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pride and vainglory -澪標のpostmortem(ブリッジ用語です)-

初歩の文書分析と論理学モドキ(メモ)

番外3:論理的錯誤・倫理的欠格(承前)

2021-07-06 08:49:16 | サイエンス囲炉裏端談義
❶ 以下の文章については、初見の際から気付いてはいたのですが、文章全体との関連については推敲の時まで考えていませんでした。
 ibid. PP652より引用
”さて、リアルタイム定量RT-PCR検査ではヒューマンエラーによる検体の汚染がなければ基本的に擬陽性はでない、課題となるのは、回復期陽性のケースだ。ウィルスの残骸をも検出できる特性であり、検査の精度の問題ではない。この課題については、時系列で複数回採取してCT値の推移を評価することで、回復期であるかどうかを区別することにより対処可能である。”・・・A

①リアルタイム定量RT-PCR検査ではヒューマンエラーによる検体の汚染がなければ基本的に擬陽性はでない。
 「基本的に擬陽性は出ない」は。例外的に擬陽性はある⇒特異度100%ではない事と同値ですが、PP652後半以降の議論では、前項でデータの信頼性について指摘した”青島での大量検査結果報告”を論拠に特異度100%を主張しています。騎虎の勢いとは言え論理矛盾です。
②課題となるのは、回復期陽性のケースだ。ウィルスの残骸をも検出できる特性であり、検査の精度の問題ではない。この課題については、時系列で複数回採取してCT値の推移を評価することで、回復期であるかどうかを区別することにより対処可能である。
 この文章および結論部分での論旨から見て、{回復期陽性」は事後的に対処可能であり、検査の特性であって精度の問題ではないとして、(特異度計算では擬陽性としていません)明示的にではありませんが、擬陽性はないと定義づけしています。このことはスクリーニング検査における鑑別基準を”感染性の有無”とした冒頭の設定に反するものです。典型的な補助仮設の事後導入による反証に対する対処です。また赤字部分は、新たな定義の導入であると同時に、信号検出理論に関する知識の欠落を意味するものです*
 *クラッターはレーダーの特性によるものであり、敵判定の精度には影響しない。こういったら、第二次大戦当時のレーダー関係者はのけぞります。

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”またウイルス量が多く感染性の高い感染者ほど陽性となりやすく、回復期の陽性者を含めても人口に占める陽性者はわずかである。”・・・B
 こちらは解説を控えますが、RT-PCR検査(検体採集から判定までのプロセス全体)において原理的に偽陰性・擬陽性が存在しうることを含意する言明です。

❷PP652(2)項において、,「宮古島市におけるスクリーニングPCRの疫学的推定」内の記述を取り上げて、批判なさっています。この論文を見る限り、批判としては首肯できる部分が大半ですが、公開文書ではありません{資料開示請求によって入手した旨記載されています(ibid. PP651))。論点の当否を判定する前提として、岩波「科学」編集部には、情報開示要求または当事者からの資料提供によって、「宮古島市におけるスクリーニングPCRの疫学的推定」論文を入手し、引用部分の正確性について検証する義務があると考えます。しかしながらHTML版にはその旨の記載がありませんので、この部分の当否は判断不能であり、学術論文ではなくポレミックなパンフレットに留まっています。
この部分は岩波「科学」編集部の責であり、徳田さんの責任ではありません。為念
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