ばします。丹波橋で近鉄電車から京阪電車にのりかえ、大阪の京橋へ。八幡までは、山や川や田が広がるいい風景です。
淀城の石垣や堀もいい感じです。樟葉を過ぎると住宅街、そして高層建築が増え、ああ大阪だなあと感じます。
京橋からJRの東西線にのりかえ、たった一駅で大阪城北詰という地下駅へ。そこを上がると、すぐ上が藤田美術館でした。藤田伝三郎という、明治の頃、大成功した富豪がお茶に目覚め、美術品を集めたものらしい。茶道具、書画、仏像、仏具など、いいものがあると聞いていたので、行きたかったのです。
美術館の庭には何と宝塔が建っています。織部灯籠のようなああいう小さな石のかわいいものではなくて、本当の塔が・・・。美術館はよく見ると「蔵」でした。大阪の商家の古い蔵がそのまま美術館というのは、これはこれで雰囲気があります。
塔をお庭に建ててしまうだけあって、仏教関係のものが多いです。もとは薬師寺のものであったという奈良時代の『大般若経』。正倉院のお経の字に通じるととのった楷書が美しい。この独特の楷書の字体、本場中国では滅んだらしいのですが、日本の古い時代のお経にたくさん残っています。
法相宗の玄奘三蔵絵巻八。東インドに着いた玄奘三蔵を出迎える戒日王の行列が描かれます。詞書(説明文)は流れるような漢字仮名交じり文。絵は大和絵で、インドの話なのに和風です。
今回見たかったのは実は書でいえば、『古今集』を書いている「高野切」第三種と「継色紙」でしたが、二つとも出品されておらず残念。これらは仮名文字の最高峰です。また継の機会に・・・。
お茶の道具もたくさん。利休の師武野紹鴎の作った「象牙溜塗茶杓」。象牙で作った唐物なんですね。茶色に塗ってますけど。
長次郎作の赤楽茶碗もあります。赤の中に少し黒がまじっていて、銘は「園城寺」だそうです。手に持つことはできませんが、見た目はとても軽そうです。赤の中にお茶の緑が映える。それを楽しんだのでしょうか。
仏具、仏像、仏画もたくさんあり、どれも価値あるものなのでしょうが、私には詳しくはわかりません。猫に小判でございます。
ただ、美しい石でできた中国の北魏仏は、昔、大同や龍門に同じ時代のものを見に行ったこともあって、懐かしい感じです。30センチほどの小さな仏像でしたが、しっかり造像記の漢文があり、うれしくなりました。同じ楷書でも北魏楷書は、「石にガツンと彫った」という、一見するとゴツゴツしていますが、力強い素朴な味があります。これを至近距離で見て満足しておりました。
饒舌に五感くすぐる芽吹きかな ひろあき
※注意 藤田美術館は、春と秋にしか開いていないようです。また、出品も替わりますので、よく調べた上でお出かけ下さい。
金澤 ひろあき
京都の南、向島の田のあぜ道に、犬ふぐりの花が一面。梅もだいぶ開いて春めいてきました。
犬ふぐり鉛筆書きの詩が似合う ひろあき
せっかくの陽気ですので、大阪の藤田美術館まで足を伸ばします。丹波橋で近鉄電車から京阪電車にのりかえ、大阪の京橋へ。八幡までは、山や川や田が広がるいい風景です。
淀城の石垣や堀もいい感じです。樟葉を過ぎると住宅街、そして高層建築が増え、ああ大阪だなあと感じます。
京橋からJRの東西線にのりかえ、たった一駅で大阪城北詰という地下駅へ。そこを上がると、すぐ上が藤田美術館でした。藤田伝三郎という、明治の頃、大成功した富豪がお茶に目覚め、美術品を集めたものらしい。茶道具、書画、仏像、仏具など、いいものがあると聞いていたので、行きたかったのです。
美術館の庭には何と宝塔が建っています。織部灯籠のようなああいう小さな石のかわいいものではなくて、本当の塔が・・・。美術館はよく見ると「蔵」でした。大阪の商家の古い蔵がそのまま美術館というのは、これはこれで雰囲気があります。
塔をお庭に建ててしまうだけあって、仏教関係のものが多いです。もとは薬師寺のものであったという奈良時代の『大般若経』。正倉院のお経の字に通じるととのった楷書が美しい。この独特の楷書の字体、本場中国では滅んだらしいのですが、日本の古い時代のお経にたくさん残っています。
法相宗の玄奘三蔵絵巻八。東インドに着いた玄奘三蔵を出迎える戒日王の行列が描かれます。詞書(説明文)は流れるような漢字仮名交じり文。絵は大和絵で、インドの話なのに和風です。
今回見たかったのは実は書でいえば、『古今集』を書いている「高野切」第三種と「継色紙」でしたが、二つとも出品されておらず残念。これらは仮名文字の最高峰です。また継の機会に・・・。
お茶の道具もたくさん。利休の師武野紹鴎の作った「象牙溜塗茶杓」。象牙で作った唐物なんですね。茶色に塗ってますけど。
長次郎作の赤楽茶碗もあります。赤の中に少し黒がまじっていて、銘は「園城寺」だそうです。手に持つことはできませんが、見た目はとても軽そうです。赤の中にお茶の緑が映える。それを楽しんだのでしょうか。
仏具、仏像、仏画もたくさんあり、どれも価値あるものなのでしょうが、私には詳しくはわかりません。猫に小判でございます。
ただ、美しい石でできた中国の北魏仏は、昔、大同や龍門に同じ時代のものを見に行ったこともあって、懐かしい感じです。30センチほどの小さな仏像でしたが、しっかり造像記の漢文があり、うれしくなりました。同じ楷書でも北魏楷書は、「石にガツンと彫った」という、一見するとゴツゴツしていますが、力強い素朴な味があります。これを至近距離で見て満足しておりました。
饒舌に五感くすぐる芽吹きかな ひろあき
※注意 藤田美術館は、春と秋にしか開いていないようです。また、出品も替わりますので、よく調べた上でお出かけ下さい。