読む日々

テーマばらばらの読書日記

イルカの家

2015-08-18 | 絵本
「イルカの家」ローズマリー・サトクリフ作/乾 侑美子訳



1951年にイギリスで出版された、16世紀のロンドンを舞台にした素敵なお話。


孤児のタムシンは9歳の女の子。育ててくれたおばあさんが亡くなり、大好きな叔父が独身で女の子を育てるのは無理、との祖母の遺言で北デヴォンの港町から遠くロンドンの別な叔父の家へ引き取られます。
鎧師の親方である叔父の家には、美人で優しい叔母さん、亡くなった長男の代わりに鎧師になることを義務付けられた次男、まるでふたごのようにそっくりな、タムシンの1つ上の少年と1つ下の少女、
そしてとても小さなちびちゃん、お手伝いと犬、が暮らしています。

デブォンを、船を恋しがりながらも、叔父宅での暮らしになじんでいくタムシン。
鎧師修行中のピアズが、実は海の男になりたいと知り、どんどん心を通わせていきます。

タムシンの父親は船乗り。デブォンで暮らした叔父は造船師。ピアズの兄は鎧師になる前に一度だけ船乗り体験をしたいと出た航海で遭難してしまっています。


ある日ピクニックで出かけた先でデブォン出身の老婆と知り合い魔法の球根をもらうタムシン。クリスマスにはこの花が咲いてねがいがかなうと。

男の子になりたい、船乗りになりたい、というタムシンの夢はいつしか、「ピアズを船乗りにさせたい」に。


そしてクリスマスの奇跡が・・・。


ほんとーにいいお話!!大事件は何もないんだけど。読んでいて、異国へ憧れる気持ちがふつふつと。


大満足です。

赦し

2015-08-11 | 
矢口敦子「赦し」


仕事中心のあまり、医者なのに息子の異変に気づかずインフルエンザ脳症で死なせてしまい、ショックを受けた妻が自殺。
以来世を捨て、時にはホームレスとして生きてきた日高。

5年前からある資産家の老婆の手伝いをして暮らしている。

老婆が倒れ、老婆の隠された過去に向き合う羽目に。
同時に、スーパーで知り合った糖尿病の5才の男の子とその母、叔母が巻き込まれた事件に関わるうち、妻子へのすまなさや妻子の周囲の感情が理解できるように。

ラストは希望なのか絶望なのか。

ストーリーは面白かったけど、ラスト日高はどうなったんだろう?とスッキリせず。 
読者に委ねるラストは好きじゃないので
満足度は70

無垢の領域

2015-08-08 | 
桜木紫乃「無垢の領域」


道東の高校の養護教諭の妻、書家の夫。赴任してきた民間の図書館長とおそらく少し傷がいのあるわかい妹。
4人が出会ったことでそれぞれの大人達に現れた変化。

うわぁ。
この本凄い。

養護教諭の伶子の立ち位置が我が身に似ていてぎくり。
いろいろ思いつまされる内容でした。

無垢な存在の純香に触れる事で夫が変わり、なんとなくそれを良いことに純香の兄と心を通わせてしまう。

その兄である信輝は、妹との距離感に戸惑いが多かったけど、伶子の夫が純香の才能を絶賛してくれたことでなんとなく妹の存在を受け入れられるように。

そんな矢先悲しい事件が。

書家は喪失感が半端なく、結局夫と生きていく事を決めた妻。
そして純香の才能から得た力で賞を…取ってしまう。

ラストはちょっと切ない。

書家の寝たきりの母親がねぇ。怖すぎ。
妻の稼ぎで母と自分が生活している夫の心境、これってこういうものなのかな。

この部分がうちと一緒なんだよね。妻の気持ちは私に近いかなと思うけど、作者女性だし、夫の気持ちはどうなんでしょう。

満足度100

デシート

2015-08-06 | 
神崎和幸「デシート」



巨大財閥会長の悪から発した様々な蛮行を思いがけず個人的にかかわってしまった探偵が暴き、会長を追い詰めていくお話。

昨日届いて一気読み。ストーリー展開がスムーズで。先が先が、と気になる小説でした。
勧善懲悪っぽさもあるのでドラマとかどうですかね?


誠一の姉が婚約者と別れた理由とか、ゆり子の昔の恋など、スピンオフもあったらなあ、と思いました。

巨大企業の会長だからこそ、人を動かし、自分の思い通りのストーリーに世の中の人を動かしていけるのですね。
実際にもあり得そうで怖い・・


そして得意の妄想キャスト
誠一・・・福士蒼汰(かっこいいから。とにかく眺めていたい♪)
窓華・・・志田未来(記憶喪失とか難しい役どころなので演技派で)
福永父・・三浦友和(悪い友和さんも見てみたい)
森田刑事・・三浦貴大(親子共演。福永子では貴大くんがかわいそうだから)
宮村刑事・・木村文乃(キリッとした役似合いそう)
ゆり子・・・石田ゆり子(名前一緒だし、未来ちゃんの母ならテイスト合いそう)

なーんてね。楽しめました。


しかたのない水

2015-08-04 | 
井上荒野「しかたのない水」

ざぶーん、と重たい空気に浸りたくて久々に井上荒野さん借りてみた。

あるフィットネスクラブに集う人々それぞれを主人公に据えた連作短編集。

U+2460手紙とカルピス
母を亡くしてからやさぐれて、女の元を短期間で渡り歩く生活をする男。母の文通相手とずっと続く手紙のやり取り。
U+2461オリビアと赤い花
3歳の女の子を持ち、夫と3人で団地に住む主婦。オリビアを言うハンドルネームで出会い系サイトに登録している。
U+2462運動靴と処女小説
作家の夢を諦め、サラリーマンとして数十年。早期退職をしてなぜか古本屋。始めたいと願う50がらみの男。
U+2463サモワールの薔薇とオニオングラタン
老いた画家の母に精神的に閉じ込められている30代の娘。
U+2464クランプトンと骨壺
産んだばかりの娘を亡くし後追い自殺した夫。遺された妻はフィットネスクラブ。受付で働く。
U+2465同じフィットネスクラブで働く妻が失踪した店舗責任者。

それぞれ、前の話に出てきた人の事情が後の話でネタバレされてて面白いな基本的に恋のお話なんだけど、純粋な恋は感じられなかった。人生の不満の捌け口を恋に求めてる人ばかり。
最後の店舗責任者には、妻への愛が感じられて、締めに相応しいお話でした。

満足度80