阿字観を終わり半跏をとくと、隣にオットーが正座をして瞑目していた。
弟子入りした時、作法には拘らない。胡坐でも、足を投げ出しても構わない。と言ったら正座でも良いですかと来た。どうしてかと聞きかえしたら、子供の時からお茶を習っていてこれが楽だと言うのだ。
半跏も教えて見たのだが、やっぱり正座の方が楽だと言う。不思議な奴だとは思いながら、約束だから自由にさせている。
おれの気配の変化に気付いたのだろうか、正座したまま方向を変え、俺に正対する。お茶を長年やっていたせいか流れるような動きだった。
「一階も防寒設備と電源が強化されただけです。先生の姿は勿論有りませんでしたし、気配も有りませんでした。念の為地下室や隠し部屋が無いか入念にチェックしましたがそんなものは有りませんでした。お師匠様が観想に入ってらっしゃるので、屋根裏も調べてみましたが勿論何もありません。あ、ライトは一階の電源部屋にありました 持って帰ります。」
ふと、座布団の下が暖かいのに気付いた。
「床暖房かい。」
「床暖房です。防寒サッシと言い随分手を入れますし、一階の床下や屋根裏には断熱材がしっかり張られています。随分と手をかけて修理したみたいですね。」
「優稀に聞いて見れば分かる事。いずれにせよ、実際に差配したのはあの子に決まっているのだから。そうか下には何も無かったのか。そうなると先生=ぼくちゃんが残した手がかりと言えばこれだけか。」
「密厳院発露懺悔文、阿弥陀三尊像、阿字の掛け軸ですね。豊山派か智山派にでも帰依したと言うのでしょうか、そんな話は伺った事もありません。先生が真言宗関連で用意するとしたら、「受法用心集」、聖天像、愛染人形でも置いてある方が似つかわしいような気がします。だって意識による世界の変化と言うか、西欧近代科学の裏側にあるエゾテリックな思考法と言うのが研究領域の中心。最近はそうした思考と東洋神秘思想との通底に関心の中心が移って来ていました。
ですから真言宗でまず最初に取り上げるなら立川流だと思うのですが。」
「うんそれは俺も最初に考えた。確かに興教上人より仁寛阿闇梨の方が奴の趣味にあっている。だからこそこれが奴のサインに違いない。
三年ほど前、命息それも二息と立川流との関係について聞かれた記憶がある。すこし観想をして記憶の奥まで潜り込んでみた。阿頼耶識に確かに種子は残っていた。拾い上げてきたけど末那識を経由して意識に上げる為には、意識の拘束を払う事が必要だ。
テレマーク板を履いてブナの森の散歩と会話に付き合ってもらうよ。まずその前に、すこし早いが腹ごしらえだ。」
「承知しました、パスタを作りますからスンドウにお湯を一杯にして沸騰させておいて下さい。戸締りをしてきますから。」
「合点承知。お任せ下さい。お師匠様。」 少なくとも料理についてはうそではない。オットーがおれのお師匠様だ。
弟子入りした時、作法には拘らない。胡坐でも、足を投げ出しても構わない。と言ったら正座でも良いですかと来た。どうしてかと聞きかえしたら、子供の時からお茶を習っていてこれが楽だと言うのだ。
半跏も教えて見たのだが、やっぱり正座の方が楽だと言う。不思議な奴だとは思いながら、約束だから自由にさせている。
おれの気配の変化に気付いたのだろうか、正座したまま方向を変え、俺に正対する。お茶を長年やっていたせいか流れるような動きだった。
「一階も防寒設備と電源が強化されただけです。先生の姿は勿論有りませんでしたし、気配も有りませんでした。念の為地下室や隠し部屋が無いか入念にチェックしましたがそんなものは有りませんでした。お師匠様が観想に入ってらっしゃるので、屋根裏も調べてみましたが勿論何もありません。あ、ライトは一階の電源部屋にありました 持って帰ります。」
ふと、座布団の下が暖かいのに気付いた。
「床暖房かい。」
「床暖房です。防寒サッシと言い随分手を入れますし、一階の床下や屋根裏には断熱材がしっかり張られています。随分と手をかけて修理したみたいですね。」
「優稀に聞いて見れば分かる事。いずれにせよ、実際に差配したのはあの子に決まっているのだから。そうか下には何も無かったのか。そうなると先生=ぼくちゃんが残した手がかりと言えばこれだけか。」
「密厳院発露懺悔文、阿弥陀三尊像、阿字の掛け軸ですね。豊山派か智山派にでも帰依したと言うのでしょうか、そんな話は伺った事もありません。先生が真言宗関連で用意するとしたら、「受法用心集」、聖天像、愛染人形でも置いてある方が似つかわしいような気がします。だって意識による世界の変化と言うか、西欧近代科学の裏側にあるエゾテリックな思考法と言うのが研究領域の中心。最近はそうした思考と東洋神秘思想との通底に関心の中心が移って来ていました。
ですから真言宗でまず最初に取り上げるなら立川流だと思うのですが。」
「うんそれは俺も最初に考えた。確かに興教上人より仁寛阿闇梨の方が奴の趣味にあっている。だからこそこれが奴のサインに違いない。
三年ほど前、命息それも二息と立川流との関係について聞かれた記憶がある。すこし観想をして記憶の奥まで潜り込んでみた。阿頼耶識に確かに種子は残っていた。拾い上げてきたけど末那識を経由して意識に上げる為には、意識の拘束を払う事が必要だ。
テレマーク板を履いてブナの森の散歩と会話に付き合ってもらうよ。まずその前に、すこし早いが腹ごしらえだ。」
「承知しました、パスタを作りますからスンドウにお湯を一杯にして沸騰させておいて下さい。戸締りをしてきますから。」
「合点承知。お任せ下さい。お師匠様。」 少なくとも料理についてはうそではない。オットーがおれのお師匠様だ。
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