木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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左右非対称(アシンメトリー)

2008年07月08日 | 造形の構成原理(コツツボ)
<縄文式土器>


◆左右非対称(アシンメトリー) (シンメトリーその5)
271:【デザインのコツ・デザインのツボ 100連発!】第71発 デザインワーク


 こんにちは!
 「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。

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シンメトリーの種類

 このところ黄金分割や黄金長方形や白銀長方形の話をしてきました。

 こんな感じです。

 黄金比
 
黄金分割
 
黄金長方形の作図
 黄金長方形にしておけば大丈夫
 
営業で使える黄金比
 
三分割法
 
フィボナッチ数
 
標準数

 
白銀比
 
白銀長方形の作図

 
正方形と整数分割

 これらの分割や縦横比は、一つの形の
プロポーションを決めるものです。プロポーションは製品外観の全体的な形、もしくは部品一つ一つのデザインには適応できますが、多くの部品で構成される製品をデザインする場合には、それらの部品や構成要素をどのようにレイアウトするかという問題には対応できません。

 そのような場合に、シンメトリー(対称性)が役に立ちます。

 一般的にシンメトリーというと「左右対称」のことだと認識されていますが、H・ヴァイルはその著書「シンメトリー」の中で広義のシンメトリーを以下の4つだとしています。

 ●シンメトリーの種類

 左右対称(鏡映)
 回転対称
 平行移動
 自己相似性


 シンメトリーな構成やレイアウトは、安定感・正面性・精度感・権威性などを演出することができます。シンメトリーは、製品デザインやロゴマークのデザインにとって、なくてはならないデザインの法則です。

 しかし、実は日本人はシンメトリー(左右対称)よりも、アシンメトリー(左右非対称)なレイアウトのほうがしっくり来るようです。


左右非対称(アシンメトリー)

 拙ブログでシンメトリーについていろいろ書いてきましたが、左右対称なシンメトリーは西洋の美の規範だといわれています。西洋ではシンメトリーと黄金分割が好まれますが、日本では左右非対称(アシンメトリー)と正方形・整数分割が好まれるといわれています。

 欧米や中国に行くと、日本では信じられないくらい完璧な左右対称の建築物に遭遇します。私はかなり違和感がありました。日本の建造物を見ると完全な左右対称は、公共建造物や高層ビルでさえあまり見かけません。

 特に個人住宅では、西洋風なプレハブ住宅ですら、完全に左右対称なものはないようです。左右対称であるだけで、西洋風な印象を感じます。和風と完全な左右対称は相容れないようです。

 これには歴史的な背景があるようです。歴史を縄文時代までさかのぼると、岡本太郎が指摘したように日本の美意識の根底には、縄文式土器の「おどろくほどはげしい」隆線紋の力強さと左右非対称(アシンメトリー)があります。

 その後、渡来文明の影響で左右対称の弥生時代になりますが、縄文時代の八千年に較べれば、弥生時代はたかだか六百年、弥生時代から現代までも二千数百年に過ぎません。どうやら、日本人には左右非対称(アシンメトリー)を愛する縄文人の血が流れているようです。

 池澤夏樹が「母なる自然のおっぱい」で、富士山を「陳腐なほどのシンメトリーだから、これほど印象的な山はない」と書いたのは、わが国の美意識では左右対称は陳腐であり、だから却って印象的になり、富士山は霊峰たりえたのだということでしょう。


左右非対称なアール・ヌーヴォー

 縄文時代以来何かと抑圧されてきた左右非対称の美意識は、江戸時代の鎖国という壁に守られて、再び花開き洗練されました。その洗練された美意識が、ジャポニズムとして十九世紀の西洋に受け入れられ、アール・ヌーヴォーという美術運動に結びついていきました。

 十九世紀のヨーロッパは、工業化社会の初期で、単純な旋盤やフライス盤でできる不細工でシンメトリカルな製品しかなく、人々はシンメトリーの退屈さや陳腐さに辟易していたのかもしれません。そういう意味では、アール・ヌーヴォーは、西欧で唯一のシンメトリーとアシンメトリーの葛藤の時代だったといえるかもしれません。

 その後西洋では、モダンデザインの還元主義的な歴史分析によりシンメトリーは失地回復を果たし、現在に至っています。

 しかし、工業デザイン大国として西洋のモダンデザインを信奉する今でも、日本はアシンメトリカルな美意識を堅持しています。常にシンメトリーに対するアンチテーゼを発信し続ける日本だからこそ、工業デザインで世界の注目を集めているのかもしれません。


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