読む日々

テーマばらばらの読書日記

日の名残り

2011-02-25 | 
「日の名残り」カズオ・イシグロ作 土屋政雄 訳

 久しぶりにカズオ・イシグロの作品を見つけ、迷わず借り受け

が、最初は意図するところがつかめず、あまりにも淡々と進むお話に途中であくびがでてきて
「最後まで読めるのか?」と不安になりました。

ところが、読み進めていくと ものすごくいいんです。最後なんて泣いちゃった

第二次大戦後のイギリスで、アメリカの富豪が買い取った屋敷で働く執事が主人公。

昔、第一次大戦後に同じお屋敷でイギリス貴族に仕えていた際に一緒に働いていた女中頭に30年振りに会うために、お屋敷(の場所がよくわかんない)から、コーンウォール(!!私のコーンウォール、なんて)まで、御主人の車を借りて旅をしながら、当時の事を振り返るお話。

完璧な執事ぶりと、その完璧さ故に優秀な女中頭との間に育った感情に本人も気づかず女中頭も自信が持てず
彼女は結婚してコーンウォールへ移ってしまったわけですが。

その当時の日常が語られる中、ドイツとイギリスの関係やらナチスの事なんかも少しふれられて、当時の御主人が失脚していく様は可哀想で読んでらんない、って感じでした。

主人公はあまりにも完璧に執事であったために自分の感情に気付けなかった事が悲しかったし、女中頭の方の屈折した愛情表現は自分に似ててかなり切なかった。素直に自分の感情を正直に表現できる人ってうらやましいな。

自分の立場や環境や周囲との関係が主になってしまって、正直な感情なんて表に出すことは 今はできません。
昔も苦手だったけど。

とにかく 淡々としていながらも奥深く、色々な事が示唆されている いい本だったと思います。

満足度85

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