<東京ディズニーランドのお菓子ケース>
◆過剰装飾は日本の文化
【閑話休題】
こんにちは!
デザインコンサルタントの木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。
株式会社ビートップツー (木全が取締役を勤めています)
木全の自己紹介
★デザインセミナー講師も承ります。「講演.com」
「デザイン相談室」の目次【2010.12更新】
「デザインのコツ・ツボ100」の目次【2010.12更新】
★横浜市「無料デザイン相談」 ※横浜市に事業所のある方限定。
★墨田区「無料商工業アドバイザー派遣」 ※墨田区に事業所のある方限定。
今回の大震災以降、節電など省エネやエコロジーに関する報道ばかり目に付きます。
それを批判する気は毛頭ないのですが、それらは文明からの視点だけで、どうも文化からの視点が欠けているような気がして仕方がありません。
デザインという文化に関る仕事をさせていただいている立場から、最近思うことを書かせていただこうと思います。
■日本美術の特質は「かざり」
多摩美術大学学長も務めた美術史研究家の辻惟雄氏は、その著書「奇想の図譜」の中で、日本美術の大きな特徴はその独創的な装飾性にあり、日本美術の特質は「かざり」だと書いています。
日本のかざりは執拗なまでの複雑さ、華麗さを持っています。
縄文式土器に刻まれたおどろくほどはげしい隆線紋の力強さ。
祭りの御神輿や山車。
歌舞伎の舞台や華麗な衣装。
相撲の化粧回し。
結婚式や成人式の振袖。
夏の夜を彩る花火。
これでもかといわんばかりの一過性の過剰装飾が日本のかざりの本性です。
「日本の文化伝統について見る限り、飾りなくして人間らしい生活はなかった。日本人にとって本来『かざり』とは、晴れの日の祝祭の場を、日常から忽然と非日常に変貌させる演出だった。それは単なる感覚の慰み以上に高揚した精神的営為―神聖な『遊び』でもあったのだ。かざりはそこでは、生活のみじめさ、憂さから、つかの間にせよ人の心を解き放ち、階級、身分を超えて生きる喜びを味わわせる。日本の装飾美術は、いつもそのような動機によって活気づけられてきた。」
辻氏はこのように断言し、「日本かざり学」という学際的な研究を提唱しています。
■過剰装飾は日本の文化
確かに、ハレの舞台での華麗な装飾は現代でも健在です。
大震災のずいぶん前から、省エネルギーやエコロジーが提唱され、なかなか堂々とは言いにくくなってしまいましたが、今でも日本人は過剰装飾が大好きです。
丸谷才一氏の小説「女ざかり」で描かれたように、日本はモノに魂を寄せて贈り合う贈答文化の国です。日本人はかざりと共にお土産や贈り物も大好きです。
小旅行でも、自分のためではなくお友達のためにお土産を買って帰る。旅行はどんなに近距離でもハレの舞台です。だから観光地にはお土産屋がひしめいています。
そのお土産の過剰包装振り。たまにシンプルな包装もありますが、大半のお土産の包装紙には黄色や赤色の派手な地色にフルカラーよりも総天然色という形容の方が似つかわしい独特な意匠が施されています。
東京ディズニーランドで、本場アメリカに見当たらないものがあります。それがお土産用のお菓子です。日本人は必ず知合いのためにお土産を買い求める。なるべく嵩があって安いお土産ということでお菓子を数個買い求め、飛ぶように売れていきます。
東京ディズニーランドのお菓子のケースは過剰装飾の宝庫です。
たかがお菓子ケースなのに、きれいな色透明のプラスチィック容器や缶に四色+特色二色のオフセット印刷の極彩色に彩られたミッキーやミニー達が微笑んでいます。
お土産として知り合いに渡すなら、やはり楽しそうなミッキーが印刷された、きれいで華やかな箱の方がうれしい。贈答文化とあわせて過剰装飾好きのかざり文化が購買動機を高めてしまう。
ディズニーランドのお菓子ケースは、キャラクターの可愛らしさというオブラートに包んで、省エネルギーやエコロジーで押さえ込まれているかざりや過剰装飾への欲求を満たしてくれています。
節電も省エネもエコロジーも大切ですが、暗い話題ばかりの昨今だからこそ、たまには、ハレの舞台での華麗な装飾があってもいいと思うのです。
日常の憂さを忘れる息抜きも、生きる知恵ですよね。
★デザインセミナー講師も承ります。「講演.com」
新書「デザインにひそむ<美しさ>の法則」(第4版)好評発売中
「売れる商品デザインの法則」(第2版)好評発売中
新書「中小企業のデザイン戦略 」(PHPビジネス新書) 好評発売中
新書「売れるデザインの発想法」(ソフトバンククリエイティブ新書)好評発売中
新書「マインドマップ デザイン思考の仕事術」(PHP新書)好評発売中
■株式会社ビートップ・ツー 工業デザイナーの転職アドバイザー
◆過剰装飾は日本の文化
【閑話休題】
こんにちは!
