木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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「かわいい」はデザインの入口(その3)

2010年07月27日 | 造形の構成原理(コツツボ)
<微妙にかわいい±0の加湿器>


◆「かわいい」はデザインの入口 (その3)
304:【造形の構成原理】第104発


 こんにちは!
 デザインコンサルタントの木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。

 株式会社ビートップツー (木全が取締役を勤めています)

 木全の自己紹介

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 モノマガジンを発行しているワールドフォトプレスのムック「デザインがわかる9号」に書いた記事を、数回に別けて転載します。

 ムック「デザインがわかる」誌上では、たくさんの写真で実例を示しながら説明しています。残念ながら、このブログではそれは難しいです。

 ご興味がおありでしたら、ムック「デザインがわかる9号」をご購入ください。 

 ムックにあわせて文体が普段と違います。その点、ご了承ください。


「かわいい」はデザインの入口

 製品の外観デザインの良し悪しの評価は難しい。

 工業デザイナーは、製品デザインは有意性(美しさ)と有用性(効率)から成り立っていると考えている。そして、見た目の良し悪しを決める有意性(美しさ)の評価基準は「きれい」と「かっこいい」だと考えられているが、実は「かわいい」も大切な評価基準だ。

 「かわいい」は人類の遺伝子に組み込まれたデザインの評価基準であり、この感覚は人類であれば、誰もが身につけている。

 しかし、残念ながら現代社会は、製品デザインにおいて、この感覚をあまり重要視していない。そうであるにも拘らず、身の回りの製品を改めて見直してみると、意外と「かわいい」ものが多いことに気がつく。


「かっこ・かわいい製品」はデザイン評価の入口

 強調しておきたいのは、「かわいい」は純粋に外観デザインの評価基準であることだ。

 「丸顔・大きな目・小さな鼻・広い額・短いあご・明るめの肌と髪」とは、すべて見た目の形や色のことであり、これだけ「見た目」だけに係わる感情表現は他にあまりない。人は何の知識がなくても、「かわいい形」を見分け、評価することができる。

 というわけで、工業製品でも「かわいらしさ」はとても大切だ。ロングセラー製品には「かわいい」といえる要素がある場合が多い。ミニクーパーもビートルもアイポッドもアレッシーの製品もどこかしら、かわいらしさがある。

 しかし、筆者が思うに、人類の遺伝子に組み込まれ、誰にでもわかる「かわいい」という評価基準が、工業デザインの現場において、どうも虐げられている。

 東京藝術大学大学美術館で開催されたバウハウス・デッサウ展を観たときも、やはり「かわいい作品」はほとんど見当たらなかった。

 展示作品自体は、現代でも充分通用する質の高いデザインなのだが、どこか禁欲的で、工業デザインはその発生期から「かわいい」をあまり重要視していなかったようだ。爾来百年経っても、いまだにそれを引きずっている。

 そして、「かわいい」が虐げられているもうひとつの理由は、「かわいい」が「かっこいい」の対立概念だと思われているからだろう。

 スーパーマンはかっこいいけれど、キティちゃんはかわいい。つまり、スーパーマンとキティちゃんは相容れない。

 確かにキャラクターの世界では、「かわいい」と「かっこいい」は対立概念だが、製品デザインの世界においては、実は対立していない。「かっこいい」は形の評価だけではなく物語と歴史が重要な要素であり時間軸を持っているが、「かわいい」は、形の見た目だけの評価であり、時間軸を持たない。従って、「かわいい」軸と「かっこいい」軸は直交して、数学のXY平面のように四つの象限を持つ。キャラクターの場合では次のようになる。

 (かっこ悪い・かわいくない)象限=いわゆる「ゆるキャラ」
 (かっこ悪い・かわいい)象限=定番キャラクター(キティ・ミッキーなど)
 (かっこいい・かわいくない)象限=スーパーマンなど
 (かっこいい・かわいい)象限=エバンゲリオンの綾波レイなど


 これが、製品デザインになると、次の二象限しか有り得ない。(かっこ悪い)は売れないため、経済的理由で存在が許されていないからだ。

 (かっこいい・かわいくない)象限=一般的工業製品
 (かっこいい・かわいい)象限=コンセプトも歴史もあり、かわいい製品


 スタルクのレモン絞り器・ミニクーパー・ビートル・アイポッド・アレッシー製品などはすべて、この(かっこいい・かわいい)象限に入る。プラスマイナスゼロの製品やauのデザイン携帯の一部もこの分類に入る。シャープアクオスの初代モデルも、ソニーバイオのオリジナルデザインのタイプTも他社製品と比べると微妙にかわいい。

 探してみると、意外とかわいい製品が多いことに気がつくはずだ。それも、なんらかのコンセプトや歴史を持った「かっこ・かわいい」製品である場合が多い。

 つまり、「かっこ・かわいい」製品は、まずその外観デザインの見た目が「かわいい」から、一目で誰の目にも留まる。そして、その製品を気に入って購入した後、いろいろ調べると、ちゃんとしたコンセプトや物語や歴史を持っているために、実は「かっこいい」製品でもあったと気がつく。つまり、「かっこ・かわいい」製品は、デザインの有意性がわかりやすい製品なのだ。

 もし、デザインがわからないなら、とりあえず「かっこ・かわいい」製品を購入して身近に置いて使ってみることだ。「かっこ・かわいい」製品は、見ているだけで自然と心が和むし、いつの間にか愛着が湧いてくる。

 愛着が湧けば、それらの製品について、コンセプトや物語や歴史が自然と気になるようになり調べたくなる。そうすればしめたものだ。いつの間にか、製品デザインのいろいろな薀蓄が身についてくる。仕事でも学問でも趣味でも、どんな世界でも情報量が増えると、どんどん面白くなって理解が深まり、好きになる。

 つまり、「かっこ・かわいい製品」は、デザインがわかるための入口なのだ。



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