木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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「かわいい」はデザインの入口(その2)

2010年07月20日 | 造形の構成原理(コツツボ)
<スティーヴン・ジェイ・グールド著「パンダの親指」より>


◆「かわいい」はデザインの入口 (その2)
303:【造形の構成原理】第103発


 こんにちは!
 デザインコンサルタントの木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。

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 木全の自己紹介

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 モノマガジンを発行しているワールドフォトプレスのムック「デザインがわかる9号」に書いた記事を、数回に別けて転載します。

 ムック「デザインがわかる」誌上では、たくさんの写真で実例を示しながら説明しています。残念ながら、このブログではそれは難しいです。

 ご興味がおありでしたら、ムック「デザインがわかる9号」をご購入ください。 

 ムックにあわせて文体が普段と違います。その点、ご了承ください。


「かわいい」はデザインの入口

 製品の外観デザインの良し悪しの評価は難しい。

 工業デザイナーは、製品デザインは有意性(美しさ)と有用性(効率)から成り立っていると考えている。そして、見た目の良し悪しを決める有意性(美しさ)の評価基準は「きれい」と「かっこいい」だと考えられているが、実は「かわいい」も大切な評価基準だ。

 「かわいい」は人類の遺伝子に組み込まれたデザインの評価基準であり、この感覚は人類であれば、誰もが身につけている。

 しかし、残念ながら現代社会は、製品デザインにおいて、この感覚をあまり重要視していない。そうであるにも拘らず、身の回りの製品を改めて見直してみると、意外と「かわいい」ものが多いことに気がつく。


「かわいい」は外観デザインの基準

 前回、「外観のきれいさ」と「製品に込められたコンセプト(物語)のかっこよさ」が製品デザインの評価基準だと説明したが、実はもうひとつ、とても大切な評価基準がある。

 それが「かわいい」だ。

 脚本家の山田太一はその著書「親ができるのは、ほんの少しばかりのこと」の中で、こんな感慨を漏らしている。

 「(子供に対して)うんざりして、いなくなってくれないかな、と願ったことも何十回かはありましたが、何十回ぐらいですんだのは、子供の可愛さでした。子供の可愛いのには、何千回も感嘆しました。すべてが小さくて、しかも全部そなわっていて、無力すぎるが故に抗しがたくて、ほんとうに生物というものはよくできている。ちゃんと親の苦労にむくいるように子供をこんなに可愛くつくってあるんだ、と見惚れました。」

 山田太一が書いているように、人間はだれでも理屈なしに「かわいい」がわかる。

 世話のかかる赤ん坊を何年も手塩にかけて育てられるのは、ひとえに赤ん坊がかわいいからだ。「かわいい」は人類の生存戦略に組み込まれた感情であり、赤ん坊をかわいいと思い、愛してきたから人類は生き延びてこられたのだ。

 「かわいい」は、ベビーフェイス効果とも呼ばれ、丸顔・大きな目・小さな鼻・広い額・短いあご・明るめの肌と髪といった特徴をもつ人やモノを見ると、赤ん坊と同じように、無邪気・無力・正直・純真無垢などといった性格もっていると感じてしまう人の全般的な傾向のことで、動物行動学者のコンラート・ローレンツは、あらゆる民族の文化や年齢層にも、ベビーフェイス効果が見られると報告している。

 進化生物学者のスティーヴン・ジェイ・グールドは著書「パンダの親指」の中でミッキーマウスが50年間に渡り人々に愛され続けてきたのは、表情や体形や性格にベビーフェイス効果をたくみに導入してきた結果だと洞察している。

 確かにこの50年間にミッキーマウスの顔はどんどん幼くなり、体形も子供っぽくなり、性格も正直で純真で無力な正義漢に変わってきている。グールドはこのミッキーマウスの進化を人間のネオテニー(幼形成熟)進化の歴史に重ね合わせて、人はベビーフェイス効果と切っても切れない関係にあるとしている。

 つまり、前述のような赤ん坊の特徴を持った外観形状であれば人は、赤ん坊だけではなく、モノでも製品でも、「かわいい」と感じ、愛さずにいられない。

 「かっこいい」という評価基準は製品の歴史を学習しなければ身につかないが、「かわいい」は人が生まれつき持っている外観デザインの評価基準なのだ。

 <この項、続く>



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