デザインコンサルタントの木全(キマタ)です。一般の方に向けて工業デザインのエッセンスについて書いたり、デザイナーとの付合い方などについて書いています。御相談がありましたら、コメントをくださいね。コメントによるご質問には基本的に無料でお答えいたします。
株式会社ビートップツー (木全が取締役を勤めています)
木全の自己紹介
★デザインセミナー講師も承ります。「講演.com」
「デザイン相談室」の目次【2010.12更新】
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★横浜市「無料デザイン相談」 ※横浜市に事業所のある方限定。
★墨田区「無料商工業アドバイザー派遣」 ※墨田区に事業所のある方限定。
今回の大震災以降、節電など省エネやエコロジーに関する報道ばかり目に付きます。
それを批判する気は毛頭ないのですが、それらは文明からの視点だけで、どうも文化からの視点が欠けているような気がして仕方がありません。
デザインという文化に関る仕事をさせていただいている立場から、最近思うことを書かせていただこうと思います。
■日本美術の特質は「かざり」
多摩美術大学学長も務めた美術史研究家の辻惟雄氏は、その著書「奇想の図譜」の中で、日本美術の大きな特徴はその独創的な装飾性にあり、日本美術の特質は「かざり」だと書いています。
日本のかざりは執拗なまでの複雑さ、華麗さを持っています。
縄文式土器に刻まれたおどろくほどはげしい隆線紋の力強さ。
祭りの御神輿や山車。
歌舞伎の舞台や華麗な衣装。
相撲の化粧回し。
結婚式や成人式の振袖。
夏の夜を彩る花火。
これでもかといわんばかりの一過性の過剰装飾が日本のかざりの本性です。
「日本の文化伝統について見る限り、飾りなくして人間らしい生活はなかった。日本人にとって本来『かざり』とは、晴れの日の祝祭の場を、日常から忽然と非日常に変貌させる演出だった。それは単なる感覚の慰み以上に高揚した精神的営為―神聖な『遊び』でもあったのだ。かざりはそこでは、生活のみじめさ、憂さから、つかの間にせよ人の心を解き放ち、階級、身分を超えて生きる喜びを味わわせる。日本の装飾美術は、いつもそのような動機によって活気づけられてきた。」
辻氏はこのように断言し、「日本かざり学」という学際的な研究を提唱しています。
■過剰装飾は日本の文化
確かに、ハレの舞台での華麗な装飾は現代でも健在です。
大震災のずいぶん前から、省エネルギーやエコロジーが提唱され、なかなか堂々とは言いにくくなってしまいましたが、今でも日本人は過剰装飾が大好きです。
丸谷才一氏の小説「女ざかり」で描かれたように、日本はモノに魂を寄せて贈り合う贈答文化の国です。日本人はかざりと共にお土産や贈り物も大好きです。
小旅行でも、自分のためではなくお友達のためにお土産を買って帰る。旅行はどんなに近距離でもハレの舞台です。だから観光地にはお土産屋がひしめいています。
そのお土産の過剰包装振り。たまにシンプルな包装もありますが、大半のお土産の包装紙には黄色や赤色の派手な地色にフルカラーよりも総天然色という形容の方が似つかわしい独特な意匠が施されています。
東京ディズニーランドで、本場アメリカに見当たらないものがあります。それがお土産用のお菓子です。日本人は必ず知合いのためにお土産を買い求める。なるべく嵩があって安いお土産ということでお菓子を数個買い求め、飛ぶように売れていきます。
東京ディズニーランドのお菓子のケースは過剰装飾の宝庫です。
たかがお菓子ケースなのに、きれいな色透明のプラスチィック容器や缶に四色+特色二色のオフセット印刷の極彩色に彩られたミッキーやミニー達が微笑んでいます。
お土産として知り合いに渡すなら、やはり楽しそうなミッキーが印刷された、きれいで華やかな箱の方がうれしい。贈答文化とあわせて過剰装飾好きのかざり文化が購買動機を高めてしまう。
ディズニーランドのお菓子ケースは、キャラクターの可愛らしさというオブラートに包んで、省エネルギーやエコロジーで押さえ込まれているかざりや過剰装飾への欲求を満たしてくれています。
節電も省エネもエコロジーも大切ですが、暗い話題ばかりの昨今だからこそ、たまには、ハレの舞台での華麗な装飾があってもいいと思うのです。
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