木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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ピクトグラムとオリンピック

2009年05月19日 | 人間工学と認知科学(コツツボ)
<標準案用図記号 交通エコロジー・モビリティ財団>


◆ピクトグラムとオリンピック (ピクトグラム①)
292:【デザインのコツ・デザインのツボ 100連発!】第92発 デザインワーク


  こんにちは!
 デザインコンサルタントの木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。

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ピクトグラム その1

 昨年、モノマガジンを発行しているワールドフォトプレスのムック「デザインがわかる8号」に書いた記事を、数回に別けて転載します。

 ムック「デザインがわかる」誌上では、たくさんの写真で実例を示しながら説明しています。残念ながら、このブログではそれは難しいです。

 ご興味がおありでしたら、ムック「デザインがわかる8号」をご購入ください。 

 ムックにあわせて文体が普段と違います。その点、ご了承ください。


マーク氾濫時代

 巷にはマークがあふれている。ヴィトンやシャネルなどのファッションブランドをはじめ、企業のロゴマークはもちろんのこと、JISマーク・ベルマーク・ウールマーク・エコマーク・リサイクルマーク。最近よく見かけるのが、特定保健用食品のトクホマークなど、現代はマーク氾濫時代だ。

 なぜこんなにマークが氾濫しているのだろうか?

 実は、マークは人の「シンボル化」という心理的な機能に訴える力を持っている。

 シンボル化は人が生きていくうえで大変便利で、感情にまで深く結びついている。人は情報をカテゴリーに分類して記憶し、そのカテゴリーをあるシンボルで代表させ、そのシンボルに安全か危険か・好きか嫌いかというような感情のラベルを貼って管理している。そうすることで、世の中の情報を整理して、判断しやすくしているわけだ。

 シンボル化は、個人の経験の中で作られていく。どのシンボルにどのような感情ラベルを貼るかは、個人的な経験に大きく左右される。

 例えば、「イチゴ・メロン・スイカ・トマト・キュウリは果物か野菜か?」というようなクイズがある。


マークとシンボル化

 答えは「すべて野菜(樹木に実るのが果物、一年草が野菜)」なのだが、この答えはかなり意外なはずだ。

 一般的にイチゴ・メロン・スイカは、今までの経験から頭の中でいつの間にか「果物」というシンボルに代表されるカテゴリーに分類されおり、果物は甘くて美味しいから「好き」というような感情ラベルが貼られている。果物というシンボルが感情にまで結びついているため、「イチゴ・メロン・スイカは野菜」という答えに、感覚的に違和感を覚えてしまう。

 シンボル化は人の感情にまで影響を与えている。

 同じシンボル化を、人は文字や図形などのマークにもあてはめる。マークには感情を呼び覚ます力があり、巷のマークはその力を利用しているのだ。

 企業のロゴマークも含め、マークの多くは品質を保証するマークだ。それは、マークを頭の中でシンボル化して「高級」「安全」「安心」「人にやさしい」というラベルを貼って、記憶してもらうためだ。実際にセイフティトイやベターリビングや日観連は、そのマークが付いていることの保障として損害賠償制度まで用意している。


オリンピックとピクトグラム

 では、いつからマークがこんなに氾濫したのかといえば、そんなに古いことではない。

 もちろん、日本には家紋のように優れたマークが昔から存在していたが、マークが文化活動や企業活動に積極的に使われるようになったのは、ベルマーク・ウールマークあたりからだろう。

 ベルマークは朝日新聞社創立八〇周年記念事業として1960年から、ウールマークは1964年からはじまっている。その後、1980年代にCI(コーポレート・アイデンティティ)ブームが起こり、生活にマークが氾濫していくことになる。

 実は、ベルマーク・ウールマーク以上にマークの普及に貢献したできごとが1964年にあった。東京オリンピックだ。

 第18回オリンピック東京大会は戦後の日本経済のターニングポイントとなったが、デザイン界においても、日本人の美意識が世界に問われる一大イベントだった。

 デザイン評論家勝見勝が総合プロデューサーを務め、デザイナー亀倉雄策や写真家早崎治等が参加し、デザインポリシー策定やビジュアルイメージ統一から、当時最先端技術であったストロボ写真とグラビア印刷を用いたポスター作成にいたるまで、肌理の細かい仕事をして、デザイン面で海外から高い評価を得た。

 東京オリンピックで、国際行事として初めてピクトグラムというマークが導入されたのだ。

 外国人との意志疎通に馴れていない当時の日本において、絵で表すピクトグラムは必要に迫られたものではあったが、洗練されたピクトグラムは華やかな国際行事の格調をより一層高める要素として注目され、「世の中には文字のように役に立つマークがあるのだ」という認識が一般化した。

 いまやオリンピックや万国博覧会において、民族性やオリジナリティを演出するアイテムとしてピクトグラムは欠かせないものとなっているが、その先鞭をつけた勝見勝の先見の明は賞賛に値する。


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